58.文化祭③
いよいよ文化祭の出し物、即ち焼きそば作りのシフトが回ってきた。
私は気合いを入れて教室へはいる。
「かえでっち!がんばろーね!」
腕まくり、頭に手拭いを巻くのは友人の純麗ちゃん。
なんとも様になっており、彼女の作る焼きそばが絶品なのは間違いなしだ。
「うん。頑張ろう…!」
私はマスクと手袋を着けて鉄板の前に立つ。
ソースの匂いがマスク越しでも漂っていた。
私達のクラスの焼きそばは作るところからお客さんへ見せることができる。
つまりは、それも一種のパフォーマンスということだ。現に、横の純麗ちゃんは華麗な手捌きで焼きそばをあれよという間に作っている。
「おぉ…。すごい…。」
純麗ちゃんは鉄板から離れた高さの所からチューブ型のソースを入れ、かき混ぜる。
匂いが広がるようにふんわりと麺と具材を混ぜていた。
「ふふふっ。自分の才能が怖いよ。」
「純麗ちゃん。これならきっと焼きそば屋でも開けるよ…!」
「ほんとー!?いやぁ、開いちゃおうかなぁ。焼きそばの名前はビヤングで!」
「それは辞めとこう!パクリみたいだし…!」
「えー。でもちゃあんと由来があるんだよ?」
金属製のヘラ、起金をくるくると回して得意げに続ける。
「ビヤングはビー、ヤングの略で、食べた人にあの頃の若い日々を思い出してもらうの!」
「由来もペヤングのパクリっぽいけど…!?」
記憶ではペヤングの由来はペア、ヤングの略称。
ヤングが被っているし、語感も丸被りだ。ペヤングの製造会社、まるか食品を敵に回す前にやめさせたほうが良いだろう。
「えー。じゃあUVOでウヴォー!」
「それはUFOのパクリだよね…。」
「まぁ由来を聞いてよ!」
「……………………由来は?」
予想はつくが念のため聞いてみる。
「ウソみたいにボリューミーで美味しい!の略!」
「やっぱりパクリだよ!」
UFOはうまい、太い、大きいの略。結局、パクリには変わらない。
まるか食品だけでなく、日清も敵に回すことになりそうだ。
「純麗ちゃん。やっぱり焼きそば屋は辞めとこう。まるか食品も日清にも勝てないよ…。」
「分かってないなぁ。かえでっちは。…………うち、楽しいと思ったことは全力でやるんだから!」
「それは限度があるよ!?大企業相手にチャレンジャーすぎじゃないかな!」
私は確かに純麗ちゃんのそんな姿が好きだ。
が。それとこれとは話が別。
オマージュと言い切れない商品を売り出してしまう前に、純麗ちゃんの野望を阻止しようと励むのだった。




