第17話 はぁ?ドラゴン退治?そんなことをしたらぶっ飛ばすぞボケェェエエェェエエエエエエ!!!②
とても気持ちの良い空気の中を馬車がのんびりかけていきます。
出立の際には鞭を入れてしまったので、しばらくして休憩を取り、水と野菜をあげて機嫌を取ったあとはゆっくりと走ってきたのです。
なぜか?
そんなことをしていたら間に合わなくなるですって?
大丈夫ですわ。
フリューヴァルス様がくれた力で旦那様がどこにいるのかはだいたいわかりますが、彼はなぜか山に登っています。残念ながらその山はハズレですわ。
1年ほど前まではそこにいたはずですが、今は下山してテレニー湖の淵にいるはずです。
しかしこの情報はクルスローデン伯爵家、アーゼンベルク公爵家および我々と親しい貴族にしか話していません。王国の大半の貴族はクルスローデン伯爵家領のドラゴンはアーガルム山にいると思っているはずです。
つまり旦那様にドラゴン様のことを吹き込み、打倒を願ったものは派閥外のものです。
まぁ、優秀なメイド長のおかげで既に把握していますが、一応。
そして、アーガルム山が空なことに気付けば、旦那様は周辺を探してテレニー湖に辿り着いてしまうかもしれません。それまでには私がドラゴン様に説明をした上で旦那様ほいほいを仕掛けて捕まえて連れ帰らなければなりません。
頼むわよ、旦那様ほいほい……。
『それで久しぶりに我のもとへ来たわけか、クルスローデンの当主ユフィよ』
「はい、お久しぶりです。政略結婚のため致し方ないとはいえ、どうしようもない旦那様が迷惑をかけたら申し訳ございません。なにせ、異世界で勇者となっただけのことはあって、脅威になるかもしれませんから」
『苦労しておるな。なに、問題ない。いざとなったら逃げればよいし、そなたの方が先にやってきてくれたのじゃからな。しかし、山に行ったというならあのもの達に出会うかもしれぬが……まぁ、問題なかろう。さぁ、お茶でもいかがか?』
ドラゴン様は快く私を迎え入れてくれました。3年前に来た時も、今も、いつも変わらず優しい方です。
こんな方を討伐しようなどというものは鬼です。鬼に違いありません。私は旦那様がやってくるか、執事長が泣きついて来るまでここでのんびりさせてもらうことになりました。
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□アーガルム山 (エランド)
「くそっ、何もいないじゃないか……まさか嘘を教えられたのか?」
僕は死病に犯されたリオメラを救うためにドラゴンを倒しに来たのに……。
美しいリオメラはその華奢な体を蝕む病に苦しんでいる。彼女はお隣のコーラヌ子爵領から今年の春、クルスローデン伯爵領を経由して王都に行こうとしたところ、旅の中で竜の魔力に当てられたらしい。
もう長くないと涙を流す彼女の母を慰め、持っていたエリクサーを与えようとしたが忌まわしいユフィの魔法契約が浮かび上がって使うことができなかった。彼女の母にも、そんな高価なものを頂くわけにはいかないと慌てられてしまった。
目の前で美しい女性が苦しんでいるのに、ユフィは鬼か悪魔か!?
それで僕は別の方法を探した。そして発見した。竜の魔力に当てられた場合、元となった竜を倒せば戻るらしい。
リオメラを苦しめる竜はきっとクルスローデン伯爵領に巣食う悪しきドラゴンだ。領民を恐怖に陥れ、旅人に魔力を振りまく害悪の化身。
僕は異世界に旅立って以降、そういった魔物や悪魔、そして魔王をそれこそ星の数ほど倒してきた。必ずや、ドラゴン……貴様も僕が倒してやるからな。
領民を苦しめることに何ら痛痒を覚えない悪辣なユフィによって、このドラゴンと戦う時ですら僕の聖剣が使えないのは痛いが、この世界にいるドラゴンならあれがなくても倒せるだろう。
あとは居場所さえわかればということで、いつも行く飲み屋で聞き込みを行い、そして僕は転移してきた。このアーガルム山に。
アイテムは封じられているが、僕は転移を身につけているからどこへでも行ける。微かに纏わりついて来る変な魔力を感じるが、まぁ害はないだろう。
しかしそうやってやって来たアーガルム山はもぬけの殻だった。いや、人はいた。たくさん。
「もしかして領主様の旦那様でしょうか?」
「ようこそお越しくださいました」
ドラゴンが住む山になんでこんなに大勢の人……筋骨隆々のおっさんたちがいるんだ?
むさ苦しいから近寄らないでほしいが……。
しかし、情報が間違っていたのか? ここにドラゴンがいないとすると、恐らく鉱山でもあるんだろう。だから彼らはツルハシなんかを持ってるんだな。
ただ、それだとドラゴンはどこへ行った?
「ここにドラゴンがいると聞いてきたんだが知らないか?」
彼らも領民であるならば僕の質問にはきちんと答えるだろう。そう思って、僕は聞いた。
「ドラゴン様でしたら、昨年湖の方に移動されましたよ?」
「んだんだ。テレニー湖ですじゃ」
なるほど。移動していたのか。
それならここに用はない。僕は行くとしよう……と思った矢先。凄まじい唸り声が聞こえて来た。
グルォオォォオオォオオオオオオオ!!!!!!




