陰と陽
ふぅー。旨かった。
シルフィーのお母さんは料理上手だな。
容器は明日返せば良いよな?
後で風呂場で洗うか。
それよりも、早くにあれを完成させるかな。
後、少しだしな。
「ねぇ、もう寝るの?」
「いや、今から錬金術をやる。後、少しなんだよね。」
「そう、頑張ってね。なら話掛けない方が良いかしら?」
「いや、大丈夫だよ?それにターニアからの話ならいつでもウェルカムだよ(笑)それにレンズを型にはめ込むだけだからさ。」
「ねぇアル?」
「何?」
「今は…リセットとか考えてる?」
「…」
「私はさ…《《アル》》とかみんながアルに託したでしょ?だから、最初はその願いと想いを継いで欲しかったけど、今は少しでもアルが安全に楽しく笑ってくれていたら、それだけで嬉しいのよ。」
「フフ、ありがとうターニア。正直さ、わからないんだよね…ターニアと別れてから良い出会いが合ってさ、それで自分の手に届く範囲でやれるだけやろうかなって思ってるけど…未だに何で俺がこの役割なんだって思う時があるんだよね…」
「それは当たり前よ。むしろ貴方は良くやってる方よ。きっとみんなも喜んでるわよ。だって私が言うんだから間違いないわ。貴方とティラが運命により引き合わされた事が…その事実が貴方はちゃんと歩んでいるって事じゃないかしら?」
「だと、良いけど。まぁみんなにはさ…やっぱりそれぞれの意見はあると思うけど、勝手に託して俺の前から消えたんだから、意見を言う前に謝罪して欲しいけど(笑)じゃないと発言権はあげないんだ(笑)」
「そうね。その気持ちの持ち方の方がいいわよ。貴方は背負い過ぎちゃう所があるから。」
「そう…だね。」
「それに、今度は私も居るんだから。絶対に逃がさないわよ?覚悟しておいてね♪」
「逃げげないよ(笑)でも、ありがとうターニア。よしっ!ねぇ見て見てターニア。ヘヘヘ、遂に完成したぜ!!!」
「もしかして…」
「ちょっと着けてみるわ。どれどれ~。」
「ッ!!」
「おぉターニア?目があったね♪」
「まさか、本当に…?本当に完成したの?」
「ヘヘヘ、俺の叡智を舐めるなよターニア。何て言ったって稀代の天才達から伝承された物だからな(笑)ヒャハハハハヒャハハハハ。」
「貴方、本当に化け物ね。魔法だけに限らずこんな物まで…魔力因子だけじゃなくて、私の姿までハッキリとわかるのね?」
「当たり前だよ。今さら魔力因子を肉眼で見て何になるんだよ(笑)」
「ねぇアル?魔力因子の陰と陽ってわかる?」
「う~ん。わかるはわかるけど、全部を把握してる訳じゃないかな。」
「なら、丁度いいわ。私は貴方の側に居るけど何の役にも立てないし、貴方は変わったわよね?」
「いや、ターニアは居てくれるだけで俺は嬉しいのよ。それに変わったって、そりぁ生きてれば考え方とか色々と変わるんじゃない?」
「違うわよ。貴方の今の属性は闇。貴方に何があったのか聞くのはまた今度として、仮に私が契りの契約を貴方と交わしたとしても私が今の貴方の力になれる事は無いのよ。」
「ん?どういう事?」
「魔力因子の種類よ。属性とはまた違う捉え方で分けられている魔力因子があるのよ。」
「陰陽でしょ?」
「えぇそうよ。なら、闇属性魔法から生まれる魔力因子は陰の魔力因子しか生まれない事は知ってる?」
「えっ!?そうなの?」
「えぇそうよ。闇と光はそれぞれ闇からは陰、光からは陽の魔力因子しか生まれないわ。他の火属性、水属性なら使う人、使う魔法によって陰と陽は生まれるけど、闇からは陰の魔力因子しか生まれない。」
「そうなんだ…闇と光は少し特別なんだね?」
「う~ん、特別か特別じゃないかで言えば他の属性と比べたら特別かしら。ただ、問題はそこじゃないのよ。」
「何が問題なんだ?なんかまずい?」
「フフフ、大丈夫よ。問題なのは私は陽の魔力因子の塊なのよ。」
「ん?陽の塊?どういう事?」
「分かりやすく言えば、陰と陽の魔力因子の塊から生まれた私の様な王は私以外に居るのよ。」
「そう言う事か…要は陰の魔力因子で出来たターニアみたいな聖霊が居るって事だよね?」
「そうよ。私が聖霊の女王なら彼女は悪霊の女王かしらね。」
「悪霊の女王…《《アル》》からも聞いた事も無いな。でも、言ってる意味はわかるよ。陰と陽でそれぞれの女王が居て、ターニアが陽の女王。もう、1人陰の女王が居る…だけど、その彼女は今まで何をしてたの?ターニアみたいに喋れるんだよね?」
「勿論よ。しっかりと口もあるし自分の意思もあるわ。でも、彼女は恥ずかしがり屋なのよ。だから基本的に表舞台には現れないわ。だから、契りの契約も私が担当してるのよ。それに、人間から放たれる魔法で生まれる魔力因子は陽の方が多いのよ。」
「そうなんだ、初めて聞いたな。だから、その悪霊の女王が裏で過ごしても陽の塊で出来たターニアが表舞台に居る限りは役目を果たせるって事か…」
「う~んと役目の所、以外はその解釈で大丈夫よ。それで話を戻すけど、悪霊の女王に会わない?」
「会える者なの?」
「会えるわよ。と言うか、この話はアルに悪霊の女王を紹介しようと思ったのよ。別にアルがリセットを目指さなくても陰の魔力因子を集めて貰うに越した事は無いでしょ?」
「それは、有り難いけどさ俺は聖霊共有じゃないけど、協力して貰えるの?それに人見知りなのはわかったけどさ、俺の事どう思ってるのよ、その悪霊の女王様は?向こうが無理矢理だと思ってるなら俺は止めとくよ。」
「だってよ、ペル」
「えっ!?」
アルベールの後ろに恥ずかしいからかずっと両手で顔を隠しているティターニアと同じサイズの聖霊が1人居た。
「ほら、いい加減にしなさいよ。アンタの希望でしょ?アルも困るわよ。」
「うぅ…うぅうぅぅ…だって恥ずかしいんだもん。」
「もう…ごめんねアル。この娘はね、私と同じでアルの事が好きなのよ。でも、私と違って今まで人間と話をした事がないから色々と緊張してるのよ。だって人間で闇属性を使えるなんてアルくらいでしょ?」
「闇属性が使える人間が他に居るかはわからないけど、俺の事を好きになってくれてありがとう。その…俺はさ、ずっと1人だったからそう言う言葉に弱いんだよね…本当にありがとう。ターニアからもさ一緒に居るって言われて嬉しかったんだよね。」
コクンッ!コクンッ!
頷く悪霊の女王。
「もう、ここまで来てそれなの?ペルも勇気を出したら?何回も言ってるけどアルは少し変かもしれないけど嫌な奴じゃないでしょ?」
「…うん。優しい…のは知ってる。ずっと見てたから。」
「ハハハ優しい…かな?しかも、変って(笑)」
「優しいから傷ついてるんでしょ?まったく少しは自覚してほしいわ。それに頼りになるから巻き込まれていらない事まで背負う羽目になってるんでしょ?ついでに変なのも自覚して欲しいわね。」
「ハハハ、ついでに変ね(笑)。まぁ好きで頼もしくなった訳じゃないけど…半分以上が嫌々ね嫌々。」
「そうだけど、見てて巻き込まれ無くてもいい事に巻き込まれてるわよ。今日だって何の得も無いのにあの娘の武器を作るのに必死だし、その前なんかその娘の武器を作る為の鍛治場を借りる為にいらない労働ばっかりじゃない。誰かの為、誰かの為。」
「まぁクロムの件は俺から言った事だから巻き込まれた内には入らないよ。だって変わった娘だとは思うけど、あそこまで信頼してくれてちゃんと言葉と行動に移されたら何とかしてあげたいって思うじゃん?」
「本当にお人好しなんだから。それでペルはどうするの?そう言うのは自分で言った方がいいわよ。」
「うん。あのね…」
「顔の両手をどけなさいよ。もう、いつまで恥ずかしがってるのよ。」
「うん。」
両手をどかしてアルベールと目が合う。
「キャッ!!カッコいい!!どーしよー。目が合っちゃった!!どーしよー。どーしよー。」
「はいはい。カッコいいね、カッコいいね。もう、わかったからちゃんと会話をしなさいよ。アルが困ってるから。」
「別に困ってないから大丈夫だよ。それに可愛い顔してるね。」
「かっ可愛い…私が?」
「うん。可愛いよ。凄く可愛いよ。」
「良かったらどう?」
アルベールは左手の手の平を差し出した。
ちょこんと手の平に座る悪霊の女王。
「温かい…」
「今日は来てくれてありがとう。よかったらまた遊びに来てよ。」
「いいの…!?」
「うん。ターニアと一緒にいつでもおいで。」
「…うん……なら、暫く居て…いい?」
「勿論。こっちはずっと居て欲しいよ(笑)その方が俺は嬉しいし、俺が忙しい時にターニアは誰と過ごしてるとか、楽しんでるかなとか、ずっと気になってだんだよね。でも、2人で居てくれるなら俺も安心だし。」
「あら、そんな事まで心配して考えてくれてたの?嬉しいわ。ずっと私の片思いかと思ってたのに。」
「片思い?ターニアが?なら、俺もずっとターニアには一緒に居て欲しいって思ってたから晴れて両思いだね♪」
「ぐっ…今日は一段と攻撃力が高いわね。ペルは?」
「本気に…しちゃうよ?」
「いいよ。そのつもりだから。」
「うぅ…嬉しい!!嬉しい!!嬉しい!!」
悪霊の女王はアルベールの左手の指に体をクネクネしながら絡み始めた。
(本当はずっと一緒に居て良いか?を聞く予定だったけど、今日の所はこれでOKかしらね。あまり、ペルの背中を押しすぎてもパンクしちゃうだろうし。)
「ねぇお姫様、君の名前を教えてくれないか?」
「ペル…ベルセポネ……」
「ペルって呼んでいい?」
「うん。ターニアにはそう呼ばれてる…」
「そうなんだ。これからよろしくねペル」
「うん…よろしく…お願いします…」
「良かったわね、ペル。」
「うん、ターニアありがとう。」
「良いのよ。それでペルは契りの契約はするの?」
「うん…したいけど…迷惑じゃないかな?」
「アルは?ペルとの契約は迷惑?」
「いや、嬉しいよ。でも、契約って出来るの?俺は聖霊共有のアビリティじゃないよ?」
「それは少し解釈が違うわね。先ずはね聖霊共有の本来の能力は魔力因子を肉眼で把握出来る事よ。それ以上も以下でも無いわ。そこに私達と契約は無いのよ。だから、私が聖霊共有を持つ人間と契りの契約を交わしたのは義務ではなく只の義理よ。」
「義理か…」
「えぇ義理よ。だから私も毎回、契約してた訳じゃないわ。」
「えっそうなの?」
「そうよ。人によって、この人は合わないなって思ったら、少しだけ話をして適度な距離を保ちなごら過ごすわ。それに貴方ならわかるんじゃないかしら?《《アル》》の時とそれ以降で貴方と過ごしていた時の事を踏まえたらね?」
「まぁそうだね。何でもそうだけど、当たり前じゃ無いって事だね…当たり前じゃ…無い。」
「アル…」
「アルさん…」
感謝をしないといけない。
当たり前の様に俺にとって優しく接してくれる人達もいつ目の前から消えるかわからないし…
もう少し目を頭を自分じゃなくて周りの人達に使わないとな。
何かが変わって来てるのは確かだ。
自分の中の何かが変わって来てる。
昔よりも視野が広く感じられるし、明日が楽しみになって来た。
今を守りたい…
そんな、気持ちが芽生えてきた。
「じゃあ契約しちゃう?」
「俺はお願い。いや、お願いします。ペル、幸せに出来るかわからないけど一生、俺の側に居て欲しい。ずっとずっと一緒に居たい。」
「うぅ嬉しいよ…はい、私もアルさんの側から離れません。ずっとずっとお使い致します。」
「フフフ、良く言えたわねペル。偉いわ。なら、アルはそのままじっとしてて。ペルが自分の魔力をアルの体に流してアルの魔力をペルが受けるから。」
「わかった。」
ジーン。
暖かいな。
これがペルの魔力か…
優しくて暖かくて包み込んでくれそうな感じがするけど、何処か寂しげで孤独な感じもあって守ってあげたくなる…
「ペル…」
「はい…」
「暫くじゃなくてさ、ずっと一緒に居ようね?」
「はい♪」
「ねぇ私は?」
「勿論、ターニアもだよ。俺も逃がさないよ?(笑)」
「望む所よっ!!」
「へへへ。」
「フフフ。」
「エヘヘヘヘヘヘヘ。」
作者より
ターニアは現在ティラ(この時代の聖霊共有)と契約してますのでアルベールとは契約出来ません。
悪霊の女王ペルセポネは生まれて初めて契約した人間がアルベールと言う事になります。
契約すると何があるのかは後に出てきそうなので割愛します。




