第25話 はぁ?婚約破棄された令嬢を助けたい?そんなことをするなら私が……
「ユフィ、僕は彼女を助けてあげたいんだ。だって可哀そうだろう? 戦勝を祝う夜会で婚約破棄を言い渡されるなんて!」
「はぁ……」
とある夜会にて……。
今日は王家が主催する夜会に参加しております。この夜会は南方の戦争に勝利したことを祝うものです。王国はこの5年程の間、隣国からの宣戦布告によって戦争に突入しておりました。
この王国の北部にあるクルスローデン伯爵領には直接的な影響があるものではありませが、戦費負担はしておりました。
さらに、運営する商会を通して魔石や食料などの供給も行っておりました。
さらにさらに、戦争の終盤になって、なんと旦那様を直接派遣し敵を一網打尽にしました。その中には敵国で英雄と呼ばれた戦士もいたそうです。
旦那様自身は女の尻を追いかけて敵前逃亡をやらかしたのですが、審議の結果、辛うじて功績の方が多いということで、戦勝を祝う夜会に招待いただきました。
旦那様と一緒に。
勘弁してほしい……。
私のお腹は少しずつ大きくなっているのに、王家から宮廷魔術師による転移での送迎付きとか言う賓客対応をされてしまって断れませんでしたから当然アーゼンベルク公爵も巻き込みました。
「ユフィ殿……私は今回の戦争ではあまり目立った協力ができなかったので、今回は遠慮するつもりだったのだが……」
「まぁ、公爵、ご謙遜を。大変立派な弟君を派遣され、大活躍を成されたではありませんか。おめでとうございます」
「ユフィ……さすがに、エラルドを無理にアーゼンベルク公爵の手柄にするのは無理筋だろう。君の夫なのだから。君の方こそ、王国の一大事に懐刀であり最も信頼する騎士であるエラルドを派遣し、敵国の英雄を討ち取るなど、素晴らしい成果を上げたことをお祝いするよ」
「くっ……」
にらみ合う公爵と私。
何をしているのかですって?
押し付け合いですわ!
確かに功績は上げましたが、どうせ夜会では私のことなんてそっちのけで女性に声をかけまくり、ワンナイトを狙っていくに決まっています。そしてきっと醜聞をまき散らすでしょう。だから、今日だけは当家に関係ないと主張しようと、私たちは必死でした。
まぁ、無理ですが。
そんなこんなで諦めて夜会に出席した我々でしたが、早々に旦那様は行方不明になりました。夜会が始まった頃に眺めていた女性がお好みだったのでしょう。
もう無視でいいやと開き直って公爵様とワインを飲ん……でいようと思ったのにお腹の子に触るからとワイングラスを取り上げられてしまったので、大人しくしています。
そうすると旦那様が別の女性の手を取ってやってきて、冒頭の台詞を吐いたのでぶん殴って沈めたところです。
「酷いのは君の方だと思うんだよ、エラルド……」
「兄上だって酷いと思わないか? 婚約破棄なんてちゃんと手順を踏んで、両家の話し合いのもとで行うべきなのに……」
なぜ自分と無関係なことだとちゃんと理を理解しているのでしょうか?
逆に、なぜ自分が女の尻を追いかける時にはその知性が深い眠りについてしまうのでしょうか?
なんならオ前モ眠ラセテヤロウカ……。
「エラルド。で? その娘の元婚約相手は、もしかしたら僕らもよく知っている方ではないだろうか?」
「そうだ! ヴィンセント王子だ!」
はい撤収~。お疲れさまでした。
そう思って帰路につこうとしたのに公爵様があろうことか身重で他人の妻である私の腕を取りました。
ちっ……。
「申し訳ございません。ご迷惑をおかけしまして……エラルド様、私は大丈夫ですから……」
その娘は泣きそうなのを堪えて耐えているようだった。
それにしても王子の婚約者か。はっきり言って触れたくない。何の得にもならない上に、もしかしたら逆効果。王家に睨まれる結果となる可能性の方が高い。
正直言って勘弁してほしい……。
しかも理由を聞けば、王子様が"真実の愛"を見つけた!!!
とかではなく、隣国の王族が嫁いできて、今後の平和の礎になるという誘いを王家が受けたからとか。
つまり、もともと政略で決まっていた王子の婚約が、新たな政略で上書かれてしまっただけ。関係者であり、一番割を食ったと思われる目の前の女性には同情するが、間違いなく国王陛下の裁定だし、文句を言えるはずがないし、そもそも文句がない。
だからこそ、この女性も身を引こうとしているのに、バカが引っ掻き回している構図になってしまっている。
敵国がここまで譲歩、というか下手に出てきている原因となった男が……。エラルドが無双しなければこんなことにはなってないとすると、彼女を慰めることくらいはしてもいいかなという気持ちにはなるわね……。
エラルドを貸しましょうか?
なんてことはできない。
なにせ相手は公爵令嬢だ。
この後、彼女の実家の方が迎えに来られて、彼女は帰って行った。
私たちも帰る。
エラルド?
彼は元気が余っているようなのですが、このまま夜会に置いておいても余計なことしかしないので、『可愛い子はいたのかしら?』と聞いたところ、『あぁ。ミレニアは可愛かった。アイディーは美しいし、ロレーヌは……』という回答を途中で強制終了させました。
怒りが抑えられない私が離婚を突き付けたところ、それまでは隣でニヤニヤ話を聞いていた公爵がそれだけは勘弁をと謝罪してきたので、公爵と旦那様でラヴェール男爵領を調べるよう強請っておきました。




