74.オフィス街にて
学校が終わると、私と純麗ちゃんは電車に乗った。
そこから5駅過ぎると銭柵市だ。
12月にもなりすっかり暮れきった空。その下には冬の銭柵市名物とも言えるイルミネーションが煌めいていた。
眩い光は何も飾り付けだけでなく、高々とそびえるビルの明かりや、帰路につく自動車のライト等々、様々だ。
「おー。きれーにライトアップされてるね!」
純麗ちゃんが白い息を吐きながら言う。鼻が僅かに赤い。
「そうだね。寒いから尚更綺麗に見える。」
「ねー。あっ。で、妖の狭間がここらへんに出現するんだっけ。」
ハッとした様子で聞く。
私はそんな彼女の問いに頷いた。
「うん。まぁ、ただの勘だけど。」
「いやいや。かえでっちの勘はよく当たるじゃん。ひょーばんだよ?」
「評判って、誰に?」
純麗ちゃんは視線を上にうつして腕を組み、やや考える。
「そりゃあ………。…………うちに?」
「あははっ。そっか。良かった。じゃあ、早く妖の狭間に行って妖怪倒しちゃおう。」
「りょーかい!」
そうしてオフィス街を歩く。
あまり遅くなりすぎると補導されてしまうかもしれないので、ほんの少し急ぎながら妖の狭間が発生するであろう場所を探す。
「……ここらへんかも。よし。『皆』!」
妙に意識が引っ張られる場所で立ち止まる。
そして手を組み、『皆』と唱えた。
瞬間、ひっきりなしに聞こえていた自動車のエンジン音や帰宅するサラリーマンの靴音全てが止む。
無事に妖の狭間へ来たようだ。
「いやー。妖の狭間でもイルミネーションはきれーだねー。」
「そうだね。でも、気をつけなくちゃ。ぼうっとしてると、妖怪が襲ってくるかも。」
「そーいや、この間もちょー早い妖怪に襲われたもんね。」
「そうそう。姿が見えないぐらい早かったから。」
話ながら、以前退治した妖怪を思い起こす。
鳥の形をした妖怪だった。
それの声がしたかと思えば、攻撃をされていた、なんて経験をしたのだ。
今、思い返しても、よく倒せたものだと思う。
確か、純麗ちゃんと2人で作戦を立てて倒したのだったか。
「……………?」
「どーしたの。かえでっち。」
「ううん。何でもない!」
何か、一瞬。頭にかするものがあったが、その正体は掴めずにいた。
だが、今は輪郭すら不明瞭な杞憂に気をやっている場合ではない。
とにかく、妖怪を探そう。
人の消えた空間を見渡す。
街に広がる明かりは人々の有無に変わらず、光り続けていた。




