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旦那様が自由奔放で浮気ばっかりするのでざまぁし続けたらなんか可愛くなってきました  作者: 蒼井星空


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第26話 はぁ?父親になる?いりません。この子は私が育てるのであなたはいりませんわ!

「お腹大きくなってきたな、ユフィ。僕もそろそろ父親か~」

「いりませんわ! この子は私の子です! まっとうに育てるので一切関わらないでください!」

「えぇ……」


 まったく。


 旦那様となんか触れ合わせて、この子が旦那様みたいな自由奔放なバカに育ったらどうするのですか?


 生まれてくる子は私が愛を持って育てるのです。クルスローデン伯爵家の次期当主として誇れる子に育てるのです。旦那様とは隔離して育てるのです。



 私には別世界の記憶がありますが、役には立ちません。なにせあの記憶の私はありがたいことに1人で育てられたのですから。旦那様がいない世界で伸び伸びと愛を持って。


 でもこの世界は違います。目の前で間抜け面を晒している馬鹿な男……旦那様がいるのです。


 子供には愛情と規律と教育が必要です。次期クルスローデン伯爵なんですから。


 旦那様の愛情はどこの馬の骨とも知れぬ女にばかり注がれ、規律のキの字もない不真面目っぷりで、教育はすべて放棄されてきた方です。


 子供がある程度の年になれば思うでしょう。お父さんはなんで許されてるの?


 僕ももっと楽に生きたいよと。メイドにも女友達にも手を出したいし、勉強はしたくないし、領主になんかならないなんて言われたら泣いてしまうと思います。


 メイドに対して親子で争い始めたりなんかしたら許せるはずがありません。


 うん……決めました。実家に返しましょう。それがいいわ。




「さすがにそれは勘弁してほしいのだが……」


 私のジト目を受け流しながら一人だけワインを飲む公爵様。


 さすがにも何も、それ以外の要求はないのです。離婚しなくていいので30年くらい預かってください。


 家に監禁してもダメ、神殿に入れてもダメ、学術都市に入れてもダメ、田舎でもダメとあっては、もう実家に帰ってもらうしかないのです。


「どうせなら気に入っている愛人の家に入れるとか……」


 いつだったか執事長が『開き直りすぎ』と言っていたことがありましたが、これこそまさに開き直りすぎです。


 息子が他の子からお前の父親は愛人の家にいると言われるような状況が教育上よくないことは誰でもわかります。


 病気の療養のためと言いたいけど戦争で活躍した直後なので違和感しかありません……。


 何か……、何かないの? 良い方法は。いっそ、今までとは少し違う化粧や衣装に身を包んで旦那様を誘惑するとか……。無理ですわね。旦那様はなぜか私がどんな格好をしてもわかるというよくわからない特技を持っています。


 どうせならいついかなる時でも私の怒り度合いがわかるようになって欲しいですが、そちらは全く斟酌して貰えません。


 このままでは答えも出ないまま無駄な一日を過ごしてしまいそうです。




『それで我のところに来たのか』

「はい。どうかお力をお貸しください」

『何をするつもりなのだ?』

「旦那様と30年くらい殺し合っていただければ」

『……』


 さすが旦那様。ドラゴン様を黙らせるなんて……。



『いや、私に言われても……』

「もとはと言えばあなたが戻したのですから、責任をとってください」

『そう言われると弱いが……』

「30年くらいどこかの世界で勇者をさせてください」

『そうするとまた時間逆行しに来ることになる無限ループが……』


 さすが旦那様。神であるフリューヴァルス様ですらどうしようもないなんて……。



 公爵様でもドラゴン様でも神様でもダメでした。



 私は途方に暮れて執務室の椅子に腰かけてお腹を撫でます。今、子供がお腹を蹴ったように感じました。


 泣けてきますね。ごめんなさい、力のない母で。


 あなたにちゃんとお父さんを用意するのはとうの昔に諦めていましたが、このままでは最低な父親を登場させてしまうことになるでしょう。


 許してください。





「ユフィ……」


 お腹の子との大事な時間を過ごしながらこの子の将来に大きな影を落とす存在を排除できないことを謝っていたら、その最低な存在がやってきて私の名を呼びました。思わず睨みつけそうになりますが、全てはわかっていてこの未来を選んだ私の責任です。


 あぁ、違う次元の私が羨ましい。この男なしで自らの手で子を育てられたのだから。


 でも……思い返せばこの未来は既に決まっていたこと。記憶を貰ったあの世界の私だけが良い思いをしただけで、私の知らない無数の世界の私は私と同じ思いを抱えることもなく今の状況を受け入れているはず。


 なんだか混乱してきましたわね。


「寒くしてはいけないよ」

「えっ?」


 暗い表情で悩んでいる私に名を呼ぶ以上の声掛けはしてこず、優しくブランケットをかけてくれました。顔を上げて旦那様を見ると、いつもよりピシッとした格好です。


 驚きで思わず声をあげてしまいました。


 この方はもともと理(ことわり)を理解していないわけではないのです。ただ、自らの欲望に忠実で、女を見定めると一直線で他の全てを忘れてしまうだけ……。


 もしかしたらこの方なりに子供のことを想っているのは本気なのかもしれません。


 子どもが娘なのかもしれませんが、もし娘に手を出すなら容赦はしません……。


 いえ、別世界の記憶ではこの子は男の子のはずです。いかに違う世界とは言えど、未来はそう簡単に変わらないと、記憶の流入があった時にフリューヴァルス様から聞いています。それなら旦那様がもう一度行方不明になるのを期待しましたが……。



「では、出かけてくる」


……。








 愛人のところに行こうとした旦那様の頬を張ったのは言うまでもありませんね。


 子どもの目の前で愛人のことを話したら罰する魔法契約を取り交わさせたことも……。

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