62.対決クラブ②
体育館は静まり返っている。他の生徒はいない。
ここにいるのは私と純麗ちゃんとバスケットボール部の女子生徒だけだ。
沈黙はただひとりの言葉を待っている。
女子生徒が何故バスケットボール部へ入ったのか。その答えを求めて。
「……………私は、先輩に憧れて入ったの。」
地に根を張ったような強い声音で続ける。
「ミニバスの時にお世話になった先輩で。……その人がいつも助けてくれて。……だから、私はその人がバスケを楽しんでいられるようにしたいの。だから、バスケ部に入ったの。」
彼女の言葉は不思議と身にしみるように理解ができた。
私も同じだからだ。
憧れ、とも違うが、純麗ちゃんにはいつだって全力を出していてほしい。そして、その輝く姿を見せてほしい。そう、思う。
「……………そー、なんだ。………先輩のため……。うちとは、違うね。うちは、自分のためにバスケ部に入ったからさ。」
「……………だろうね。」
「でも、今、ここにいるのはそれだけじゃないよ。」
「?は?どういう意味?」
女子生徒と同様、私も純麗ちゃんの言葉の意味が分からなかった。
しかし、彼女は私達に構わず、突拍子もない提案をする。
「………ね。今からワンオーワンしよ。」
「なんで?あんたとする意味が分からない。もしかして、口で勝てないからバスケで勝とうとしてる?言っとくけど、私はミニバスからずっとやってたからね?」
「うん。聞いたよ。でも、勝つためにやるわけじゃない。………とにかく、今、試合したいの。キミと。」
「………………後悔させてやるから。」
剣呑な雰囲気の中、私は急いでバスケットボールを取りに行く。
「はい。これ。」
「ん。ありがと。かえでっち。…………あのさ、試合、最後まで見てて。」
「勿論。」
ボールを手渡すと純麗ちゃんが静かな声でそう言う。
私の中には試合を観ないだなんて選択はなかった。なので、頷き、答える。
何故唐突にワンオーワンを持ちかけたのか。分からないが、意味もなくするようには思えない。なので、今はただ見守ることにした。
じゃんけんの結果、女子生徒がディフェンスに回ることになった。
静かな始まりと共に、シューズがキュッキュッと音を立てる。バスケットボールが地面を跳ねる、鈍い音もまた鳴る。
昼休みの運動がてら体育館に入ってきた生徒を横目に、私は2人の行く末を見守るのだった。




