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行方不明なキミをシる  作者: 氷雨 ユータ
1st BRD 知らないクラスメイトのハナシ
15/27

平和という名前の夢を見た

 ”見えないクラスメイトのハナシ”はこれにて終幕。確証もなく始まった透明化の解除という無謀は成功という形で収束した。透明になっていた矢崎、三芦、花影、鬼子山にはその自覚が全くなく当初は俺達に苦情を入れにきたものの、学校に残された記憶が彼らの透明人間化を証明していた。


・記憶には残らなくても記録には残る。


 それが俺達の見つけた透明化への対策。深夜に何故か姿が見えた事については……良く分からないので二人だけの秘密となった。まず深夜に学校へ行く事自体が例外的で、少数派だ。騒ぎを無暗に大きくするものではない。

「それにしてもクラス写真なんて良く見つけたな」

「何処かの誰かがネムネムしてる内に働いていたの。あーあ、まさか一番の功労者が学校に入学してもいない私だなんて。部長さんは一体何をしているのかしら」

「制服を着てるだけの不審者に手柄を取られて真に遺憾の意だ」

「あのさ……」

「はい、すみませんでした! 全ては一魅様のお陰でござりまする!」

 彼女には本当なんと労ったら良いかもわからないが、今は新聞部からの追及を避ける為に二人で部室に引き籠っている最中だ。自分が生徒でないのを良い事に一魅は机の上に寝転がるという大変モラルの欠如した休憩状態に入り、俺はそんな彼女の足を揉んでいる。何、この状況。

「……クラス写真を各教室に貼り付けて名前と一緒に掲示する。透明になってた奴にまさかその時の記憶がないなんて知らなかったけど、だとするなら相当恥ずかしいよな。突然自己紹介みたいに晒しあげられて」

「ラジオで突然指摘されてどんな気分だったかは……もう十分聞いたかな。でも彼らが何を言ったって例えば鬼子山サンは数日以上も出欠が取れていないし三芦クンは部活に昨日行かなかった。幾ら記憶と齟齬が生じても記録は確かに残されている……迷惑だってまたクレームを言いに来るかもだけどその時は対応してね。部長サン」

「はいはい。実際さ、俺もアイツらを途中まで忘れてたからデマの訂正なんてしたくないんだよな。あれ? でも何で俺は透明だった事実まで覚えてるんだ? お前だけならともかく」

「さあ?」

 事件は解決したが謎が全て明かされた訳ではない。透明人間達のSNSのアカウントの名前とアイコンを変える小細工をしたのが誰かは分かっていないのだ。あれは……今にして思うと、解除条件を簡単に満たさせないようにする為だったとしか思えない。つまりそいつは、透明化の解除方法を知っていたから妨害したのだ。

 気にならないと言えば嘘になるが、これ以上は追及出来ない。話題性もなければリスナーにとって新鮮味がないからだ。成り行きで調査しただけで本来の目的はリスナーを増やして一魅の情報を持つないしは捜索している人間までこの放送を届かせる事。

 犠牲者が出る手前だった事件なので大きな声では言えないが、一魅に関わらないなら透明化の真相なんてどうでも良かった。俺は彼女の為に放送している。この……ダウナーな世話焼き大好きっ娘に。

「物置に花影が居たのはお前が匿ったんだよな?」

「まあね。大事な要件ってのは正にそれで、彼女は矢崎クン達に追い回されてここに立て籠もろうとしていたの。そこでワタシが手を貸した……相変わらず見えてないみたいだったから、彼女からすれば透明状態でもそうでなくても運よく生き延びたって認識になってるんだろうけど」

「……透明状態なら俺が触れるって保障もないし、お前が黙ってた理由も今なら分かる。だから座席表の回収を俺に任せたんだよな。信じてくれるか分からないけど、もし花影が来るならちゃんと教えとくよ。手柄を独り占めになんてしない」

「それ、キミが女子の好感度を稼ぎたくないだけでしょ? 面倒だものね」

 所謂、絶対領域と呼ばれる部分を弄るのは幾らマッサージでも気が引けたが一魅は少しスカートを捲ってどうぞと言わんばかりに俺の指を受け入れた。


 ……捲り過ぎて、太腿の付け根にパンツの紐が見えるけど。


 努めて見ないようにはする、飽くまで努力だ。俺は女子が嫌いだから好感度を稼ぎたくないのではなく、一魅以外の女子に触れないから避けているだけだというのを勘違いしてはいけない。それってつまり、本来あちこちに向く筈の邪心が全て集中するという意味で―――

「ねえ、あの時どうして叫んだの?」

「ん?」

「ワタシが帰ってって帰宅を促した時。急に叫ぶからびっくりして電話をかけたのに出てくれなかった」

「……………」

「何も言わないは、おかしくない?」

「……覚えてない」


 そんな行動を取った記憶自体、存在しない。


 帰宅を促された所まではきちんと覚えている。けどその後俺は逃げるように自宅へ戻り何事もなく就寝した筈だ。何もミていない、何も聞いていない、何も覚えていない……おかしいのは俺? それとも一魅?

 二人の視線が一致する。長い付き合いだ、もう喋らなくたってお互いの考えてる事くらい分かった。

「……深くは聞かないでおく。本当に何も知らなそうだし、これ以上首を突っ込んでも良くない事が起きそうだし」

 一魅は目を瞑って追及を諦める姿勢を見せた。分からない事は分からないままでいい、自分達は飽くまで活動を続けるべきだと、そう助言でもするみたいに……ほら、俺達の方針は一致している。

「透明化、先生の口ぶりだと被害者が大勢いるみたいだったけど深夜になっても見えなかったって事は手遅れって事でいいんだよな? あの時見えてた奴は全員助かった訳だろ」

「そこまでは助けられない、でしょ。ま、もしこれからも定期的に誰かが透明になるならその度に助ければいいだけ。対処法はワタシ達が実践したんだし、先生と連携していけばもうこんな事は起きない筈。ね、守命クン。ここまで完璧なケアをした功労者に何か褒美を与えたいと思わない?」

「な、何だよ褒美って。食べたい物でもあるのか?」

 マッサージの手を止めると、一魅は揶揄うように微笑み、人差し指を立てた。











「今日の放送のお題は女心、でどう? 当ててみてよ、ワタシの望む褒美」

 

 

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