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第14話:聖都の謁見、虹色の波紋

 白亜の城壁が天を突く、聖都教国ルミナリア。  帝国軍の追撃を振り切り、アルトとセラフィナがその正門を潜ったとき、待ち構えていたのは、厳重な警備を敷く聖白騎士団の精鋭たちだった。

 彼らはセラフィナが密かに送り続けていた「帝国の最新情報」と「伝説の庭師の発見」という報告を受け、万全の体制で二人を迎え入れたのだ。

 二人が案内されたのは、教国の象徴である『星辰せいしんの間』。  天井に壮大な星図が描かれたその広間で、玉座に鎮座していたのは、セラフィナの父であり、この国を統べる王、オーガスト・ル・ミレニアだった。


「……よくぞ戻った、セラフィナ。お前の報告のおかげで、我が国は帝国の侵攻に先手を打つことができた」


 王の声は威厳に満ちていたが、その視線は娘の隣に立つ、泥のついた作業着姿の青年――アルトへと向けられた。


「そして、貴殿が報告にあった『庭師』か。……正直に言おう。我が娘がこれほどまでに称賛する男が、失礼ながら、どこにでもいるただの農夫にしか見えんのだ」

 

王の言葉には、娘が命がけで信じた男が「本物」であってほしいという期待と、一国の主としての冷徹な疑念が混ざり合っていた。


「あ、ええと。初めまして、王様。アルトです。……その、これ、道中で収穫したんですけど、お近づきの印にどうぞ」


 アルトが緊張を紛らわせるように差し出したのは、七色の光を放つ**『虹色リンゴ』**。  周囲の騎士たちが「陛下に対して無礼な!」と色めき立つが、オーガスト王はその果実から溢れ出す、空間を歪めるほどに純粋なマナの波動に息を呑んだ。

 王は無言でその実を受け取り、一口齧った。  ――瞬間、王の五感を、かつてないほど清らかな生命力の奔流が駆け巡る。


「(……信じられん。これはただの果実ではない。大地の理を直接喰らっているかのようだ……!)」

 

 そして王は、もう一つの事実に気づき、こめかみを震わせた。  教国には古くから伝わる、王家のみが知る秘められた「しきたり」がある。  『至高の果実を捧げることは、その者に魂の全てを託す、究極の求婚である』

 娘からの報告で「アルトは特別な存在」とは聞いていたが、まさか王の目の前で、これほど堂々と「娘を娶る」という意志(と王には見えた)を突きつけてくるとは。


「……貴殿。自分が何を差し出したか、分かっているのか?」

「え? はい。すごく甘くて、体にいいリンゴですよ。お疲れみたいだったので」


 アルトの屈託のない笑顔。その「底知れなさ」に、百戦錬磨の王ですら戦慄を覚える。この男は、天然か、それとも王すらも手玉に取る怪物か。


「……面白い。アルト殿。その真価、この教国の地でじっくりと見極めさせてもらう」


 王はアルトを賓客として厚遇することを命じたが、その瞳の奥には、愛娘を託すに足る男かどうかを試そうとする、父親としての火が灯っていた。


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