86.雪合戦
しんしんと雪が降る中、私は暖房のついた教室から外を眺めていた。
「おー。すんごい雪積もってんねー。」
いつの間にか純麗ちゃんが隣で頷いている。心なしか、瞳が輝いているように見えた。
「そうだね。これなら雪合戦とかできそうだよね。」
「確かに!いーね!雪合戦!やろ!かえでっち!」
「え?」
体育終わりの昼休み。ジャージに身を包んでいたので、そのまま外へ行くことになった。
純麗ちゃんに手を引かれるまま、校庭へ。と思ったが、彼女が真っ先に向かったのは1組の教室であった。
暖房をつけている為、しめっきりだった扉を開ける。
「ちさとっちー!雪合戦いこー!」
彼女の大きく弾んだ声が響く。
「……………純麗。声、大きい。」
対するのは目を擦っている千里くんだ。
彼は机に突っ伏していた顔を上げて、此方へとやって来た。
「ていうか雪合戦って…。小学生じゃないんだから…。」
「いーからいーから!やろやろ!おねぇーちゃん命令ね!」
「は、」
千里くんが何か言い切る前に、彼もまた私と同じように手を引っ張られていく。
「か、楓も雪合戦やるの?こんな寒いのに…。」
「あははっ。確かにそうだけど。でも、ちょっと楽しそうかもって。千里くんも食べてばっかりじゃ身体が鈍るよ。」
「言っておくけど食べてばっかじゃないから!」
千里くんはそう否定するが正直疑わしい。
何せ、彼は私が見かける度に食べ物片手にしているのだ。
いや、見かける度、というのは些か大袈裟な気もするが。
「あっ!そーいえば、朝、ちさとっちがせんせーにお菓子貰ってんの見たよ!」
「やっぱり餌付けされてる…。」
「し、仕方なくだよ!仕方なく!先生がどうしてもって言うから、僕が仕方なく…。」
「そーいうことにしとくよー。」
「…………同じく。」
そうして外へ出ると、雪は止んだらしく灰色の空がどんよりと広がっていた。
校庭に足を踏み入れる。真新しい雪が私の靴の跡をくっきりと際立たせ、心地よい感触を足に与えた。
冬は好きではないが、雪は好きだ。
なんて思っていると、横顔に衝撃と冷たさが走る。
「かえでっちー!うかうかしてたら、的にするかんね!」
「す、純麗ちゃん…。よし。望むところ!」
どうやら純麗ちゃんに雪玉をぶつけられたらしい。
やられたままではいられないと思い、足元の雪を握る。
そして、思い切り純麗ちゃん目掛け投げた。
が、白い玉は狙い通りにいかず。投げ方が悪かったのか、突然カーブを描いて千里くんの方へとぶつかる。
「っ!つめたっ!」
「あっ。ごめんね。千里くん。手元が狂っちゃったみたい。」
「……………いいよ別に。でも、僕、根に持つタイプだからね。」
「全然良くないじゃん…!」
気付けば彼の手にも圧縮された雪が。
瞬きする間に、ソレが私目掛けて飛んできていた。
白い息をあげながら、私達は昼休みいっぱい雪合戦をして過ごすのだった。




