56.文化祭①
今日は待ちに待った文化祭。
私のクラスでは焼きそばの屋台をすることになっている。といってもいきなり焼きそばを作ったり、宣伝をするわけではない。
クラスメイト全員分シフトが組まれており、それに従って動くのだ。
残念ながら文化祭最初は休み。何もすることがない。だが、暇というわけでもなかった。
何故なら私の所属する生徒会執行部では文化祭期間内は見回りの仕事があるからだ。
執行部と書かれた腕章をピンでとめる。
「まずは校門前から、だよね…。」
隣りにいる荒井くんに確認をとる。
「そうだね。」
早速校門前へ移動し、そこから順々に校内を回る。
文化祭は外部の人も参加できるので他校の生徒から、保護者や家族、様々な人が人混みを成していた。
外は特にトラブルもない。なので校舎に入り見回りだ。
「………………荒井くん。…………その、子供に好かれてるんだね……。」
そうこうしていると何故か迷子の子供が荒井くんの周囲に集まっていた。
彼の両手はどちらも埋まっている。
「…………まぁ、迷子放っとくのはまずいからね。手間がかかろうが、そのままってわけにはいかないよ。」
「それにしても多い気がするけど…。磁石みたいに集まってくるし…。」
「聞いたかい。この人、君たちのことマグネット呼ばわりしたよ。」
荒井くんはわざとらしく少し声を高くして小さな子供達に呼びかける。
「えー!ひどーい!」
「僕たち人間だよー!」
「ね。酷い人だね。」
「なっ!?磁石みたいって言っただけだよ!比喩だよ!比喩!第一、荒井くんだって迷子が手間だって…、」
「?そうだったかな。よく覚えてないけど。君たちはそんな話きいた?」
嘘だ。ほんの数分前、手間だろうが放ってはおけないと言っていたではないか。
顔を子供たちへ向けて賛同を求める。
が。
「ううん。聞いてないよ。」
「僕もー!」
「えぇ!?う、嘘だぁ!」
「子供を嘘つき呼ばわりだなんて酷いね山吹は。…………よし。可哀想だから僕が好きなもの買ってあげるよ。」
「やったぁー!お兄ちゃん大好き!」
「僕、たい焼き!たい焼き食べたい!」
調子の良い子供たちは荒井くんの周囲を飛び回る。
納得がいかない。これではまるで荒井くんが子供達を物で釣ったみたいだ。全くもってフェアじゃない。
「わ、私も好きなの奢ってあげるよ!勿論、何個でも!好きなだけ!」
「ほんとー!?お姉ちゃん大好き!」
「僕、たこ焼き!たこ焼きも食べたい!」
「態度変わるの早いね…。」
最近の子達は案外強からしい。いや、柔軟とも言うべきか。
「なんだか虚しいよ…。」
「まぁ、そういうものでしょ。あっ、山吹。僕はクレープね。」
「なんで荒井くんも食べるの!?」
平然とした態度で彼は近くの教室を指さす。
その様子で子供達の口もクレープになってしまったようだ。
私に残された道は皆にクレープを奢るだけ。
「…………よし。じゃあみんな好きなだけ注文しなさい!!」
今の今で発言を撤回するのも癪だった。
なのでここは、私のお財布に頑張ってもらうことにした。




