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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と尋問

 直面していた危機は乗り越えた僕だったが、未だ状況は解決には至っていなかった。どこにあるかも分からない地下室に閉じ込められたままであるということには変わりない訳だ。いや、扉に鍵がかかってるかは分からないけど、扉を開けて外に出たら袋叩きにされるであろうことは間違いない。


「そもそも、外に人が居るかも分からないけどね……」


 僕はぽすっと椅子に座り込み、広くはない部屋を見回した。拷問用の器具が壁際に並んで置かれており、良く見れば血の染み込んだような跡がそこら中にある。きっと、ここで何人もの人が犠牲になって来たのだろう。トラウマにならずには済まないような恐怖を味わって、心にも体にも傷を負って生きていくことになるか……それとも、ここでそのまま死んでしまうか、だ。

 勿論、ここで拷問を受けた人たちも同じような悪人である可能性だって存在している。だけど、このままここを出て行って逃げ帰ってしまうのは……少し、気が引けた。


「壊滅だけさせて、帰れば良いよね」


 何らかの形で、紫苑ちゃん側にも伝わるようにして置けば後処理もやってくれるだろう。うん。


「……久し振りに、これで行こうかな」


 僕はそう言って黒い靄で己の身を覆い隠して、扉の方へと歩き始めた。扉は独りでに開き、僕は地下室を出る。すると、直ぐに上へと続く階段が見えたのでそこを上っていけば……僅かに埃の舞うような木製の廊下が僕を出迎えた。ちょっと雰囲気が怖くて嫌になったが、大きめの虫が壁を歩いているのを見て更に嫌になった。


「あ」


「なッ」


 廊下を歩いて行くと、一人の男と会った。人相の悪い、大柄な男だ。頭は坊主で、咄嗟に握られた拳には傷が刻まれている。


「テメェ、ナニモンだ……」


「何者はこっちのセリフなんだけど、君は誰でここはどこだよ」


 そう返すと、大柄な男は僕を強く睨み付けた。


「喋れんのか……黒い煙……靄……? の癖によ」


「最近の靄は喋れるんだよ。知らなかった? それより、ここはどこで君はだれ? はりーはりー」


「……取り敢えず、報告からだな。これは」


 ラフに尋ねてみた僕だったが、男は溜息を吐いてこちらを警戒しながらも後ろに下がり始めた。が、その背中が何かに触れる。


「駄目だよ、先ずは話を聞かせて貰う」


「なッ!?」


 見えない壁が、そこにはあった。男は後ろを振り返り、透明な壁を何度も叩く。が、音すらせずにその壁は男の拳を受け止めた。


「何だ、これは……ッ! クソッ、誰か来てくれッ!! おいッ、誰も居ねぇのか!?」


「誰も来ないよ。幾ら呼んでも、誰にも聞こえやしないから」


「なんだと……!?」


「その壁と同じように、僕らの周囲を壁で囲ってるんだ。音も壁の向こう側には響かないから、誰にも声は聞こえない」


 淡々と説明してあげると、男の顔色が悪くなり、冷や汗が額を伝った。しかし、それで諦めた訳では無いらしく、懐からスマホを抜くと急いでそれを操作しようとして……スマホの画面が、黒く染まる。


「素直に話してくれるなら、痛いことはしないって約束する。だから、君が誰でここがどこなのか……話してくれないかな?」


「ッ!」


 別に、聞かなくても知ることは出来るんだけどね。ただ、それだと味気ないってだけだ。それに、素直に話してくれるような人なら……傷付ける必要も無いかなっていう、言い訳でもある。


「……こうなりゃ、仕方ねぇ」


 男が言うと、その身に赤っぽいオーラが纏われていく。エーテル体を活性化することで、気を高めているんだ。ただ、魔術に頼らないってことは……もしかして、エネルギー体でもエーテル体しか解放出来ていないのかな。そういう人も、珍しくは無いらしいけど。


「うぉぉぉぉ……ッ!! 漲って来たぜぇ……ッ!!」


「……うーん」


 赤いオーラが滾っていく。気が高まり、身体性能がみるみるうちに向上していく。だが、僕を前には無意味だ。


「ほらッ、靄だか煙だか知んねぇが、人型なら当たんだろうがッ!!」


 まぁ、正解だ。黒い靄で覆われてるだけで普通に触れることは出来る。勿論、殴られればダメージも食らう。


「残念」


「ッ!?」


 でも、魔力で強化した状態の僕ならそんな拳くらい簡単に避けられる。そして、拘束することも……容易だ。魔力の輪で男の手を繋げて拘束し、足も同じようにすれば地面に転がる芋虫の完成である。あ、そういえばさっき壁に虫が這ってたな……ここに長居したくなくなってきた。


「クソッ、手と足が……離しやがれッ、クソ野郎ッ! おいッ!」


「これが最後のチャンスだよ。君が誰かと、ここがどこかを教えてね」


 男の上に乗り、魔力を籠めた手で男の両肩を掴んだ僕はそう迫った。必死に藻掻こうとする男だが、抑え付けられて動けない。


「……お、俺は井幕で、ここはうちの拠点だ……」


「君達はどういう組織なの? 組織名は?」


「基本的には依頼を受けて動くが……その、魔術やらで攫いでも殺しでも物盗りでも何でもやる、らしい。ただ、俺は最近別の組織から流れて来たばっかりだから詳しくは分かってねぇんだよ」


「組織名は」


「く、クマスクだ」


 へぇ、聞いたこと無いな。


「因みに、元居た組織って言うと?」


「や、ヤクザだよッ!」


 男の答えを聞いた僕は、男の体の上から退き、ふぅと息を吐いた。分かってはいたけど、碌な組織じゃないみたいだ。

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