54.もうすぐ文化祭
秋晴れとも言えるからっとした空気が佇む日。今日は文化祭用意でショッピングモールに来ていた。本来であれば授業を受ける時間帯。外に買い物というのは非日常感に溢れて、自ずと浮き足立つ。
私達のクラスは焼きそばの屋台をする。買うのは材料や宣伝用の看板に使うもの等々。1人では無理なのでクラスメイト数人で集まり、買い出しをしていた。
「ね!ね!かえでっち!これどう?」
そう言うのは友人の純麗ちゃん。彼女は雑貨屋の眼鏡を掛けて得意げだ。
「いんてりっぽくない?どう?」
「インテリな人は自分のことインテリっぽいって言わないよ…。」
「えー?そーなの?謙虚なんだね!」
謙虚というわけではないだろうけど、まぁそういうことにしておこう。
あらかた買い出しも終わったのでビニール袋を携えて学校へ帰る。
教室へ戻ると私達は作業に戻った。
私に割り振られた作業は看板作成。腕をまくり、やる気を出す。
マッキーでクラスと焼きそばという文字を記し、その右下には小さくデフォルメの子豚を描いた。
「……………かえでっち。それ何…?」
「え。豚だよ。ほら、豚肉焼きそばにいれるでしょ?」
「…………かわいそーじゃない?心無しか悲しそうに見えるし…。」
「そ、そうかなぁ。じゃあ思い切り笑顔にしてあげる。」
先ほど描いた子豚の横に、さらにもう1頭仲間を増やしてあげる。
純麗ちゃんの要望通り、今度は表情を明るくさせた。
口角を上げた子豚の完成だ。
「こ、これもこれでなんか怖いし…!」
「えー。そうかなぁ。でも、食べないでって感じの顔の方が嫌じゃない?」
「そうだけどさぁ!というか、豚描くのやめない!?焼きそばマンみたいなのでいーじゃん!」
そう言われ脳裏に浮かぶのは焼きそばに目と口が付いた簡易的なキャラクター。
私はすぐに頭を振る。
「や、焼きそばマン!?なんかパクリみたいだし却下!」
「えー!?豚よりはいいと思うけど…。ねー!大里せんせー!」
純麗ちゃんは近くで生徒を見ていた大里先生を呼びとめる。
先生は屈めた腰を伸ばして此方へやって来た。その顔は少し困ったように感じられる。
「えーと、どういう話ですか。」
「看板の絵です!材料の豚を描くのってなーんかかわいそーじゃないですか?」
「べ、別にいいですよね!?というか、焼きそばマンとかいうパクリみたいなのより良いですよね!」
「そ、そうですねぇ…。」
先生に迫る。
当の本人は私達から目を逸らして明後日の方向を眺めた。
かと思うと、あっと声を出す。
「わ、私、用事を思い出しました!皆さん!用意頑張ってくださいね!!」
そそくさと教室を去る。
「……………せんせー、逃げた……。」
「……………ね。」
その後も看板の絵について口論を繰り広げたが、結局他のクラスメイトが描いたシンプルな看板が採用され徒労となるのだった。




