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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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≒79.大晦日

 1年というのは早いもので、クリスマスが過ぎるとあっという間に年末になった。


 クリスマスはパーティ。大晦日はというと、皆で除夜の鐘を突きに行くことになった。


 「いやー。混んでんねー。」


 純麗すみれちゃんはコートに包まれ、お寺で配られた紙コップの甘酒を持っている。


 「………もう帰りたい気分。」

 「もー。そんなこと言わないのちさとっち!」


 げんなりしている千里ちさとくんの気持ちは少し分かる。


 少し歩けば肩がぶつかりそうなほど混み合う境内を見れば、ぬくぬくと炬燵こたつにでも入りたくなるだろう。


 「せっかく来たし、鐘でも突いて帰ろうよ。煩悩打ち消してさ。」

 「煩悩ね…。僕には無いけど。」

 「そ、そうなの!?すごいね千里ちさとくん。……私は結構あるかも。沢山食べても太りたくないとか…勉強しなくても賢くなりたいとか…。」

 「えー。ぼんのーなの、それ?別にふつーのことだよ!他にはない?他には!」

 「え、えーっと…。」


 少し眠たくなってきた目を擦りながら、ぼうっとする頭を傾ける。


 「うーん。虫とかお化けに怖がる千里ちさとくんを見たい…とか?」

 「紛うことなき煩悩ぼんのうだね。それ。鐘じゃなくて頭突いた方が良いかな。」

 「あー!うちもビビるちさとっち見たい!」

 「よし決めた!今すぐ2人の頭を突くよ!並んで!」

 「きゃー!こわーい!逃げよかえでっち!」

 「あははっ!うん!」


 純麗すみれちゃんに手を引かれて走る。


 後ろからわざとらしく手を上げて千里ちさとくんが追ってきた。


 走っている最中、ゴォンと腹の底に響くような重低音が聞こえた。鐘付きが始まったようだ。


 慎ましやかな星が輝く空は墨汁を垂れ流したかの如く真っ黒だ。

 そこに響く鐘は不気味とも思えた。もし1人であれば肩をすぼめてしまうかもしれない。


 しかし、今は違う。


 私には純麗すみれちゃんと千里ちさとくんがいる。

 

 2人と年の瀬を過ごせるのは、何よりの幸福だ。

 出来ることなら来年、そして再来年もこうして過ごせるだろうか。そんなことを願いながら長蛇の列を見る。


 「あれ?せんせーだ!」


 純麗すみれちゃんの視線の先を見ると、そこには大里おおさと先生がいた。

 私達と同じように手には甘酒を持っている。


 「おや。みなさん。こんばんは。」

 「こんばんは。先生も鐘を突きに来たんですか。」

 「はい。それと、写真も撮りに。」


 そう言う先生の首元にはこれまた高そうな厳かな雰囲気を放つカメラが黒々と佇んでいた。


 「せんせー!どーせだし、うちらも撮って下さい!」

 「良いですよ。……ほら、荒井あらいくんも撮りましょう。」

 「僕もですか…?」

 「はい。そうしたら、お礼に黒飴ひとつあげちゃいます。」

 「………………そこまで言うなら撮ります。」

 「チョロいね。千里ちさとくんは…。」


 悩む間もなく、千里ちさとくんはカメラの前に立つ。


 賑やかな時が過ぎようとしている。


 来年もまた良い年になるだろうかと、期待を込め、笑顔を作った。

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