第32話 はぁ?治療術師?って、いつものようになりたいではなくなったんですね。頑張ってください!②
旦那様が治療術師としても生きていけることがわかってめでたしめでたし……だったはずなのになぜか帰ってきてしまったので、どうしようかと思っていたら変な報告があがってきました。
街の中でなぜかカエルが大量発生しているとのこと。
私の頭の中では旦那様の"ケロリンチョップ"の影響だとしか思えませんでしたので、もうお昼前だというのにのんびり眠っている旦那様を叩き起こした後、軽くキスしてあげてから正座させました。
「どうしたんだユフィ」
しめしめ。こうやって軽いスキンシップをすれば旦那様は多少横柄に扱っても問題ないことがようやく理解できました。本当に子供みたいな人ですね。
もちろん私が子供を横柄に扱うとかそういうことではなく、旦那様だからやっているのでちゃんと理解するように。特に部屋の隅で笑いをこらえている執事長!
「街でカエルが大量発生しているらしいので、旦那様の魔法の影響かと思って聞きに来たので白状しやがれこのクソ旦那様」
「それはもう聞きに来たのではなく、罪が確定してそうなんだが……」
いけません、嫌いなカエルを大量に放ったなんてどうしてくれようこのクソ旦那様と思いながら聞いたせいで、ついつい『クソ旦那様』って言ってしまいました。
「違うのですか?」
「"ケロリンチョップ"はあくまでも回復魔法だから、カエルを生み出すなんて効果はない」
「なんですって……?」
まさか違うとは思わず、ついついフリューヴァルス様から頂いた力で旦那様の発言が本当かどうか確かめますが、どうやら本当のようでした。
では一体だれが?
「なら突き止めてきてください」
「僕が? なぜ?」
「妻の一大事ですわよ? それはつまり息子の一大事でもありますわよ? そしてそれはリフェレットの一大事でもありますわよ?」
「えっ、私ですか? ……いえ、そうですね。一大事です」
「それは大変だ。よし、この僕が原因を突き止めてやろう! 待っていてくれ!」
「はっ、はぁ……」
このクソ旦那様は『妻の一大事』と言っても動く気がしなかったので、『息子』と『リフェレット』まで追加したところようやくやる気を見せました。リフェレットの手を両手で握りしめて宣言していきます。
リフェレットはそれでいいのかと少し呆れた視線を送ってきますが、これが旦那様なので仕方がありません。頷き返しておきました。
もちろん笑いが堪えられなくなって部屋の外に逃亡した執事長は減給です。
それ以降、旦那様はやる気を漲らせて毎朝伯爵邸を出て行きます。
しかし残念ながら3日経っても、10日経っても原因はわからず、カエルは増える一方です。なぜか伯爵邸の庭が真っ先にカエルだらけになったので、私は引き篭もることを決めました。異論は認めません。嫌だったらカエルをどうにかしてきなさい、執事長。
これはもしや、以前から我がクルスローデン伯爵家を狙って暗躍していた組織の嫌がらせかもしれません。きっとそうに違いありません。
何と言うことをするのでしょう。卑怯な人たちです。
「ユフィ……」
そんなことを考えていると、なぜか少し肩を落とした様子の旦那様が執務室に入ってきました。どうしたのでしょうか。原因がわからなかったとかそういうことなら、諦めることは許しませんので、原因究明まで頑張ってください。
「どうされたのですか?」
「カエルが増えた原因を見つけたんだがな……」
「えぇ!?!?」
違いました。どうやら原因を見つけたようです。なのに落ち込んでいるということは、きっと犯人はキレイな女の人だったんでしょうね。
それか既に愛人だったとか。
一方で私の怒りっぷりから相手を許すことはないとでも考えて気落ちしているのでしょう。残念ながらその通りです。許しません。たとえ相手が……。
「犯人はレオンだったよ」
「はい?」
えっ? 待って? 私の可愛い天使が犯人? そんなはずは……。でも、彼がいつも遊んでいる庭に最もカエルが多くて、我が家の庭が街の中で真っ先にカエルで埋まったのはそういうことだったの?
いや。
いやよ。
違うって言ってレオン。
「だうぁ~」
「レオン? どうしてカエルさんをいっぱい出したんだ?」
旦那様が優しくレオンに聞いています。
レオンは抱っこされてご機嫌なのか、旦那様の顔をぺしぺししています。可愛い。
もっとやって。
「ママ~。元気なる?」
「えっ?」
そして私の方におててを伸ばして満面の笑みで微笑んでくれました。
「ママはもう元気よ? でも、カエルさんはちょっと苦手だから……」
「にりゃて? ママ、キャエルしゃん、きりゃい?」
「うん。ごめんね。もしかしてママが元気になると思ってカエルさんを出してくれていたのかしら?」
「うん……」
なんて可愛いんでしょう。私はレオンを抱きしめてすりすりします。
「どうしてそんな勘違いを?」
「パパ、ママにキャエルさんって」
「あぁ……」
「"ケロリンチョップ"をカエルさんだと思い込んで……それでママが元気になったからレオンもやってくれたの?」
「うん!」
なんて可愛いんでしょう。私はレオンを抱きしめてすりすりします。
「でも、ごめんなさいね。ママはちょっとカエルさん苦手で。かわりに兎さんを出してくれたら嬉しいな~」
「ユフィ……」
「うしゃぎ、レオンもすき!」
「それは良かったわ」
「キャエルしゃん、バイバイ」
「あっ、でも、今出さなくていいからね。たくさんもいらないの」
「いりゃない?」
「えぇ。出してほしい時には言うね。だからその時にお願いするわ」
「うん!」
抱っこしてぎゅーしてキスしながら喋ったのか、レオンは落ち着いて理解してくれたようだった。なんて賢い子なのかしら。旦那様にも見習ってほしいものですわね。
「えっと……レオンおぼっちゃまがカエルを召喚できることについてはいいのでしょうか?」
そんなことどうでもいいのよ執事長!




