全知全能と拉致について
一応、さっき聞き出した情報を伝えておいた僕は、残りの尋問をユモンに任せて、戦闘の影響で真ん中が大きく凹んでしまったソファに座り込んだ。外に出て待って置くということも考えたが、その間に中でユモン達が襲われたり、逆に外で待ってる僕が襲われたり、それに何より……僕が招いた事態でもある以上は、一人だけ目を逸らしてしまうのも情けないことだと思って見届けることにした。
「……ビビって損したよ」
だが、結局のところユモンの言う尋問は僕の想像していたような恐ろしいものでは無かった。気絶した相手の頭に手を当てて、何やら情報を探っている感じである。
「おう。脳みそん中から情報抜くだけだからな。オレ様にかかればちょちょいのちょいよ。態々脅しをかけてまで聞き出す必要もねェって訳だ。まぁ、頭の保護がしっかりしてる奴ならそういう手に出る必要もあっただろうがな」
「私がやってやろうかと思ったけど、出るまでも無かったわね」
脳みその中から情報抜くって考えると、それはそれでえげつない感じに聞こえはするね。
「……ま、粗方の情報は抜けたぜ。帰って共有もしたいところだが、こいつらの処理を先にしねぇと不味いか」
「そうね、魔術霧散の装身具ならうちに幾つかあった筈だから、厄介そうなのはそれで無力化しておきましょう」
「別にオレ様が全員拘束しとくことも出来るぜ? それで良いんならやっとくけどよォ」
「大丈夫? 魔術で抜けられないかしら?」
紫苑ちゃんの問いに、ユモンはにやりと笑って首を振った。
「オレ様の魔術がそんなにちゃちな訳ねぇだろ。何なら、許可するまでずっと眠ったままにすることだって余裕だぜェ?」
「ふぅん、良いじゃない? じゃあ、それでお願いするわ」
「おうよ、任しとけ」
「貴方が眠らせたら私が屋敷に運んでおくわ。一応、捕まえておく為の場所も無くは無いし」
二人で話が進んで行くのをボーっと見ていた僕だったが、流石に居た堪れなくなって来た。
「なんか……任せっきりで悪いね」
「別に良いわよ。寧ろ、ここを落とせたのは殆ど治のお陰でしょう? ここに来ることになった切っ掛けも治だし、殆ど敵をやっつけたゴーレムを作ったのも治じゃない」
「まぁ、そういう面もあるかもないかも……?」
確かに、ゴーレムの活躍が見れたのは事実だ。
「ていうか、何を普通に誘拐されてるんだよお前は。前にも誘拐されたばっかりだろうが……」
「いや、仕方ないんだよ。なんか、急に襲ってきたんだから」
「そりゃ、誘拐なんて大体急に襲って来るものなんじゃないのかしら……?」
「それはそうなんだけど」
僕だって、警戒してなかった訳じゃないんだ。というか、気を失わされたの自体はいきなりって訳でも無いしね。いや、だからこそ警戒が足りてなかったという説は確かにあるんだけど。
「どういう感じで攫われたのよ。いきなり殴られでもしたのかしら?」
「なんかさ、普通に外歩いてたらっていうか、あの事務所から帰ってたらさ、やけに一少ないなぁってことに気付いて……人払いされてるって思った時には、もう僕の首筋に刃物が添えられてたんだよね」
「じゃあ猶予あるじゃない」
「いやまぁ、あるんだけどさ。話しかけられたし、ナイフか何かを突き付けられてるし、反撃できる感じでも無かったんだよ」
分かんない、やろうと思えば反撃出来たかも知れないけど。ただ、ちゃんと死に直結するような攻撃なら兎も角、ナイフで中途半端に切られるくらいだと全知全能バリア君も反応しなくてただ痛い思いをする可能性もある。下手に反撃に出るのは怖い気持ちもあった。
「話しかけられたって、どんな話したんだよ?」
「いや、アイツらと……事務所の奴らとどういう関係なんだって聞かれたね」
「そんなことがあったのか……一応、そういうことは話せよ」
「後で話そうと思ってたよ。ホント」
忘れてたけどね、本当は。
「それで、お前らに話すことなど何も無いって答えたらもう一回脅されて、それでも同じように答えたら気絶させられて……気付けば、ここに」
「何やってるの……?」
ていうか、ここどこなんだよ。相当ドンパチしたけど、周りの人に見られてたりしてないよね? 窓から軽く見えた感じ、田舎っぽい感じはするけど。
「お前がバカなのは分かったが、そんなことより事務所の周りに張ってる奴らが居るってのは確定だな」
「まぁ、そうだね。ただ、ある程度距離が離れてから襲ってきたから……事務所の出入りを確認する機械とかがあったりするんじゃないかな」
「……だとすれば、もう一回調べてみる価値はあるわね。魔道具なら兎も角、ただの機械は私じゃ探知しきれないもの」
そっか。逆に、魔力に頼らない道具の方が敵に探知されなくて優れてたりすることもあるのか。現代技術、やはり偉大なのかも知れない。




