第18話 はぁ?ドラゴン退治?そんなことをしたらぶっ飛ばすぞボケェェエエェェエエエエエエ!!!③
グルォオォォオオォオオオオオオオ!!!!!!
聞こえてきたのは凄まじい叫び声。これはもしかしてドラゴンが戻って来たのか?
僕の感知に引っかかったのは凄まじい魔力を内包するなにかだ。
「おい、あれ!?」
「なんだあれ……ドラゴンなのか?」
空に浮かぶそれを見上げて、周囲のおっさんたちが騒ぎ出す。
「みんな伏せろ!」
慌てて僕は魔法障壁を張る。
間一髪間に合ったが、そのドラゴンは空に浮いたまますさまじいブレスを放ってきた。
僕がここに居なかったら、今頃みんな仲良く真っ黒こげだったな。
「ありがとうございます、旦那様!」
「助かった……のか?」
「魔法障壁を張っているから、みんな逃げるんだ!」
僕は戸惑うものたちを逃がす。くそっ、可愛い女の子でもいればもっとやる気が出るのに……。
まぁ、美しいリオメラのためだ。
僕は魔力を解放し、複数の真空波、そして魔力波を放ち、ドラゴンを粉砕した。
□テレニー湖 (ユフィ)
『むぅ……』
「どうされたのですか?」
人化したドラゴン様と一緒にお茶を頂いていたら、ふとドラゴン様が山の方を向いて唸ります。
『いや、まさかな……』
「あの……」
目を閉じて考え込まれているようなので、声をかけるのをやめました。
『すごいな……君の旦那さんは……魔獣ヴェルヴァリアを圧倒するとは……』
「はっ?」
どういうことでしょうか。何か見えたのでしょうか。
生まれて初めて誰かが素直に旦那様のことを称賛しているのを聞きました。少し鼻が高く感じたのは私の頭がおかしいのでしょうか?
しかし、次の瞬間、私にも旦那様の戦う光景が見えました。きっとフリューヴァルス様の力のせい……おかげですわね。
なんと旦那様が真黒な凶悪そうな魔物と戦って……瞬殺しました。
すごっ……。
でもこの姿はドラゴンのようですが……ドラゴン様が言うに魔獣ヴェルヴァリア。
それは確か、ドラゴンの棲み処に寄生する魔物で、ドラゴンの糞を喰らい、ドラゴンの放つ魔力を勝手に吸収して凶悪化する魔物だったはずです。きっとドラゴン様にくっついていたんでしょうね。
それがなぜここまで大きくなったのかはわかりませんが……。
『行こうか、ユフィ。アーガルム山のようだ』
ドラゴン様が指し示したのは以前ドラゴン様がいたという場所です。旦那様は誰かにそそのかされてドラゴン様を倒しにやってきたら、別の魔獣と出会って倒したとかそういうことでしょうか?
だとしたらグッジョブですが。
と、ちょっとくらいは讃えてあげようと思った私がきっと間違っていたのですわ。
アーガルム山に着くころには旦那様は領都に戻っており、追いかけて帰還した私は執事長のジト目を完全に無視してメイド長に居場所を聞き、そこへ向かいました。
すると、愛人の誰かと抱き合う旦那様がいました。旦那様は泣いているようで、私を見ると……。
「ユフィ! この悪魔め!」
と素っ頓狂なことを言い始めました。
私があなたの腕の中の女性を害したとでも?
それに、その女性……。
「お前が僕に制約などをかけるから、彼女を助けられなかったんだ!」
「寝ているだけのようですが、どこか悪いのですか?」
「なにを言うのだ! 彼女はドラゴンの魔力にずっと苦しめられていたのだ!」
「そのドラゴンを旦那様が倒されたのですか?」
「そうだ! しかし間に合わなかった……」
「旦那様が倒したのは魔獣ヴェルヴァリアだと聞きましたが?」
「なんだそれは?」
「ドラゴン様に聞いたところでは、ドラゴンの残滓を食べる汚物のような魔物だそうです。その魔力はとげとげしく、浴びると苦痛に苦しむことになりますが、普通ドラゴン様に悪さをしない限り遭遇したりはしないようですよ?」
「僕は出会ったんだぞ? 僕は悪さなんかしていない……というか、ドラゴン様とはなんだ? あんな魔物を庇うのか?」
「ドラゴン様はこの領地を守り、鉱石産業を支えてくれる善きドラゴン様ですよ? だから倒させるわけにはいかなかったのです」
「なんだと? しかしリオメラは!」
「ヒール」
「ぐぅぅううううう」
私がヒールをかけると、なんとその女性は溶けて行きました。つまり、彼女は魔物だったのです。
「なにか言いましたか?」
「いえ……」
一瞬で灰のように落ち込んだ旦那様は、とぼとぼと伯爵邸へ帰って行きました。
ちなみにその女の母親も魔物だったようです。いなくなっていたので探したところ、旦那様が取り出そうとしたときに一瞬見えたエリクサーの神聖な雰囲気に気圧されて逃走していたのを、隣町で発見しました。
問い詰めたところ、魔獣ヴェルヴァリアに魔力を与えて成長させ、あの場所を中心にして破壊活動を行って領内でのドラゴン様の評判を落とそうとしたとのこと。
クルスローデン伯爵家への挑戦……テロ行為のようなものでした。
私は頭を抱えました。
つまり、旦那様の行動が、我がクルスローデン伯爵家に悪意を持つものの企みを止めたのです。止めたというか、文字通り粉砕したのです。
何も知らない相手であれば、素晴らしい行動です。
しかし、愛人に騙されて助けようとした結果なので称賛しづらいのです。
あの方は異世界に行って、時間を遡ったのに、相変わらずですわね。
何もあげないのは領主としてのプライドが許さなかったので食後に好きなデザートを出してあげるよう手配しましたが、別の愛人の家に行ったのか帰ってきませんでした。




