全知全能と触手のゴーレム
重力負荷のドンに速度特化のカミオ、二体のゴーレムを見せて来た僕だったが、最後の一体がまだ残っていた。これを最後に残したのは、僕の一番のお気に入りだからである。
「じゃあ、最後のゴーレム、見せても良いかな?」
「勿論よ。期待して良いわよね?」
「あはは、お手柔らかに頼むよ……」
僕は言いながら手を伸ばし、そして最後の一体のゴーレムを呼び出した。
「召喚」
現れたのは、トーテムポールのような形をしたゴーレム。手も足も無い、シンプルな筒型の形状。本物のトーテムポールのように長くは無いが、それでも元々の形から少し大きくなって二メートル程はある。素材も合金に変わっていて、灰色のメタリックなボディはかつてのトーテムポール感を割と損なわせている。
「これは……なに?」
「トーテムポール型ゴーレム、正式名称を伸腕多搭載型不動式ゴーレム……またの名を、ワントウだよ」
「何を言ってるのか全く分からなかったわ」
だろうね。僕もそうだろうとは思いながら言った。
「簡単に言うと……腕が伸びるゴーレムだね」
「腕が無いように見えるのは私だけかしら?」
「中に入ってるんだよ。ていうか、内側に種……小型のコアみたいなのが沢山仕込まれててね、そこを起点に触手型の腕が成長して伸びていく感じなんだよね」
元々はこの形式じゃなくて、もっとシンプルに腕が伸びるだけの形式だったんだけど……協議を重ねるうちに色々と問題も多いってことが分かって、この種と呼んでいる小型コアシステムに変わった。その分、他のゴーレムよりも手間はかかったけど良いゴーレムになってると思う。
「ほら、こんな感じで」
僕がワントウに指示を出すと、その体から無数の細い触手のようなものがうねうねと飛び出した。濃い緑色をしたそれは、見た目の通り植物を弄ったものである。
「うっ……ちょ、ちょっと、気持ち悪くないですか……?」
「なんか、イソギンチャクみてぇだが……確かにキモいな」
「うーん……気持ち悪いわね」
ねぇ、酷くない? ワントウ君だって一生懸命頑張ってうにょうにょしてるんだが?
「それに、バランス悪く無いかしら? なんか、押したら倒れそうよ」
「ん、大丈夫だよ。これ、実は下からアンカー出せるようになってて、地面に刺して自分を固定できるんだ」
「……そもそも、歩く気は無いってこと?」
「うん、そうだよ?」
僕が答えると、紫苑ちゃんは眩暈がしたように額に手を当てた。
「そんなゴーレム聞いたこと無いわよ……その場から一歩も動かずに、触手だけ伸ばして来るってこと?」
「そういうこと」
「……それ、強いのかしら?」
「結構強いと思うよ? 相手が凄腕の魔術士だと、本体の座標辺りに直接魔術を叩き込まれる可能性もあるけど」
とは言っても、座標を指定して直接破壊できるレベルの威力の魔術を送り込んで来れるようなレベルの魔術士はそうはいないだろう。特に、この地球では。
「一応、本体はめっちゃ硬くしてるから……ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしない筈ではあるよ」
「そうね……本当に、要塞みたいなゴーレムだわ」
心なしか嫌そうな顔をしながらワントウに近付いて行った紫苑ちゃんは、ゴーレムの表面に触れながらそう呟いた。
「素材も硬い上に魔術で加工してるし、色々と防御機構も盛り込んであるから凄く硬いよ。ただ、その本体の硬さを活かして仲間を守れるって訳では無いけど」
飽くまでも、この防御力は自分の為の物でしかない。ただ、代わりにうねうねと生えている無数の触手は仲間の為の物でもある。
「今んとこ、硬くて触手が伸びるだけのゴーレムに聞こえるな?」
茜さんの言葉に、僕はにやりと笑った。ワントウは全てのゴーレムの中でも一番自信作なんだ。舐めて貰っちゃあ困るね。
「本体は兎も角、この触手は色んな役割があるんだよ。敵に絡み付いて拘束したり、妨害したり……その為に触手からは棘を生やすことが出来るようになってるし。あと、表面をざらつかせて摩擦を増やしたり、逆にツルツルにして抵抗を減らしたりね。それと、触手からは色んな液体が分泌出来るようになってるんだ。敵から引き剥がされにくいようにする為の粘液とか、攻撃用の溶解液とか、勿論毒だって分泌出来る。それと、ライマーの機能を引き継いだって訳じゃないけど水分の吸収も出来るんだ。それに、魔力を吸い取ることも出来る。触手は色んなものを吸い取ってエネルギーとして活用出来るようになってるから、余剰なエネルギーで触手を枝分かれさせたり、触手の中からコアを再生成して更に活動域を広げられたりする。本体は感知系の機能と情報処理に特化してるから、コア同士で通信して割と遠くでも問題無く動けるようになってるよ」
「……」
僕がドヤ顔で説明を終えるも、訪れたのは静寂であった。
「な、何で急に黙るのさ」
「いや、だってよ。触手のゴーレムになった途端にすげぇ意気揚々と喋るから……なぁ?」
「なぁって、そういうんじゃないからね!?」
別に、趣味とかじゃないからッ! ただ単に、これが一番自信作だっただけだからね!




