65.酉の市にて
今日は地域のお祭り。
といっても、浮かれ気分ではいられない。何故なら、妖怪のいる妖の狭間がその会場で発生するという予感がしたからだ。
私の予感はよくあたる。それは、恐らく身体に流れる座敷わらしの血だろう。
幸福がただの勘を現実へとしてしまう、そんな気がするのだ。
その為、私はお祭り、もとい酉の市会場の大鷲神社へと向かう。
待ち合わせ場所には友人たちが既にいた。
「純麗ちゃん!荒井くん!おはよう!」
「おはよー!かえでっち!」
「…………山吹はいつも最後だね。重役出勤ってやつ?」
「ち、違うよ!というか、そういう荒井くんは、また楽しみで早く来すぎちゃったんじゃないの?」
以前、焼き肉へ行ったことを思い出す。
その時も、集合時間前だというのに既に2人は揃っていたのだ。
「……………別に。たまたまだけど。」
「かえでっち!あたりだよ!今日もあらいっちってば、ちょー早かったの!」
「ふーん。やっぱり楽しみだったんだ。」
「……違う!とにかく!早く異変のある妖の狭間に行くよ!」
あいも変わらず素直でない彼は、声を荒げて先へ進む。
置いてかれぬよう、私と純麗ちゃんは追いかける。
「そーいえばさ!またこの神社に来たってことは、ワンチャン神様に会えるかもしんないよね!」
あっけからんと話す純麗ちゃん。
確かに、彼女の言うとおり、私達3人は以前この神社へ出向き神と対面したことがあった。が、それから荒井くんが訪ねたところ、神とは会えなかったらしいのだ。
「うーん。どうだろうね。荒井くんは会えなかったんだよね?」
「そう。……でも、今日は山吹がいるしね。幸運にも会えるかもしれない。」
「だといいねぇ。」
もし神と出会えたのならば。
その時は、ここ一年で起こっている妖の狭間の異変の原因が分かるかもしれない。
とはいっても、まずは妖怪退治だ。でなければ暴走した妖の狭間が普通の人間を危険にさらしてしまう。
気を引き締め、境内を歩く。
「ヒマダヒマダ。」
その最中、ふと声が聞こえた。
男か女か、子供か老人か、全く判別つかない特徴のないような声。
強いて言うならば機械のような声。
「………?今、何か聞こえた…?」
「え?うちはなんにも。」
「………僕も。」
「そ、そっか。気のせいかも…。」
僅かな引っかかりを覚えつつも、境内を歩く。
伽藍とした屋台。人の姿は一切なく、ややくたびれた暖簾が風になびいた。
形容しがたい不気味さに襲われながらも、気を引き締めて妖怪を探すのだった。




