66.酉の市にて②
「うーん。妖怪見つからないね…。」
閑散とした境内を歩きながら呟く。
そんな私の言葉に、純麗ちゃんも荒井くんも頷いた。
これほど妖の狭間を歩いているのに妖怪を見つけられないのは中々珍しい。少なくとも今までにはなかった。
「見つかんないけど、神社にいんのは確かなんだよね?それじゃーうちとあらいっちで神社を燃やすってのはどー?」
「す、純麗ちゃん。流石になんか罰当たりな感じするからやめておこう…?」
「えー?ざんねーん。」
手を後ろで組みながら、そんなことをいう。
確かに彼女のやり方は有用かもしれないが、神社を燃やすというのは気が進まない。
しかし。意外にも荒井くんがその提案に乗っかる。
「いや。僕はいいと思う。」
「え!?で、でも万が一人がいたら危ないよ…!?」
「問題ない。僕たちの炎は妖怪にしか効かないから。」
「へー。そーなんだ。うち初めて知った〜。」
本当に彼の言うとおりならば、虱潰しで探すよりかはマシなのかもしれない。
正直なところ、罰当たりな気はするが。
「んじゃ、そーと決まればやろ!」
「僕は何時でも平気。」
2人はそうして構える。
純麗ちゃんは懐から妖力が込められた封魔石を取り出す。その中にある妖力を使って、炎を生み出すのだろう。
対する荒井くんは手を前へと伸ばすだけ。純麗ちゃんと違って体内の妖力をそのまま使用できるからだ。
私は出来ることもないので、ただ2人を見守る。
「ヒマダヒマダ。」
「……………また……。」
再び、ヒマダヒマダとわけの分からぬ声がした。
「?かえでっち。どーしたの?」
「声がしたの…でも2人は聞こえなかったんだよね?」
「そうだね。僕はなんとも。」
「そっか…。それじゃあ気のせいかも…。」
「疲れてんのかもね〜。さっさとよーかい倒しちゃお!」
純麗ちゃんはそう言い、早速炎を生み出す。荒井くんもまた炎を噴出して、神社一体を朱が包みこんだ。
メラメラと燃え盛る炎は不思議と熱さを感じさせなかった。どうやら本当に妖怪以外には効果がないようだ。
「よーかい出てくるかなぁ。」
「さぁね。でも、これだけ燃やしたなら何かしらアクションはあるはず。」
「そ、そうだね…。」
そうだといいが。
なんて思っていると、再び私の耳に声が届く。
「ゼニトリゼニトリ。」
「!?今の声!」
「うちも聞こえた!!」
「ぜにとりって言ってたみたいだね。」
「う、うん。」
今度は2人にも声が聞こえたらしい。
最初はヒマダ。次はゼニトリ。それらが何を表すのか、さっぱり見当がつかない。純麗ちゃんと荒井くんも同様らしく、首をひねるばかりだ。
しかし、その瞬間。
風を感じた頬がピリリと痛む。
「っ。……?」
「!かえでっち!血、出てる!」
「!まさか妖怪が…!?」
「ゼニトリゼニトリ。」
声は未だ周囲へ響く。
パチパチと、枯れ枝がぶつかる音とともに不可視の刺客を探すのだった。




