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異世界極悪レスラー〜感謝されると即死するので、全力でヒール(悪役)を演じてたら世界最強の魔王としてバズっていた件〜  作者: 早野 茂
【第5章】全世界公開処刑〜魔王よ、お前もヒールにしてやる〜

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第40話:泥塗れの神話(ヒストリー)

『……あぁ、汚い』

泥の中から立ち上がった魔王ルシファーは自分の手についた汚泥を見つめ、震える声で呟いた。

純白だった衣装は茶色く染まり完璧にセットされていた銀髪は乱れている。

だが何よりも変わったのは、その瞳の色だ。

慈愛に満ちた黄金の瞳が今はどす黒い「憎悪」に濁っている。

『私は……世界を美しくしたかった。争いをなくし痛みを消し、全てを愛で満たしたかった。……なのに』

バチッ、バチチッ……。

ルシファーの周囲の空気が振動し黒い雷光が走り始めた。

神聖な光ではない。

触れるもの全てを消滅させる破壊の闇だ。

『貴方は、土足で私の理想を踏みにじり、あまつさえ私を……この「全能の父」を、地べたに這いつくばらせた』

ゴゴゴゴゴゴ……!!

大地が鳴動する。

広場の花々が一瞬で枯れ果て美しい石畳が砕け散る。

『許しません。……もう、救済あまえは終わりです』

ルシファーが顔を上げた。

その形相は、もはや聖人ではない。

世界を滅ぼす「魔王」の顔だった。

『消えなさい、サタン・ゴウダ。……塵一つ残さず、この宇宙から消失せよ』

ドォォォォォォォンッ!!!

ルシファーが片手をかざした瞬間、轟田の立っていた場所が、空間ごとねじ切られた。

重力崩壊魔法『虚空ヴォイド』。

慈愛のバリアなどという生温かいものではない。

明確な「処刑」の一撃。

「……ッ、危ねぇな!」

轟田は紙一重で横に跳び、回避した。

だが余波だけで頬が切れ、マントが消滅する。

ヒリヒリする痛み。

死の予感。

しかし轟田は口元の血を拭い、ニカっと笑った。

「カッカッカ!いいじゃねぇか!」

《敵対感情(殺意・憎悪・激怒)を確認。……全ステータス、戦闘バトルモードへ移行》

轟田の全身から、待ってましたとばかりに闘気が噴き上がる。

これだ。

「可哀想に」なんて見下した視線じゃない。

「死ね」という純粋な殺意。

それこそが悪役ヒールにとって最高の栄養剤サプリメントだ。

「やっと『魔王』らしいツラになりやがったな!スカした笑顔より、そっちの方がよっぽどイカしてるぜ!」

『黙れ……下等生物がッ!!』

ルシファーが吠える。

六枚の翼から漆黒の羽根が無数に射出される。

それは羽根ではない。

一本一本が山をも貫く魔剣だ。

「総員、防御ガードォッ!!」

轟田が叫ぶ。

「させないわよ!」

アリスが前に出て聖剣で魔剣を弾き飛ばす。

「分析完了!射線予測、右30度!」

セレンが指示を出し、レオがミミを抱えて高速回避する。

「汚い羽根です!回収します!」

マリアが業務用吸引機で数本の魔剣を無理やり吸い込む。

チーム・サタンの連携。

だが魔王の力は圧倒的だ。

防戦一方。

広場は瞬く間に更地となり美しい城下町が瓦礫の山へと変わっていく。

「ひぃぃぃッ!魔王様が……魔王様が街を壊してる!」

「助けて!殺される!」

住民たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

彼らの信じていた「絶対的な守護者」が、今や自分たちを巻き添えにして暴れ回っているのだ。

楽園の崩壊。

信仰の終焉。

『死ね!死ね!私の世界を汚す害虫共め!』

ルシファーは止まらない。

住民の声など聞こえていない。

ただ目の前の「汚れ(轟田)」を消すことだけに囚われている。

「……へっ。余裕がなくなってきやがったな」

轟田は瓦礫を盾にしながら魔王の隙を窺っていた。

強い。

腐ってもラスボスだ。

正面から殴り合えば今の轟田でも分が悪い。

(だが……奴は『プロ』じゃねぇ)

轟田は確信した。

ルシファーは、感情に振り回されて暴れているだけだ。

「観客」が見えていない。

「試合の展開」を作れていない。

ただの癇癪持ちの子供と同じだ。

「だったら……大人の喧嘩プロレスを教えてやるよ!」

轟田が瓦礫の陰から飛び出した。

真正面からの突撃。

『愚かな!自ら死にに来ましたか!』

ルシファーが笑い、最大出力の魔力を手に収束させる。

『消え失せろ!極大消滅波ジェノサイド・カノン!!』

ドガァァァァァァァッ!!!!

極太の闇の光線が、轟田を直撃した。

大地が抉れ、光が視界を埋め尽くす。

「轟田ァァァッ!!」

アリスが絶叫する。

直撃。

骨も残らず蒸発する威力。

ルシファーは荒い息を吐き、勝利を確信して口元を歪めた。

『……ハァ、ハァ……。見たか。これが神に逆らった者の末路――』

「――痛ってぇなァ、オイ」

土煙の中から、声がした。

『な……!?』

ルシファーが凍りつく。

煙が晴れると、そこには――全身から煙を上げ皮膚が焼け爛れながらも、仁王立ちで耐えている轟田猛の姿があった。

胸には大きな火傷。

だがその瞳は爛々と輝き口元には不敵な笑みが浮かんでいる。

「……まさか、受けきるとは……!?」

「カッカッカ!いい火力だ……。焼き肉ならウェルダンってとこか?」

轟田は焼けた皮膚をバチンと叩いた。

《致死ダメージを確認。……根性ガッツで耐久》

《敵対感情(恐怖混じりの殺意)を吸収。……超回復開始》

轟田の傷が見る見るうちに塞がっていく。

ゾンビではない。

魔王の放つ莫大な「殺意」が、轟田というエンジンに注ぎ込まれ無限の再生力を生み出しているのだ。

「テメェが本気になればなるほど!俺様は強くなるんだよ!」

轟田が一歩踏み出す。

ズドン。

その一歩が魔王に「恐怖」という名の圧力を与える。

『化け物め……!来るな!』

ルシファーが後ずさる。

神が人間に怯えた。

その瞬間、勝負の流れ(ペース)は完全に轟田のものとなった。

「逃がすかよ!……メインイベントはこれからだ!」

轟田は瓦礫を蹴り、空中に跳躍した。

狙うは、空中に浮かぶ魔王。

「テメェの自慢の翼……へし折って、地上に縫い止めてやる!」

轟田の太い腕が魔王の黒い翼を鷲掴みにする。

『ひッ……!?』

「落ちろォッ!!」

轟田は翼を掴んだまま強引に回転を加えた。

空中殺法。

魔王の体をコマのように振り回し、遠心力で地面へ叩きつける準備に入る。

「これぞ!サタン式・ジャイアント・スイングッ!!!」

ブン!ブン!ブン!

高速回転する視界の中で魔王の悲鳴と轟田の笑い声が交錯する。

そして。

この戦いの様子は破壊された街の魔法スクリーンを通じて、世界中へ――まだ洗脳が解けていない世界中の人々へと配信され始めていた。


(第41話へ続く)

神を回す伝統芸能。

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