第41話:聖域の曝露、暴かれた「始まりの場所」
古代都市ナジャ。ゼクスとの死闘を終えたアルトたちに、国王ハキムは驚くべき贈り物を用意していた。
「アルト殿、君たちが手に入れた3つのオーパーツが共鳴し、北西の空に不穏な魔力の渦を観測した。……君の故郷、イグドラシルの麓が狙われている可能性がある」
ハキムの言葉に、アルトの顔色が豹変した。ナジャから故郷までは、馬車を飛ばしても数週間はかかる。
「安心せよ。我が国に伝わる古代遺産、魔導飛空艇『シームルグ』を君たちに託そう。これならば、数日で大陸を横断できるはずだ」
アルト、セラフィナ、そしてシャミラは、ハキムの厚意に感謝し、黄金の翼を持つ飛空艇へと乗り込んだ。それは、かつて帝国のスラムで泥にまみれていたアルトには想像もつかない、文明の利器による空の旅だった。
しかし、その「空からの移動」さえも、ガラルディア帝国には計算の内だった。
帝都の中央管制室では、エドワード皇子が不気味なモニターを見つめていた。
「……飛空艇の熱源を捕捉。ハキムの爺め、余計な真似を。だが、そのおかげで座標の特定が早まった」
ガラルディア帝国が、地図にない村を見つけ出せた理由は二つ。
1. 「道具」に刻まれた消えぬ刻印 アルトが帝国のスラムで「開墾道具」として扱われていた頃、グスタフ皇帝が彼の体内に埋め込ませていた極小の『魔導トレーサー』の残滓だ。第4フェーズの解放により再起動したこの回路が、今、飛空艇から放たれる膨大なマナと共鳴し、正確な位置を帝国へ送り続けていた。
2. 世界樹との「量子共鳴」 人造人間エレナが解析したゼクスの遺稿。アルトが放った奥義『天地開闢・万象一畝』が世界樹の根を通じて「源流」へと逆流した際の波形を、帝国はキャッチしていた。
「座標、特定。……空白の地に、帝国の鉄槌を」
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アルトたちがまだ荒れ狂う海の上を飛んでいる頃、北の大陸の村には一足早く、帝国の黒い翼が舞い降りていた。 エドワード直属の特務部隊と、無機質な瞳を光らせる人造人間エレナ。
「……これより、世界樹への『魔導汚染杭』の打ち込みを開始」
轟音と共に、巨大な鉄杭がアルトの実家の畑に突き刺さる。地中のマナを吸い出し、代わりに「火のオーパーツ」の汚濁魔素を注入する非道な兵器。
「やめてくれ! アルトが……あの子が大事に守ってきた畑なんだぞ!」
村人たちの悲鳴をよそに、豊かな黒土がどす黒く変色し、ひび割れていく。
その瞬間、海を渡る飛空艇『シームルグ』の甲板で、アルトが激しく吐血した。
「――がはっ……!? あ、あああぁぁぁッ!!」
「アルト様!?」 駆け寄るセラフィナ。しかし、アルトには彼女の声すら届かない。
「……海を越えた、あんなに遠い場所なのに……聞こえる。……土が、僕の大切な場所が……焼き殺されてるんだ……!」
水平線の向こう、黒煙の上がる故郷を睨むアルトの瞳には、かつてないほどの激しい「怒り」の炎が宿っていた。




