表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/81

72.たったひとつの願い②

 荒井あらいくんと神社へ足を踏み入れる。


 平日の放課後。参拝客はおらず、冷たい風の吹く音だけが反響していた。


 「…………………。」


 私はただただ祈る。どうか、神が私達の前に現れてくれることを。そして、荒井あらいくんの願いを叶えてくれることを。


 だが、黙ってその時を待つというには耐え難い雰囲気だった。何か言葉を発していたい。そうでなければ、隣の荒井あらいくんは淡泊な風に攫われてしまいそうだ。


 「そういえば…荒井あらいくんの父親と純麗すみれちゃんの父親が同じなのって、純麗すみれちゃん自体は知ってるのかな。」

 「いや。知らないんじゃない。………僕も調べないと分からなかったし。まぁ今更、みさきさきに言うつもりはないよ。」

 「………………そっか。」


 やはりすぐ隣の彼の顔は見れなかった。


 純麗すみれちゃんに父親のことを話さないのは彼の臆病風からか、それとも優しさからか。

 私は恐らく後者だと思った。そうであれと思った。


 なにせ、2人の父親が同じということは腹違いの兄弟という関係性が形成されたということ。

 血の繋がりは確かにあるのだから、そこに思慮が生まれてもなんらおかしくない。


 なんて話をしていると、一層強い風が吹く。


 「っ。さむっ。」


 体を縮こめ、僅かに目をつぶる。


 そうして次に瞳を開けると、私の願いが届いたことを実感した。


 「なんじゃ。お主らはよほど此処が気に入ったのか。」


 目前には古風な喋り方をする少女。


 幼い姿形とは裏腹に、気圧されるような立ち振るまいをする彼女は、まさしく神様だった。


 「!こ、こんにちは…!私達、貴方に、会いたくて…!お願いごとが、あって!」

 「ほう。そうかそうか。……して、願いがあるのは坊主のほうか?」

 「……………はい。」


 荒井あらいくんが一歩、前へと進む。


 ようやく彼の願いが叶うかもしれないのだ。喜ばなくては。

 だというのに、私の胸には一抹の不安がよぎる。


 先ほどから感じていた、彼が遠いところへ行ってしまうような焦燥感。

 これがただの杞憂であれと願いながら、荒井あらいくんの後ろ姿を見つめる。


 「………僕の母親を幸せにしてほしいんです。」

 「ほう。肉親の幸福か。なるほど。よかろう。」


 思わぬほど呆気ない返事。


 だが、何よりも重要なのはこの先の話だ。


 神は代償無く願いを叶えてくれるほど慈善家ではない。

 いつだって願いと代償はセットでなくてはならない。


 「………ありがとうございます。それで、対価はなんです。また、試練ですか。」

 「いや。今回は試練は行わぬ。そうじゃのう……。」


 神は口元に手をやり、考える様子を見せる。


 それがどうにも胸をざわつかせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ