59.調査
文化祭も終わり、これまたいつも通りの日常へ。
といっても、私には大切な用事があった。
休日。今日は学校へ来ていた。何も部活動へ励むためだとか、忘れ物を取りに来たとかそういう訳では無い。
「山吹来たね。」
「ホントだ!おはよ!かえでっち!」
校門前。私の顔を見て話すのは荒井くんと純麗ちゃんだ。
何故2人と学校にいるのか。
それは妖の狭間の異常を調査する為であった。
妖の狭間とは妖怪の住む領域であり、普段私達が暮らす所と瓜二つの場所。だが、明確に違うのは人の姿がない、ということだ。
通常であればその妖の狭間と人間世界は特別な方法でなければ生き来が出来ないのだが、ここ最近、突如として妖の狭間に転送されるという事象が起きていた。
その原因を調査するため、私と荒井くん、純麗ちゃんで集まったというわけだ。
早速、妖の狭間に移動し、周囲を見渡す。
「にしてもさー。妖の狭間の異変って、うちらが調査して原因が分かるものなの?そーいうのって神様とかにでも聞いたほうがいんじゃない?」
「僕もそう思って会いに行ったよ。……でも、呼びかけても会えなかったんだ。」
「うーん。…神様だから、やっぱり気軽には会えないんだね。」
純麗ちゃんの寿命を伸ばす為に訪れたとき、神に会えたのは本当に幸運だったようだ。
残るは妖怪の血を引くほかの人間に尋ねてみることだろう。残念ながら、私の両親に聞いても碌な収穫はなかった。
「2人の家族にも何か聞いてみたりした?……私はしたんだけど、特に何もなかったんだ。」
「うちもかえでっちとおんなじー!」
「まぁ、だろうね。妖怪の血を引くって言っても妖の狭間に行かなきゃほかの人間と同じだからね。」
荒井くんは校舎裏の自転車置き場へ視線を移す。
そこはじっとりと湿っており、薄暗さがひんやりとする温度を際立たせていた。
「そーいや、妖の狭間にいる妖怪と意思疎通って出来ないの?そしたらなんか分かりそーだけど。」
「無理だよ。……大昔は意思疎通できる妖怪もいたけど、現存する妖怪とは出来ない。たとえ妖怪の血を引いていても、僕たちは人間に近いしね。」
自転車置き場に異変は感じなかったのか、荒井くんは校庭へ移動する。
私と純麗ちゃんはとりあえずついて行く。
日の当たる校庭。秋も深まる今日この日は、日差しがあれど少し寒々しさがあった。
「大昔は意思疎通できる妖怪がいたってことは、私達はその妖怪と人との子孫ってこと?」
「まぁ、そうなるね。」
なんて話しながら校舎周りを一周する。
これといっておかしなところはなかった。暴れ出す妖怪もなければ、正体不明の攻撃がとんでくることもない。
やはり私達3人では限界があるだろう。
「はー。なぁーんもないね。あらいっち、今日は帰んない?」
「……………そうだね。仕方ない。」
今日は帰るということで話が纏った頃。
からっ風が体を突き抜けた。
「!わっ。」
突然の風に驚く。そして、ふんわりと浮き上がるスカートを慌てて押さえた。
「………あ、荒井くん。今、見えた…?」
「………………………なんのこと。」
荒井くんはあからさまに私から顔を背ける。
「み、見えた!?やっぱり見えた!?」
「煩いな!大きな声で言わないでくれないかな!?今のはどう考えても事故だ!」
「わぁー!あらいっち、顔真っ赤!生娘みたいだねぇ。」
「純麗ちゃんその表現はちょっと気持ち悪いよ…!?」
「ちょっとどころかかなりキモい!汗ばんだおっさんみたいな感じ!」
「それは言い過ぎじゃないかな!?」
特に収穫は得られなかった。
しかし、それはそれとして3人でぶらつくのも悪くないと思った。




