55.ある決意
今日もまた秋の空風と共に登校。
あっという間に朝は過ぎ、学校が始まる。いつも通りだ。
というわけではなかった。
今日は何故か隣の席の純麗ちゃんが悩ましげな様子。何か考え事をしているかのようだった。
机に肘をつく彼女へ声をかける。
「純麗ちゃん。何か悩み?」
「あー、うん。まぁ。」
煮え切らない返事が意外だった。なんとも彼女らしくないというか。
いや。それほど真剣に悩んでいるという証拠なのかもしれない。
私はずいっ、と体を乗り出し更に話を聞き出すことにした。
「ね。私に出来ることだったら手伝うよ。」
「…………ん。そーだね。…………あのさ。自分の考えと相手の考えが全く違うときって、どーすれば良いかな。」
「え?そ、そうだなぁ…。」
なんでも聞くと言ったものの、いざ相談されると悩ましい。
相手の考えと自分の考えが違う時にどうするか。
私はどうしただろう。そういえば純麗ちゃんと意見が食い違った時、私は引き下がらなかった。意地になって、我を押し通した。
「…………私はそのまま押し通したかな…。」
「……あははっ。そーいえばそーだよね。……でも、うち、そーする自信ないんだ。」
純麗ちゃんは両手を机の端に沿わせてバランスを取り、椅子をゆらゆらと揺らす。
「………部活の子とさ、上手くいってないんだ。……うちが空気読まずに試合するから、先輩たてるためにもすこし控えろって言われて。…………でも、そんなの嫌だって。いつだって全力出して試合したいって。」
彼女の話しは盗み聞きというかたちだが、聞き覚えがあった。
確かにその時の部員と純麗ちゃんは剣呑な雰囲気を醸し出していた。
「……………そっか。」
正直なところ、私はひたむきな純麗ちゃんの姿が好きだ。だからこそ、彼女に永く生きていてほしいと願った。
しかし、いざ純麗ちゃんの寿命が延びた事を考えると、きっとこのままでは良くないのかもしれない。
私達はいずれ大人になって社会へと出る。
いつまでも我ばかり通してはいられない。それに、傷付くのは相手というわけでもないだろう。
「………やっぱり、まずは話し合いじゃないかな。それで、互いに折り合いをつける……とか。」
毒にも薬にもならない返答。
私自身も出来てはいない答え。
だが、純麗ちゃんはそれを受けて柔らかく笑う。
「だよね。………よし。話してみる。………心の準備が出来たら。……そん時はちょっと手伝ってくれる?」
「もちろん!」
心の準備とやらが出来た時。私は友人として彼女のためになるように傍にいよう。
そう決心して授業を告げるチャイムを聞くのだった。




