報道とそれぞれの想いと行動
アルベールがまだ爆睡中、朝刊で93F攻略、勇者パーティー【黄金の輝き】ディフェンダー【アレクサンダー・アーノルド・アルベール】追放!!の見出し。
国内で最も勢いのある【黄金の輝き】のスクープでは人々の感心を引き付けるには充分。
「チッ!!」
(やっぱり、こういう形で報道されるか……)
冒険者ギルドのマスター ウォーテルは怒りを露にする。
(酷い…確かに事実かもしれないけど…アル君…)
受付嬢ルシェラ。
◇◇◇◇◇◇◇◇
国内大手クラン【太道の虎】第3部隊所属ソフィアはクラン内の住居スペースにある自分の部屋から朝のコーヒーを飲みながら朝刊に目を通した。
直ぐ様、隣部屋の第3部隊リーダーを勤めるレインの部屋を訪れていた。
ドンッドンッドンッ!!ドンッドンッ!!
「レインッ!レインッ!起きてるか!!」
「あぁ起きてる。ソフィア、どうしたこんな早くから?」
ガチャ。
部屋の扉を開けながらレインが対応する。
「これっ!!」
「ん?これ……事実か?」
「事実かはまだわからない。だが、先ずは彼に会って事実確認をしないか?レインの気持ちはわかるけど、パーティーの事を考えたら、彼は…彼の能力は必須なんだっ!!」
穏やかな性格をしているソフィアからは想像できない捲し立てる様な早口で説明されたレイン。
「…」
「彼を第3部隊に勧誘しよう!!私達は88Fから前に進めてない。彼ならその起爆剤になれるはず!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
同じクラン【太道の虎】第1部隊に所属しているジャバウォック・ミストガンは大柄な体格に紫色のドレッドヘアーをしており、新聞とは真逆な存在ではあるが朝刊を読み、ニヤと口角が上がる。
「おいっ!カルロスこれ観たか?」
「起きたばっかだよ。はぁ…で、何が書いてあんだよ?」
「アルベールが追放だとよ?」
「アルベール??あぁ、お前のお気に入りのディフェンダーか?」
「あぁ、そのアルベールだ」
「それがどうしたよ?」
「勧誘する。だが、先ずは事実確認。その後にウチに入れる。」
「俺とポジションが被るだろ!」
「お前、俺の話信じてないだろ?アイツはお前みたいな純粋なディフェンダーじゃねぇ~。かと言って俺やあの貴族のボンボンとも違う。ククク……だが、【黄金の輝き】の心臓と脳みそは間違いなくアイツだぜ!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇
ジャバウォック・ミストガンが貴族のボンボンと揶揄する【深海の明星】を率いるリュウ・ダルク・レグナールも朝刊に目を通していた。
「フフフフッフフフ。」
「リュウ様どうされました?」
リュウの従者の1人マドカが声を掛ける。
「マドカ、これを観ろ。」
そこに2人目の従者、アーシャが来た。
「リュウ様、紅茶を入れました。」
「アルベール、これが事実なら彼を勧誘する。」
「「はっ。 畏まりました。」」
「お前達の気持ちはわかるが、何度も言うが、彼の能力は本物だ。」
そこに、パーティーメンバーのリックとリサの兄妹が部屋を訪れた。
「リュウ!俺は別に構わないが本当なのかよ?
別ににリュウを疑ってるわけじゃないんだが、コイツがそんな実力者には見えねぇよ……」
「あぁ、間違いない。リサは気づいてるよ。」
コクン!! リサが無言で頷く。
◇◇◇◇◇◇◇◇
【青空の龍】第1部隊に所属している22歳の剣士、クロム・レストレンジは歓喜していた。
「おぉぉ、これはチャンスだわー!!
私とアルベール様を繋ぐ奇跡にして軌跡。」
その後、クロムはいつもの8倍もの朝飯前を食べた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
朝刊なんか蚊帳の外。
「はぁ……んんっ……よく寝た。」
時間はAM10時。
何となく、寝て昨日の喪失感みたいな物も緩和されたかな…
まぁ……錬金術と呪具の素材でも集めに低層でも潜るか…
(アイツでしょ!?)
(追放された無能は?)
ヒソヒソ。
(まぁアイツは服だけが、取り柄のディフェンダーだから。仕方ない(笑))
(Sランクになってまで寄生プレイってダサいよな。)
ヒソヒソ。
あぁ……まぁ、配信か朝刊でバレたな……
ホント、こういうのって慣れないよな~。
嫌だ嫌だ。
ガランガラン。
「おいっ!来たぞ!堕ちた勇者様がよ!」と面識もない10人程度の冒険者に囲まれる。
何で、冒険者ギルドに来て早々に絡まれるのよ。
しかも、誰?
この人達は何なの?
「ディフェンダーなのにチャラチャラしやがってだから戦力外なんだよ!柄シャツ野郎!!」
チッ!うるせーな!本当に。
人の傷口を抉るのがお上手な事。
大体なんだ?冒険者として力量も把握出来ないのか?どこの世界でも弱い奴ほど群がってピーチク、パーチク騒ぐんだよな~
あぁイライラしてきたな。俺は馬鹿とブスとセンスがない奴が1番嫌いなんだよ!!!!!
ホントッ!ムカつくぜ!!!!!
俺を追放したあのブス3人も!!
寝て起きてイライラMAXだぜぇー。
アイツら、いつもロングブーツ履いてよ!!!
絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対
足臭い。うん。間違いない。
ネルに関しては膝下までのロングブーツですよ?
絶対、臭いね!うん、間違いない。
酸っぱい臭いと髪が赤だから唐辛子みたいな辛い、とてつもない臭いだね。
キャロルなんか会ったときから合わないと直感でビビって来たね。
だって眼鏡。眼鏡女子。わかる?眼鏡!!!!!
お洒落眼鏡じゃねーぞ!?
普通に眼鏡。
俺だけかも知れないけど、今まで会ってきた眼鏡女子全員、堅物。冗談も通じねぇ。マジで通じねぇ。会話をしようとしない気配りの無さに自分が嫌な事はハッキリ言う。自己中どもがっ!!!
自分の名誉の為に言うが俺は眼鏡女子に声をかけた事はない。
やむを得ない状況ってあんだろ?そういう時だ。
「騒がしいな。」
その場にリュウ率いる【深海の明星】が現れ横やりを入れた。
リュウ・ダルク・レグナール
薄い金髪で長めのウルフカットをしているノルン同様、美少年の彼はアルベールの2歳上。
ミストニア王国6代貴族レグナール家の嫡男。
ミストニア王国内では唯一の貴族であり冒険者。
「すまないが、俺は彼に用があるんだ。代わってくれないか?」
「…あぁ…」
リュウの威圧感に圧倒され冒険者達は退散した。
「礼には及ばないよ?(笑)」
「する気もねぇーよ!!あんな奴ら1人で片付けられるからな。まぁ冒険者にもなってテメェの力量もわからない奴は遅かれ早かれ垂れ死ぬだけだろうけどな(笑)ヒャハハハ!!」
この反応にリュウの従者マドカ、アーシャは眉間にシワを寄せるが、リュウが静止した。
「ハハハッハ…だろうね。それで、少し時間を貰えないか?そこの席で」
「何の用だ?」
「単刀直入に聞く。君は追放されたの?」
「ククク……この国の貴族は冒険者通しの揉め事まで介入するのか?」
「まぁ時と場合だろうね。でも今は冒険者として質問したんだけど?」
「あぁ事実だ。もう隠す事も無いから言うが94Fに挑戦したのを知ってるだろ?」
「あぁ。」
「それで失敗してノルンが昏睡状態になって、その責任を追及されたんだよ…これで、満足か?」
(概ね記事と同じ内容だな。しかし、黄金の輝きは何を考えているんだ?)
「でっ?それだけか?俺は素材集めと憂さ晴らしにでもダンジョンに行こうかと思ってるんだ。」
「ゴホンッ! なぁ、深海の明星に入らないか?俺は黄金の輝きが93Fまで攻略出来たのは、君の力が大きいと考えている。そんな君が今はフリーなら誘わない手はない。」
「それは、光栄だな。アンタ達は新進気鋭のクランとしての立場を俺達に負われて俺に対しては、負の感情しかないと思っていたからな?ヒャハハ!!」
「恨みの感情は無いよ。むしろ、憧れと君に対しては仲良くなりたいって感情の方が近いかな?」
相変わらず、このお貴族様は向上心の塊みたいで素晴らしくウザいな。
コイツと仲よくなって実家の金を使って一生、豪遊するという手もあるが、それでも四六時中コイツらと一緒に居ないと行けないんだろ?
ダルくね?
貴族の嗜みとか言って良くわからない芸術品とかを観賞とかするんだろ?
俺にそんな趣味はありません。
だから、一緒に居たくありません。
しかも、貴族のコイツに舐めた態度を取れば後ろの従者達がうるさいし…
良い事なくね?
「俺と仲良く?ヒャハハハ!!この国の6代貴族と何処の馬の骨かわからない孤児出身の俺が仲良く?アンタは馬鹿なのか?阿保なのか?」
「口を慎みなさいアルベールッ!!」
「マドカ大丈夫だから。今、俺が彼と会話をしているんだ。悪いけど、邪魔をしないでくれ。」
「はっ。出すぎた真似を。」
「ヒャハハハ(笑)ヒャハハハ!!顔のシワと比例して、主張の強い従者だな♪」
ギリッ。
歯軋りをする従者1マドカ。
「それで、どうだろう?俺達と冒険をしないか?」
「断る。」
「なぜ?」
「誘ってくれるのは光栄だせ?俺達と同じ少数とは言え、国内有数のクランだからな。でも…まぁ…何だろうな…上手く言えないが、今は1人で居たいんだ。」
…
…
…
「そうか…」
「あぁ。なぁ?」
「何だ?心変わりかい?」
「いや、ちょっと耳貸せ。」
「「リュウ様っ!!」」
「マドカ、アーシャ大丈夫だから。」
「別に対した事じゃないが…アンタのアビリティは鳴門雷鳴鳴神だろ?」
「ッ!」
…
「どうしてそれを?誰から聞いた?」
「誰からも。選ばれた者同士は良くも悪くも惹かれ合う。ただそれだけだ。それに、気を付けろよ。アルバスの二の舞になりたくないならな。」
「…」
「それだけだ。じゃあな。」
「待てっ!どういう事だ?」
「言葉通りの意味だ。それ以上でも以下でもない。」
「…」
折角、ダンジョンに潜る訳だから、ついでに一般依頼が有れば受けよう。そうすれば、依頼の達成料金も手に入るし正に一石二鳥。
どれどれ…
まだ、昼前だよな?
依頼ボードがただのボードじゃん!!
こんな感じだっけ?
クランを立ち上げてから、冒険者ギルドに顔出して依頼を受ける事が無くなったから、全然知らなかったわ。
深層素材を売って金に変えたから、別に金に困って無いけど、今日の晩飯代くらいは達成料金で稼げると気分が上がるんだが…
後、金を下ろすのがダリぃ…
「おはよう、アル君。」
(アル君……大丈夫そう?……)
「おはよう、ルシェラさん。」
「依頼探してるの?」
「これから錬金術と呪具の素材を集めに行くから、丁度いい依頼が有れば一石二鳥かなって」
「そうなんだ!ありそう?」
「いや~無いな、今のギルドってこの時間でも依頼無くなるんだね。初めて知りましたよ~。」
「う~ん、どうだろう?日によって違うとは思うけど…確かに今日は人が多かったかな?」
「それじゃ仕方ないですね。まぁ素材だけ集めに行って来ますっ!!またね~。」
(アル君……)
ルシェラは昨日と比べ少しだけ明るくなったアルベールの背中を見送る事しか出来なかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョンに向かう道中、会いたくない奴が前方に見えた。
ジャバウォック・ミストガン
【太道の虎】の看板冒険者。
ヤベッー。なんか今日はそういう日なんかな?
よし、目をつけられる前に後退。後退。
ウザい奴らの次はダルい奴か…
何で?
良い事無さすぎじゃね?
「よぉ!アルベール!」
おいおい!!
嘘だろっ!?
キター!キター!キター!
ダルい奴がキター!!!
何でコイツ、こっちに全速力で走ってきてんだよ!
俺達、そんなに親しくないだろっ!?
本当に何なんだよ、今日はっ!?
筋肉ムキムキの大柄な紫色のドレッドヘアーの男が、ニヤニヤしながらアルベールを追う為全速力で向かってく。
うわっ! 何だよ!俺が何したんだよ!
何でコイツはニヤニヤしてんだよっ!!!
誰かー助けてー。
イヤァー。
あっ……鼻水出てきた。
イヤァー。
あっ捕まった…
コイツ身体能力化け物だろっ!!
どういうフィジカルしてんだよっ!
この、化け物野郎がっ!
「よぉ!何で、逃げるんだよ!?お陰でいらない体力を使う羽目になっただろ?」
「アンタが迫ってくるからだろうが!!鏡見ろよっ!アンタから追われて逃げない奴なんていねーよ!それに体力を使ったのは俺の方ね?頭、大丈夫か?アンタが俺を目掛けて追ってきたから」
「あぁ? どういう意味だ?あんまり調子に乗るなよ?沈めんぞ?」
「乗る元気も無いんだけど…。で、何の用だよ?そんなに親しくも無い間柄の俺を全力で追って来た訳だから、何か重要な事か?それとも、追放された件か?なら事実だ。もはや、隠しても意味ないからな。それとは別件か?」
「そうか、なら今すぐウチに入れよ。まだ、次のクランは決めてないんだろ?歓迎するぜっ!!」
「こりゃまた、突然♪」
「お前にすれば突然だが、俺は前からお前を引き抜きたいと思ってたんだ。そんな俺にお前が追放された聞かされたなら、誘わない手は無いだろ?」
「まぁそうだな、アンタの気持ちは理解は出来るな。だが、断る。」
「なぜだ?黄金を除けばウチが92F攻略で進んでるぞ?それに、お前が入れば93も俺達となら94も攻略出来るだろう?お前を除いた黄金のメンバーと俺達を比べたら俺達の方が戦力は整っている筈だろう。強いて言えば、白蒼だろ?あの女をどう見てどう活かすかで変わるが、あの女と俺とでは比にならない。違うか?」
ほぉ…コイツは見た目とは裏腹に戦力分析が出来ているな。
コイツの言ってる事は理解出来る。
コイツらの戦い方を見た事は無いが、戦いの序盤はそれこそティラに軍配が上がるとしても、中盤から終盤にかけてはコイツらと言うよりコイツに軍配は上がる気がするな…
コイツとあの、お貴族冒険者はSランクの中でも匂いと言うか風格みたいのが整ってる。
正にアルバスみたいにな。
それに、アルバスとコイツとお貴族様はティラと違って後衛だけじゃなく前衛としても機能するだろうからな。
「おいっ!!ジャバ、いきなり走るなよ。ハァハァ俺は重装備だから、なるべく走りたくないんだよ。」
「カルロスか。悪いな、俺はコイツに用がある。お前らは先に行って入り口で待っててくれ、俺はコイツと喋りながら向かうから。」
「あぁそうか。よし!!お前ら行こうぜー」
何を勝手に決めてんだよ!!
このドレッド野郎。
ちゃんと頭洗ってるのか?
ドレッドは管理が大変だからな。
しかも、紫色だし…
まぁコイツの美的センスは俺に近いからか俺はダサいとは思わないな。
むしろ、カッコいいとさえ思える。
だけど、今はダルい。
本当にダルい…
「フンッ。俺達も行くか?」
「何、勝手に決めてんだよ?俺にも聞けよ?何でダンジョンまでアンタと行かなきゃ行けないんだよっ!!!」
「あぁ?別にいいだろ?何だお前、もしかしてダンジョン潜る時にルーティンワークみたいなのがあるのか?」
「ねぇよ。単純に1人旅行を楽しみたいんだよ。」
「フンッ。で、さっきの返答は?」
「嫌だね。ソロになった今、悠々自適に過ごすって決めてるの。深層の素材を売ったから金もあるし、今まで時間が無くて作れなかった魔導具の作成をしたり、自分の為に時間を使うって決めてるから、スポンサーの言いなりになって毎回、深層攻略なんて嫌なんだよ?」
「そうか…お前、冒険者止める気か?」
「フンッ。冒険者だろうが錬金術師だろうが魔導具師だろうが、俺は俺だ。」
「そうかい…俺はお前と冒険してみたかったけどな。なぁ、お前いつまで仮面を被ってるつもりだ?お前はいつまで、能力を隠してる?」
「…」
「なぁお前が追放されたと聞いて俺以外に勧誘しに来た奴はいるか?」
「あぁ。」
「誰だ?」
「深海の明星にはさっき声をかけられたな。」
「あのボンボンか…やはりな。」
「何がやはりだよ?勝手に解決するな。俺に説明をしろよ。」
「いや、あの冒険者ごっこのお坊ちゃんもお前の力に気が付いてる。それに、少し話した感じだがウチの第3部隊のソフィアも気が付いてる。アイツもお前を勧誘するんじゃないか?」
「へー、アンタは預言者としての能力でも目覚めたのか?それとも、名探偵の様な推理か?どちらにしても凄いな。悪いがソフィアとは顔馴染みだけど彼女が俺を勧誘してくれるのは有り難いけど、あそこのリーダーは俺と合わないんだよ。性格的にな。」
「あぁ。俺も合わない。雑魚の癖にイチイチうるせんだよな。正直、付与術師とかくだらない。せめて回復術師との2刀流にしろよな。お前もそう思うだろ?」
「俺は思わないけど?一緒にするなよ、マジで(笑)俺はこう見えてチームプレイヤーなんだぞ?」
「自分を押し殺してか?そいつはめでてーな!!だからお前は今、1人なんだろ?まぁどっちにしろ、俺は同じクランだろうがパーティーだろうが雑魚には口を開かない。無駄だろ?」
「勧誘しに来たのか、説教しに来たのかどっちなんだよ。まぁ、確かに雑魚に何を求めても雑魚だから何も無いな。この答えで満足か?」
「クククッ。口が達者な奴だな。あぁ、後は腕もか?」
「なら、アンタは見かけによらず、頭がキレる面倒な奴だな。その見た目はその聡明な頭を隠す為のコスプレか?だとしたら、俺はまんまと嵌まったよ。素晴らしい作戦だな。」
「お前のそのアクセサリーと一緒だよ。いや、着ければ何かしらのデメリットはあるが大幅な戦力向上が出来る呪具とでも言おうか?」
コイツ…
ダルいな。
何で、コイツが呪具の事を知ってるんだ?
ノルンが教えた?
いや、それはないな。
教えてノルンに何のメリットもないし、そもそもコイツとノルンが吊るんでる所なんて聞いた事もないし、見た事もないぞ?
コイツは何か掴んでるな?
そして繋げて憶測にしてる……
それに確信を持たせる為に俺から会話を引き出そうとしてにる。
そんな感じだな。
「前言撤回だな。アンタは面倒なんかじゃないな。糞面倒だな。」
「そうかい。まぁ、気にするな。呪具に関しては誰にも言ってないし、そもそも言った所で誰も信じないしな。現に俺の相棒にお前を勧誘する事を伝えても乗り気じゃないからな。お前の長年の作戦と行動でお前の能力を評価している人間なんて殆んど居ないだろ?」
「なぁ、もういいか?」
「おーい!!ジャバ。」
「フンッ。もう着いたか。」
「あぁ、長い長い話し合いだったな?」
「有意義だったろ?」
「多少はな。」
(今のコイツはどれだけの大金を積もうが、良い条件を提示しようがウチには入らないな。静かに見守りながら時折、様子を伺うのが1番だな。)
◇◇◇◇◇◇◇◇
1Fなんて久し振りだな。
黄金の時も素材採集は60Fから開始してたし。
こういう時じゃないと、来る事も無いしな。
取り敢えず、薬草とメテライト鉱石を採集しながら15Fくらいまでを目安にするか。
後は適当に魔物の素材を集めるのでいいかな。
「オリャァァァァァ!!」
ピギェーー!
ヒャハハハ(笑)
気持ちいいー。
マジで最高。
次々に倒れていくゴブリンよ、俺の憂さ晴らしに付き合ってくれてありがとう。
感謝する。
さて、素材も回収しようかな?
ぶっちゃけゴブリンの素材はいらないけど…
「ヒャハハハ!雑魚ども!!」
「ギャアァーーー!」
悲鳴?
向こうだな。
御愁傷様。
いつの時代も冒険者は命がけって事だ。
はいっ!お疲れー。
力が無い奴から淘汰される、それが世の理。
助ける義理も無いしな。
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
足音?
左側からだな。
しかも大量の…
こっちに来…て…る?
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
「だずけぇぇてぇぇーー」(助けて)
水色の髪をした幼い女の子が、ゴブリンに追われアルベールの方に向かってくる。
いやいやいや、嘘でしょ!?
マジでダルいわ…
違う所に逃げろよ…
こっちに来んな。
マジで来んなよっ!!
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
はぁー。
仕方ないか。
何でテメェの力量もわからないのかね?
冒険者でそれは死を意味するのに…
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
あっ!!勇者パーティーとか言われてるどっかのお馬鹿さんもそうだったな。
上の冒険者がそうなら、下の冒険者も自ずとそうなるよね?
そこを目指してる訳だし。
馬鹿が馬鹿に憧れる。これが社会の縮図。
「身体強化!!」
「オリジナル身体強化!!」
アルベールは一般的な付与術と自身が編み出したオリジナル付与術の重ね掛けを行い、愛用の黒いシンプルな鎌【首斬大鎌】を構えた。
ピギェー。
パジェー。
ゴブリンが次々に倒れていく。
普通のゴブリン。
何の変哲も無い、普通のゴブリン。
これから逃げてきたの?この娘は。
底辺と言うか…
駆け出しじゃね?
(す、凄い…………)
水色の髪をした幼い幼女はさっきまで自然と溢れていた涙と鼻水を持参していたタオルで拭き取りながら驚いていた。
ふぅー。
憂さ晴らしにはなったかな。
ゴブリンくらいがストレス発散には丁度いい。
弱いしね。
次から次へと沸いてくるし…
「大丈夫かい?ゴブリンなら倒したから。」
「はい。……そ、その、ありがとうございました。」
素材をまだ、集めたいけど…
まだ、潜りたいけど…
この娘をどうしようか?
取り敢えず、送るか?
「俺は帰るけど街まで送っていこうか?」
「はい。……お願いしてもいいですか?」
街までの帰路で彼女の情報を聞いた。
彼女の名はルーナ・エイシア。
【青空の龍】というクランに所属している10歳になったばかりの冒険者だった。
【青空の龍】は元々、【太道の虎】と並ぶ国内大手のクランだったが、看板冒険者のアルバス・サンダースが冒険中に命を落とし、それに比例する形で勢いを失くしたクラン。
クラン本部まで近づくと何やら騒がしい。
「あっルーナ!」
「ルーナが居たぞ!!」
「何処に行ってたの?ルーナ。」
ルーナと同じくらいの娘が口を開く。
「ごめんね。その…ダンジョンに」
「1人で?」
「…うん…」
「もう、あれだけ総帥に言われたのに…」
「…ごめんなさい…」
「でも、無事で良かった。」
うん。うん。感動の再会は邪魔しちゃいけねーよ。でも、こういう時って気まずくね?
そんな事を思っていると、クランの入り口が開いて茶髪の男がこちらに歩いてくる。
「ルーナ!見つかったか?」
「はい!居ました。」
「…ごめんなさい…」
茶髪の男はデューク・スターリングといい、
このクランの第1部隊のリーダー。
アルベールとはSランク合同討伐で顔を会わせている。
「アルベール。ありがとう。君が送り届けてくれたんだろ?」
「まぁ…そんな所……あぁ、でも…大丈夫だ。俺は年下には興味が無いから。そういう気持ちは無いから。じゃあ、俺はこれで。」
あぁ…コイツもダルい奴だ……
コイツは強いとかじゃなく堅いんだよな~
ノルンとキャロルを足した性格。
堅物。
だから、俺とは合わない。
無駄に正義感が強い。
だから、一刻もこの場を去らねば。
「待ってくれ!総帥もお礼を言いたいだろうし、中に入ってくれ!」
「い、いや…そんなお礼なんていらないから。大丈夫だから。」
ダルい、ダルい。
そんな、大した事してないけど…
総帥?
総帥ってクランのトップでしょ!?
俺達は少数精鋭だから総帥とかは居なかったけど、だいたい大手のクランだとクランの財務からスポンサー対応などを取り仕切る裏のボス。
クランの事実上トップだろ?
何を話すの総帥と?
ありがとう。の一言で充分なんですけど。
それ以外の物は要りません。
本当に要りません。
だから、帰らせて…
「アルベールさん……是非上がってください。」
ルーナも上目遣いで口を開く。
「そうだよ!?お兄さん。是非。是非。」
「い、いや~」
そうなるよな……マジでダルいわー!!!
キツいキツいキツいキツいキツいキツい。
帰りて~。
マジで帰りたい…
◇◇◇◇◇◇◇◇
そのまま【青空の龍】本部に連れていかれ、大きな客間に通されたアルベール。
ガチャ。
扉が開く。
「初めまして、青空の龍で総帥をしているアンソニー・ゴードンだ。」
白髪のおじさんが口を開く。
「本当にありがとう。アルベール。
君のお陰で若い芽が救われたよ。」
デュークが笑顔で口を開く。
「そりゃ~どうも。」
俺は早く帰りたいんだよ!!
救ったけど、俺は救われない!!
この世は無慈悲ー。
こういう場はなれないよ、本当に。
「本当にありがとう。少ないかもしれないが受け取ってくれ。」
そういうと白髪の男性は封筒を差し出した。
まぁ、金だろうな。
受け取っておこう。
お金は大事。マジで大事。
「ありがとうございます。素直に頂きます。では、俺はこれで……」
「待て待て。そんな急ぐな。」
立ち上がろうとするアルベールを、ニコッと微笑みながら総帥は口を開いて止める。
「君は、もう勇者パーティーじゃないんだろう?
ウチに入らないか?」
「そりゃ、また急に……」
「君も知ってるだろ?ウチの事情を。」
事情?
あぁアルバスの事か…
アルバス亡き後、入れ違いで勢いをつけてきたのが俺達、【黄金の輝き】だったからな
「まぁ……ほどほどに。」
「どうかね?それに、生前アルバスが君の事を高く評価していた。君は純正なディフェンダーとは違う。パーティー事情によって役割を変化出来る、違うか?」
「ハハハまた、そんな鋭い眼光で(笑)高評価はありがとうございます。ただクランへの入団は遠慮しときます。今は、1人で居たい気分なので。」
「そうか…」
さて、帰るか…
【青空の龍】か…
アルバス・サンダース…




