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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と久々の食堂

 あれから、話を終えた後は家も心配だったので直ぐに家に帰り、何事も無く一日を終えることになった。どうやら、あそこは周りに誰も住んでいない田舎の屋敷だったようで、誰かに見られた心配というのは無いようだった。


「はぁ……」


「どうしたの? 元気ないじゃん、絵空」


 そして、学校に登校してきた僕は昼休みを迎えて、廊下の窓側に寄りかかって溜息を吐いた絵空に事情を尋ねてみたところだった。確かに憂鬱極まりない月曜日の学校ではあるのだが、昼休みを迎えて多少は幸せも揺り戻ってくるような時間の筈である。そこまで溜息を吐く理由にもならないだろう。


「いや、色々あったんだよ……お前も手伝ってくんない?」


「何がよ?」


「バイトだよ、バイト」


「それ、僕が手伝うとか出来るの?」


 僕が言うと、絵空ははっと小さく笑って首を振った。


「まぁ、無理だな」


「だろうねぇ」


 僕の言葉を肯定しながら苦笑する絵空だったが、その表情にはやはり疲労のようなものが浮かんでいた。


「なに、なんかやらかしでもしたの? どちゃくそに怒られたとかさ」


「別に。そういう訳じゃねーんだけど……ま、色々あんだよ」


 絵空はそう言うと、廊下の奥に視線を向けて善斗が来ていることを示した。


「ほら、行こうぜ」


「善斗、なんか絵空が悩みあるっぽいよ」


「そうなのか? 話なら聞くが」


「悩みって程高尚なものじゃねぇっての」


 ハッ、と笑い飛ばした絵空に、僕は深く追求するようなことまではしなかった。


「……別に、バイトでちょっと疲れてるだけの話だからな」


 バイトで疲れてるくらいなら良いけど、あんまりひどいようなら僕のやり方で解決することも考えなければいけないかも知れない。突然倒れたりなんかしたら、洒落にならないしね。




 ♢




 食堂に着いた僕たちはテーブルを囲んでそれぞれのご飯を食べていた。今日は珍しく絵空も弁当じゃない日ということで三人一緒だが、何だかんだ三人で食堂で食べることは多くないのだ。


「そういえば、結局大丈夫だったのかよ?」


「ん、僕?」


 絵空の言葉に、僕は首を傾げた。


「お前以外誰が居るんだよ。なんか寅嶋とかに呼び出されてたりしたろ?」


「あ、うん。特にあれからは何も無く、事も無し」


「本当か? カツアゲされてたりしないだろうな?」


「いや、しないよ……」


 当たり前のように否定した僕だったが、善斗は疑わし気に僕のことを見ていた。え、そんなにカツアゲされてそうかな僕って。


「お前は……いや、でも最近は筋肉も付いて来たか」


「そうだよ、僕だってもやしのままじゃ良くないと思ってね。健康の為にも運動してるんだよ」


 ファイティングポーズを取って見せると、善斗は呆れたような顔をした。


「まぁ、良いことだな。善斗みたいになれとは言わねぇけど、ある程度筋肉は付いてた方が良いぜ」


「俺も別に筋骨隆々と言う訳じゃないけどな。体格はどちらかと言えば細い方だと思ってる」


「そうだね」


 善斗は触れば硬くてガッチリしてるけど、体を覆い隠すような服を着ていれば寧ろ細身にも見えるだろう。僕も絶賛似たような肉体に近付いているところなので、いつかは追いつきたいところである。


「ていうか、絵空も割と筋肉あるよね? 最近気付いたんだけどさ」


 あの不良共から逃げる時にも僕より余裕を持って走れていた。あの時の僕の運動能力の低さは確かにあるが、それにしてもエーテル体を一応は活性化させていた僕より体力があったのは、同類だと思い込んでいた僕にとっては誠に遺憾であった。


「一応、バイトもしてんだぞ俺は。お前よりは体も動かすし、そりゃ筋肉も付くだろ多少は」


「同じ穴の狢だと思ってたのになぁ……」


「お前も最近は筋トレしてんなら変わらねぇだろ」


 確かに、それはそうかもだけど。


「それに、俺は善斗とは違って柔道とか習ってないから別に強い訳でもねぇしな。不良にカツアゲされたらへぇこらしとくしかねーよ。そういう意味じゃ、お前とおんなじよ」


「合気道な」


 ふざけたように言う絵空に、鋭く突っ込みを入れた善斗を見て僕はふっと笑った。やっぱり、学校で過ごす時間というのはかけがえのないものに思えて来る。異世界やら裏世界やら、魔術だのを見ていると……寧ろね。


「ま、僕は襲われたら全力で叫んで助けを呼ぶよ。恥も外聞も無く、ね」


「カッコつけて言うことでもねーけどなぁ」


 キリッと表情を決めて言ってみた僕だったが、絵空は呆れたように笑うだけだった。しかし、逆に善斗は真面目な顔で頷いていた。


「それが良いぞ。もし襲われたら、取り敢えず無事で済むように何でもするのが良い」


「自分の身も案じないで人助けをする善斗が言えるセリフじゃないけどね」


「俺は合気道を習ってるからな。目に入れば人助けもする責任がある」


「僕も言ってみたいなぁ、そんなこと」


 僕が言うと、善斗が獲物を見つけたように視線を向けて来た。


「道場に来るか? 初回だけならお試しということで無料で稽古を着けて貰えるぞ」


「あ、あはは……遠慮しておくよ」


 合気道を習ったところで、僕のこの捻くれているらしい性格が元に戻るとは思えなかった。

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