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第25話:銀鱗の閃光、潮風のガレオス

 森の静寂を抜け、急峻な崖路を越えた先。アルトとセラフィナの視界に飛び込んできたのは、水平線の彼方まで続く、眩いばかりの紺碧の海だった。


「……海だ。これ、全部、水なんだね」


 生まれて初めて見る大海原に、アルトは呆然と立ち尽くす。

 眼下に広がるのは、白壁の建物が階段状に並ぶ、大陸最大の貿易拠点『砕波の港町ガレオス』。そこは帝国の魔導兵器も教国の戒律も届かない、海の掟と商人の活気が支配する中立地帯だった。


「あそこなら、他大陸の珍しい種や苗、そして――お父様がよく話してくれた『銀鱗マグロ』が食べられるかもしれません!」


 セラフィナも、杖を握る手に力を込めて声を弾ませる。二人が街に足を踏み入れると、多種多様な言語と、潮の香りに混じった香ばしい焼き魚の匂いが五感を刺激した。


 港の喧騒と、不穏な影


 活気あふれる市場では、巨大なカジキを担ぐ漁師や、見たこともない異国の織物を売る商人が行き交っている。  アルトは、港に並ぶ巨大な帆船の群れを見て、改めて世界の広さを実感していた。


「……すごいな。帝国だけが世界じゃないんだ」

「ええ。でも……アルト様、見てください。あの商人たちの持ち物。……一部に帝国の魔導部品パーツが混じっています」


 セラフィナの指摘通り、平和に見えるこの街にも、ゼクスが広める「安価で便利な魔導技術」が、生活の道具として浸透し始めていた。それは軍事侵攻ではなく、経済という名の緩やかな侵食だった。


 予兆:ゼクスの研究室にて


 その頃、はるか北方の移動要塞。

 大破した魔導外骨格の残骸を前に、ゼクスは狂気を含んだ笑みを浮かべていた。


「……第3フェーズの衝撃波、実に興味深い。身体構造そのものを変質させるというのか。……だが、足りない。第4フェーズ――『嵐神疾風』の境地に達するには、既存のマナ回路では焼き切れてしまう」


 ゼクスのモニターには、かつてアルトが放った奥義の不完全な残像が解析されていた。


「時間はかかるだろう。だが、次に会う時、私は『神を科学で再現』してみせる。……それまで、精々その素手で世界を楽しんでおきたまえ、庭師殿」


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