81.ハッピーバースデー
1月にもなるとやはり雪は積もる。
真っ白なソレは道路を埋め尽くし、行く人々の邪魔をしていた。
車の通ったあとは黒ずみ、お世辞にも綺麗とは言えない。対して、何者にも踏み入れられていない雪は遠慮がちに顔を覗かせる太陽の光を吸い込んでいた。
「うぅ。寒い…。」
あまりの寒さにコンビニへ寄ることにした。
学校からの帰り道。適当なホットスナックでも買おうかと店に入る。
温かい店内。風に脅かされることのない建物に入った途端、目についたのは肉まんを宣伝するポップと見覚えのある人間だった。
「あ…千里くんのお母さん…ですよね。こんにちは。」
「……!どうも。」
千里くんの母は缶コーヒーを手にしていた。
パッケージはよく見えないが、色からしてブラックなのだろう。なんだか大人という感じだ。
「千里のご友人よね。……お名前、聞いても?」
「はい。山吹楓って言います。」
「楓ちゃん…。そう。いつも千里と遊んでくれてありがとう。……それと、この間、あの子を助けてくれたことも改めてありがとう。」
彼女は深々と頭を下げる。
こんな風にかしこまった所は千里くんそっくりだ。
「そ、そんなお礼を言われる程のことじゃありません!……私、千里くんとまだ一緒に居たいから…だから、助けただけです…。」
「………ふふっ。そう。……あの子は良い友人を持ったわね。」
話をしながら会計を済ませる。
店員から注文したあんまんを受け取ると、再び風の強い外へと赴いた。
「ねぇ山吹さん。貴方、千里の欲しいものって知ってるかしら。」
「え?い、いえ。」
ザクザクと雪を踏みながら並んで歩く。
「そう…。……実はね、もうすぐあの子の誕生日なのだけれど…。あの子、遠慮してるみたいで…。」
「欲しいものを教えてくれないってことですか?」
「いえ。教えてはくれたの…。それが、カーテンをプレゼントにって言われて。」
「カ、カーテンですか…。」
中々不思議なチョイスである。
私だったら、少し高いスイーツとか、服とか靴とか、そんなものばかり挙げてしまいそうだ。
「生活に必要なものはプレゼントとしてじゃなくて、普通に買い与えるつもりだもの。……だから、別に欲しいものが無いかって聞いたのだけれど…。無いらしいのよ。」
「なるほど。」
千里くんのことだ。母親の言う通りどこか一歩引いている可能性はある。
ここは私の出番かもしれない。
なんとかして彼の欲しいものを聞き出すのだ。そして、彼の母には安心してプレゼントを渡せるようにしよう。
「任せて下さい!私、千里くんに何が欲しいか聞いてみます!」
「!そう…!ありがとう山吹さん。」
早速明日にでも聞いてみよう。
意気込みながら、あんまんを口へ放り込む。
「あづっ!」
熱々のあんこが口内を刺激し、危うく火傷するところだった。
あんまんが包まれていた紙を少し睨んで、改めて明日への意気込みと共に帰宅するのだった。




