75.オフィス街にて②
イルミネーションやビルの明かりが光る。そのそばを私と純麗ちゃんは歩いていた。
「はー。かえでっちー。よーかい居ないねー。」
純麗ちゃんは退屈そうに頭の後ろで腕を組む。
「そうだね。ここらへんにいると思ったんだけど…。」
私の勘はよくあたる。なので、今日もこの辺りに妖怪が出ると思ったのだが、あてが外れたのかもしれない。
ぼんやりと光を見る。
夜の街の明かり。恐らく上空から眺めたら宝石を敷き詰めたような、と形容されるぐらいには輝いているだろう。
その宝石とやらは人の営みが為すもの。宝石ほど夢が詰まってはいないし、手を伸ばすほど焦がれるものでもない。
なんて冷めたことを思っている私とは違い、隣にいる純麗ちゃんは瞳を見開きイルミネーションを食い入るように眺めていた。
「純麗ちゃん。ここ、気に入った?」
「もっちろん!ピカピカしててちょーきれい!景気もいいし、家に飾りたいくらい!」
「家に…かぁ。電気代凄そうだね。」
「もー!そんな現実的なこと言わないで!」
「あははっ。ごめん。」
だが、確かに彼女の言うとおりかもしれない。
自宅にイルミネーションの飾り付けをすれば、毎日がクリスマス気分。
肌を刺すほどの寒さも、少しは好きになれそうだ。
なんて思いながら、光り続けるイルミネーションを見る。
不思議と、光が動いたような気がした。
上下左右に、ではない。いうなれば、縮小と拡大を繰り返しているような、脈打つような動き。
ずっと光を見続けていて、目が疲れてしまったのかもしれない。
目をこすり、瞬きをする。
しかし、変わらず光は動きを見せる。
「?な、なんか、あの光…変。ねぇ、すみ、」
隣りにいるはずの誰かへ呼びかけようとした。
だが、名が思い出せない。姿形も。そもそも、隣にいたのは人だったか。妖怪ではなかったのか。
いや。大前提として。妖怪とはなんだ。どうして私はここにいる。こんな遠くまで。
「………遠く?」
遠くとはどこから出発して考えたのだろう。私はどこから来たのだろう。
「………………。」
主張を続ける白やオレンジの光は瞳へ与えられる刺激だけでない。
光に音はない。そのはずだが、何故か私の耳は音を拾う。ガンガンと遠くでEDMがかかっているような重低音。それが直ぐ側で鳴る。光から鳴る。
「あ、あ……………。わたし……。」
光と音に耐えきられず、しゃがみ込む。
瞳を閉じ、耳を塞いでも、光と音は止まない。
誰かを助けなければいけないのに。誰かに助けを求めたいのに。誰かを思い出したいのに。
何も出来ぬまま、ただしゃがむ。




