全知全能と戦闘開始
魔術を扱って、誘拐だの暗殺だのまで行うような闇の組織、かぁ。ヤクザとも繋がりがあって、捕まえて来た相手には拷問まで行う……はっきり言って、ギルティだ。アウトでしかない。百害あって一利なし、今のところの印象は汚物のようなクソ組織である。
やっぱり、壊滅だけさせておくことにしよう。
「まぁ、正直に話してはくれたから……君の未来は、僕は決めないでおくよ」
「何を言って……っ」
井幕を名乗った男が目を見開くと、その意識が一瞬で失われた。地面に倒れ伏した男から視線を外すと、僕は全知全能によって作っていた透明な壁も解除して廊下を進んで行った。
「ん」
その突き当たり、扉を見つけた僕はそれに手を伸ばして……その奥に無数の人の気配があることに気付いた。大体、六人くらいに思える。
「行こうか」
ガチャっと扉を開けて、開けた空間に出た僕はその場にいた全員の視線を一斉に浴びることになった。
「誰だッ!?」
「奴だ、さっき運び込まれて来た……!」
「へぇ」
気付かれちゃったか。魔力も一応は隠蔽してるんだけどなぁ、ちゃんとしっかり全知全能で偽装した方が良かったかな。
「奴だとすれば、拘束は……? それに、島木の奴はどうした!?」
「やられたんだろ、普通に考えて……ほら、早い所叩きのめすぞ」
「おう、金田ッ、アイツら呼んで来い!」
どうやら、まだ敵は増えるらしい。それに、こいつらは魔術を扱えるみたいだ。だけど、だからって関係は無い。
「僕だって、多少は鍛え直したんだよ」
ウィーに指導を受けてね。
「ッ!?」
体を前に倒して、一瞬で踏み込んだ。魔術を構築しようとしていた男の眼前に飛び込んだ僕は、掌底を思い切り振り上げて、男の顎をかち上げた。白目を剥いて気絶する男から直ぐに目を逸らし、一番近い男に直ぐに詰め寄った。
「『魔連――ッ!?」
「惜しいね」
目の前に構築された魔法陣を魔力を纏った指で引き裂きながら、それを唱えようとしていた男の横っ面を殴りつける。地面に倒れ込んだ男だが、気絶はしていない。意識を失わせてやろうと魔力を開いた手に流し込んだ僕のこめかみを狙って銃弾が飛来する。咄嗟に避けようとした僕だが、避け切れずに直撃し、全知全能のバリアによって弾かれた。
「やっぱり、まだまだ未熟みたいだね」
僕は溜息を吐き、手の平に集めた魔力を地面に倒れたままの男の頭に飛ばし、意識を失わせた。これで、今いる奴らは残り三人だ。
「『魔猛牙』」
「『網隆縛』」
僕の知る魔術とは少し雰囲気の違う魔術の気配に、僕は眉を顰めた。床が隆起し、網のようになって僕の体を足元から拘束しようとし、そこに大きな二本の魔力の牙が左右から挟み込むように襲い掛かってくる。
「『縛り蛇』」
「やるね」
それなりに練度が高いんだろう。その場から跳び退いて回避しようとしたところを、隠れていた一人が放った緑色の蛇に縛り付けられて阻害された。結果、避け切れずに地面からの網に拘束され、二本の魔力の牙を僕はまともに受ける結果になった。
「な、何だと……ッ!?」
「ッ、有り得んやろうがッ! 何で傷も付いとらんのやお前ッ!」
だが、二本の魔力の牙は僕に触れたそばから砕け散り、僕を拘束していた床の木材が変形した網もついでに吹き飛んだ。
「タネも仕掛けもあるけど、教える気はないね」
まぁ、タネも仕掛けも全知全能なんだけどさ。
「よっと!」
「ッ!」
前傾姿勢になり、駆け込んだ僕は再び掌底を顎に打ち付けてやろうとして……避けられた。さっきの奴より強い。ていうか、この残った奴らは全員強いかも知れない。
「舐めんじゃねぇよガキが……ッ!」
お返しにと振るわれた拳を、僕はギリギリで回避する。更にカウンターで僕が拳を返そうとしたが、銃口を向けられていることに気付いてその場から跳び退いた。
「そこまで舐めてはないんだけどね」
「ちょっとは舐めとるんやろうがッ!」
そりゃあ、ちょっとは舐めてるよ。だって、全知全能なんだから。完全に本当の意味で相手を舐めてないっていうのは、ちょっと難しい。そのくらい真剣に勝負にのめり込めたら有り得るのかもだけど。
「『転燈牙』」
「『通霊矢』」
回転する橙色の牙が魔法陣から放たれ、炎を溢れさせながら僕に迫って来る。手を翳し、魔法陣の防御を展開してそれを受けた僕だったが、背後から青い矢が迫り……魔力を放って弾くも、今度はまた銃弾が迫った。
「……キリが無いね」
今の僕の身体能力だと、これ以上を突破することは出来ない。寧ろ、経験も豊富な向こうの方がどんどん有利を築いて行くことになるだろう。それどころか、増援が来ると言う話もある。
「『超感覚』」
仕方無い。ウィーじゃないけど、僕もこれを使わせて貰おうか。




