第44話:鋼鉄の落日、エドワードの断末魔
最強兵器エレナが光の粒子となって消滅した瞬間、ガラルディア帝国の旗艦には、静寂の後に狂気が満ちた。
「……私の、私のエレナが……! 我が帝国の至宝が、あんな、あんな泥まみれの庭師の小僧に!!」
艦橋のモニターに映るアルトの姿を、エドワードは血の滲むような形相で睨みつける。 かつてスラムで見下し、家畜同然に扱っていた「道具」が、今や星々の加護を背負う神々しい存在となっている。その事実が、エドワードの肥大化した自尊心を内側から焼き裂いた。
「……いいだろう。教国も、聖女も、この不潔な村も……すべて等しく地獄の業火で浄化してやる!」
エドワードは狂ったように笑いながら、胸元に浮遊する火のオーパーツ『プロメテウス・トーチ』を強引に掴み取った。常人であれば触れるだけで灰になる神の火。しかし、彼は自らの命を薪にする覚悟で、その灼熱の核を自身の心臓へと叩き込んだ。
「グアァァァァァァァァッ!!」
旗艦のデッキを突き破り、巨大な火柱が天を突く。 エドワードの肉体は異様に膨張し、皮膚は溶岩のようにひび割れ、そこからどす黒い炎が噴き出す。かつての端正な皇子の面影は消え、そこには「嫉妬」と「憎悪」を骨格とした、身長5メートルを超える異形の炎魔『焦熱の皇子』が君臨していた。
「アルトォォッ!! 死ね! 私の目の前から消え失せろッ!!」
魔神と化したエドワードが右腕を振るうだけで、大気が爆ぜ、村の周辺の森が一瞬で炭化していく。オーパーツの力を暴走させたその火力は、もはや一つの大陸を焼き尽くすほどの規模に達していた。
だが、その絶望的な熱波の前に、三人の絆が立ちはだかる。
「……もう、君の言葉は誰にも届かない」
アルトが静かに告げると同時に、セラフィナが杖を天に掲げた。
「【アストラル・ギャラクシー】……全方位展開!」
アルトを中心に展開された『エデン・サンクチュアリ』を、セラフィナの『アストラル・ギャラクシー』が二重に包み込む。地上の楽園を守るように銀河の防壁が重なり、エドワードが放つ「憎悪の炎」を、星々の冷徹な光が次々と中和し、浄化していく。
「シャミラ、行って!」
「了解。……あんたのその汚い熱波、あたしの影で冷やしてあげるよ!」
シャミラが影の中に溶け込み、炎魔の足元から無数の影の鎖を出現させる。 秘奥義『影縫いの狂宴』。 影の鎖はエドワードの巨大な体を縛り上げ、その動きを封殺する。灼熱に焼かれながらも、シャミラはアルトが創り出した『エデン』の守護を受け、一歩も退かずに殺意を研ぎ澄ませる。
そして、アルトが地を蹴った。
農具を持たぬその手には、世界樹の根源的な生命力と、星々の裁きの力が収束している。
「エドワード……君のプライドのために、この大地を、みんなの笑顔を奪わせるわけにはいかないんだ!」
アルトの瞳が白銀に輝き、右手に凝縮された光が巨大な一振りの「光の鎌」を形作った。それは大地を耕すためではなく、世界に巣食う「悪意」を刈り取るための刃。
「これが、僕たちの……最後の答えだ!!」
漆黒と白銀の閃光が、炎魔の胸に突き刺さったプロメテウス・トーチの核を真っ向から貫いた




