↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
行方不明なキミをシる  作者: 氷雨 ユータ
2nd BRD  触れないカノジョのハナシ
43/46

空っぽな言い伝え

 校舎で実際何があったかなんて誰にも分からないが、騒動は電波に乗せて町全体に知れ渡ってしまった。当然この件は問題になったのだが結果的には怪我・死亡した被害者など存在しない事と榊麻と伽堂の二人が俺を擁護するような証言をしてくれたお陰で無傷とは言わないが、停学のような重い措置は取られなかった。部活に対する廃部の声もまだ上がっていない。

 特に伽堂の権力は本人が引き籠っていただけで今も健在らしく、担任は『伽堂が学校に来るようになったお陰だぞ』とも言っていた。まあクラスが違うので詳しい事は何も分からない。そもそも彼女は何処のクラスに振り分けられているのだろう。学校に来なくたって入学はしているみたいだから席はあると思う。思うだけだ。

「……せっかく登校したのに保健室登校でいいのか?」

「身体が弱いという事にしておけばいつでも都合よく逃げ出せますの。神坂君はずるい事をなさらないの?」

「しない。ああまあ……深夜放送部は一種のズルだけどな」

 もっとも、俺に被害がなかっただけで日常に変化が起きなかった訳ではない。榊麻は直前の俺に対する暴行を咎められて停学になったし、伽堂の方も学校に出るようになった事でまた面倒に絡まれているとのこと。流石に学生生活では舞子さんを頼れないらしい。

「ともあれ今回の放送は色んな意味で反響があった。募集箱を軽く見たんだけど、町の人からも大量にお便りが来てるっぽいんだよな。ひょっとするとお前の問題を解決したのが大きいのかもしれない。ありがとな」

「今までは来てませんでしたの?」

「まあ、やっぱり部活だしな。どうしても在学生からの投稿が多くなってる筈だ。大抵箱を先に確認してるのは一魅だから、アイツが気にしてないなら多分ないんだろ。手がかり」

「…………?」

 あ、と己の失言に遅れて気づいてしまったが、単なる動機にシークレット性はない。誰かに話して気まずいなんて事もないだろうと思い直し、そのまま打ち明ける形で続けた。

「この部活に入ったのは一魅を見つける為なんだ。アイツが透明人間になってるのは鬼小山の件とはまた違う理由で……あれを解決しても見えてないだろ? 子供の頃からアイツは俺以外の誰にも見えなくて、でも幽霊じゃないのは分かってたからどうにか身体を見つけてやりたいと思ったんだ。そしたら、都合の良い部活があった」

「話が読めましたの。放送を介せば神坂君以外の皆も弓水さんを認識出来ますから、それで手がかりが見つかる事を祈っていますのね」

「ま、そんな感じだ。今回で大きな一歩を踏みしめたならお前を助けた意味もあったかな。元々放送に混ざる声を除去したかっただけなのに、最終的には随分大事になっちまって……」

「その声ですが、もう消えましたの。今朝、舞子と共に確認しましたわ」

 伽堂は保健室の布団を足で雑に蹴っ飛ばすと、こちらに身体を降ろしてきて、俺の頭をポンポンと撫でた。

「正直に言うと、私も放送で楽しく聞いていたのは弓水さんの声ですの。あの声を聞いていると何だか心が不思議と安らぐようで、ティータイムのお伴にはぴったりだったのです。しかし今回に限っては神坂君の方が……私にとっては安心出来ましたの」

「―――同年代にあんまこういうのやらないだろ」

「何となく、ずっと前はこのような行動をしていた気がしましたの。おかしな話ですが、貴方と私は今日ここに至るまで知り合ってすらいないのに、既視感を抱いてしまうなんて」

「親戚の子供とでも遊んでたか?」

「さあ? ですが記憶なんて曖昧な物ですから私は気にしていませんの。ただ私がやりたいからやっただけで……舞子にやってもらった時、私は嬉しかったのですけど、神坂君は嬉しくありませんでしたか?」

「……初めてされたからな。そういう評価よりも困惑してるよ」

 そもそも頭を撫でられた経験自体がない、だって俺は女性に触られると無条件に……

「え?」

「え?」

 一魅以外の女性に触られると拒絶反応が。

「え?」

「え?」

 違う。おかしい。条件反射の拒絶は誰が相手でも起きていた筈で、そこに俺の私情が加わっているというなら姫篠は今頃俺に触れている。数少ない友人との間に細かい問題など生じていない筈だ。

「「も、もう一度やってくれないか?」

「は、はい……?」

 学校では一部の人間によって悪意ある広まり方をしているからわざわざ説明する必要もなかったが、そういえば伽堂は引きこもりで学校に来ていない。俺のトラウマなんて知らないのだ。きっと目の前の男が撫でられる事にハマったとでも思っているのだろう、視線が軽く軽蔑を含んでいる。けどどうだっていい。長年の悩みが解決した可能性があるのなら。

 今度は恐る恐る、その細長い指先が俺の頭に触れた。気のせいではなく、タッチし続けている。

「………………」

「神坂君?」

 

 鬼小山を筆頭に、透明人間達にはからくりがあった。

 放送に混ざる声とやらも、除霊が済めば落ち着いたらしい。

 

 自分でも顔から血の気が引いていくのが分かる。手に取るように、或いは鏡で我が身を見たように。トラウマと一言で片づけこれまで付き合ってきたモノの正体が変わったかもしれない。だっておかしい。付き合いがなかった。例外を設けるならそこには何かしら事情が必要だろうに、伽堂とは過去の関係値が一切存在しない。








 俺のトラウマにも、何かある……のか? 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。