079⚫️運命ではなく未来 ’始まり’の始まり
「マイロード、ようこそ!あっ、タカミヤさん、でしたな。」
「そのとおり。久しぶりですね、テンマ所長!」
エンジェラム王国立科学技術研究所。
だが、エンジェランたちは’何でも引受所’と親しみを込めて呼ぶ。
「これがエア・ランドの模型です。コールド・フュージョン理論の実用化のお陰で、やや自然に表に出せます。」
「スペックは?」
「直径3000m、最大厚300mです。安全性はトリプルS。重力制御と万一に備えて、亜空間回廊への緊急避難経路を設けます。」
「重力制御と亜空間回廊については、時期尚早ではありませんか。」
「いえ、そうは思いません。これを公開することで、惑星間移動と人類の居住空間の拡大に繋がります。」
「次のステップに踏み出す、ということですか。しかし、武器兵器への転用の危険性がありますね。」
「避けては通れません。この世界線でのコールド・フュージョンの実現はわたしたちが齎したものではありません。つまり、今後、惑星人類自らの手で、科学技術を爆発的に発展させて行くことが予想されます。少しでもこちらが関与することで、転用のリスクを抑えることになると考えます。」
「逆に言えば、これまで我々が関わってきたために、予想より早い技術革新に繋がったかもしれない、ということですね。」
「いかにも。ああ、ここは’タコにも’と続けるべきでしょうな。」
「所長はあの’四郎次郎’の世界線にも滞在していたのでしたね。」
「あれはあれでよい経験でした。懐かしいですね。」
「あちらに戻ってみますか?」
「ハッハ!魅力的なご提案ですが、もうホモ・エターナルではありませんからね。こちらの世界線で残りの人生を賭けてみたいですね。’美味い料理はもう少し食べたいところで止める’というのが、わたしの流儀ですからね。」
「わかりました・・・。いいでしょう、プロジェクトを進めてください。ジョシュにはわたしから伝えておきます。・・・もし、あなたが’永続する存在’に戻りたいと思うことがあれば、いつでも言ってください。・・・そうは望まないのでしょうが。」
「恐れ入ります。ホモ・サピエンスであることに満足し、その運命を主体的に選択します。おっと、運命ではなかったですな、未来、でしたね。」
このプロジェクトが完成するのは、次世代のことだ。
だが今、確かに’始まり’が始まった。
テンマ所長はジンを見送ると、すぐにスタッフを招集した。
’いかにもタコにも' については、 第10部068●寺子屋の先生、すご腕や https://ncode.syosetu.com/n8145mf/59/ などをご参照ください。




