83.ハッピーバースデー③
放課後。私は千里くんとショッピングモールへ行くことにした。
欲しいものを探すのならば、ものが溢れる場所へ。というのは当然の流れだろう。
「そういえば、前にここ来たよね。」
ショッピングモール内のエスカレーターに乗りながら呟く。
すると千里くんも頷いた。
「妖怪探しに来たね。」
「そうそう!……その時は私一人で見て回ったんだけど。」
千里くんと回りたかったのだが、素っ気のない彼は用事が済めばすぐに帰ってしまったのだ。思い返してみると、物悲しい気持ちになる。
「あの時は寂しかったなぁ〜。」
「……………楓。もしかして、根に持ってる?」
「まさか!あー、でも思い出したら悲しくなってきちゃった。ひとりで服とか見て回ってさ。」
わざとらしく手を振る。我ながら意地の悪い。
「やっぱり根に持ってるだろ!ていうか、良いでしょ!?ひとりで回ったってさ!」
「そりゃあたまにはいいけど…誰かと回りたい時もあるんだよ?」
「め、面倒くさいな!君は!」
自覚はしているので何も言わずに受け流す。
そうしてエスカレーターを降り、適当な店を見て回ることにした。
千里くんが何を欲しいかは依然として分からないが、こうしていれば浮かんでくるかもしれない。
テナントとして入っている靴屋を眺める。
ボックスの上に置かれたピカピカのシューズは限定物なのか、靴につけるような値段ではなく目を飛び出してしまいそうなほど高額だ。
「そういえば、千里くんは初詣行った?」
ワンポイントのシューズを見ながら世間話をする。
「もちろん。今年の屋台は粒揃いだったよ。……中でも綿あめのレベルが高かった。」
「…………前々から思ってたけど、食べるの本当に好きだよね……。」
「悪い?」
「まさか!………あ!」
なんてことを言っていると、頭に電流が走る。
あるではないか。
千里くんらしさ。
「ねぇ!千里くん。それだよ!」
「ど、どれ?」
「食べるのが好きってやつ!それが、千里くんらしさだよ!」
靴を置き、彼に詰め寄る。
千里くんは自分らしさが分からず、その為欲しいものなんて到底浮かばないと言っていた。
だが、しっかりあったのだ。彼の彼らしさは存在した。
それさえ分かれば話は早い。
食べるのが好きならば、欲しいものだって食に関係するものであるはず。
「千里くん!食べたいものある?それがきっとプレゼントになるから!」
「え?うーん…。」
眉間に皺を寄せる。
どうやらすぐには出てこないようだ。
しばらく待つと小さな声が漏れた。
「あっ…。食べたいっていうか、作りたいものはある…かも。」
「へぇ。何作りたいの?」
「炒飯。本格的なやつ。」
「本格的な…てことは、中華鍋使う感じの?」
「まぁ、そうだね。」
中華鍋、と言われ黒く底が深いフライパンを想像する。
重たい鉄の塊を振るう千里くんは、確かに様になるだろう。
「よし。じゃあ中華鍋、見に行こう!」
千里くんの手を引き、中華鍋が置いてある売り場を目指す。
プレゼント選びは思ったよりも難航しなさそうだ。




