53.焼き肉へ行こう!
「あっ!かえでっちー!おはよー!」
純麗ちゃんの元気な声が響く。今日は休日。だが、私には大切な用事があった。というのも、純麗ちゃんと焼き肉へ行くという用事だ。
神様の試練を受け、寿命が伸びた純麗ちゃんはお礼に焼き肉を奢ってくれると言うのだ。私と、それから荒井くんはお言葉に甘えて焼き肉を頂くことに。
「おはよう純麗ちゃん。それから荒井くんも。」
「ん。」
荒井くんはいつものようにぶっきらぼうな挨拶をする。
「ねー!聞いて!かえでっち!うち、集合時間30分前に来たのに、あらいっちってばそれより早く来てたんだよー!」
「そ、そうなの…?…………よっぽど楽しみだったんだね。」
「………………まさか。たまたま早く着いただけ。」
「ふぅん…。」
そうは言うが、意外と俗っぽいところがあるので、きっと楽しみだったんだと思う。私も楽しみだったし。
だが、楽しみなのは焼き肉だけではない。2人と出掛けられることこそが何より楽しみだったのだ。
「まっ、いーや!みんな集まったし早速しゅっぱーつ!」
純麗ちゃんを先頭に、私達は焼き肉屋へ向かった。
お昼時ということもあり店内は混雑していたが、予約を取ってくれたのでスムーズに入店出来た。
席に置かれているタッチパネルで各々注文する。私はとりあえずサラダとカルビを注文。我ながらベタだと思う。
「お待たせ致しました。」
黒いエプロンを着けた店員がひと言告げ、商品をテーブルへ並べる。
私の注文したものの他に冷麺や豚ロース、ハラミが置かれた。
「よーし!そんじゃ、焼いてくよ!」
純麗ちゃんは腕をまくり気合十分といった具合。だが、私は彼女を制止せざるを得なかった。
「ま、待って。純麗ちゃん。……その服で、食べるの…?」
「?うん!」
元気いっぱいの彼女の服は真っ白なシャツ。とてもじゃないが焼き肉に適しているとは思えなかった。
目が痛くなるほどの白さは、油やらタレやらで汚れてしまうだろう。
「………僕も山吹に同意。絶対汚れるよ、それ。」
「えー。でも、今日はこれ着たかったの!」
「じゃ、じゃあせめて紙エプロンでも貰おう?」
「やだ!今日のコーデは紙エプロンなんて合わないし!」
「………頑固だな……。」
「………………ね。」
純麗ちゃんは私と荒井くんの言葉を聞かずに肉を焼き始める。
こだわり抜くことこそ純麗ちゃんの性だ。私もそんなところが好きなのであきらめる他ないだろう。
だがどうしても彼女の服が汚れることは気にかかる。
「純麗ちゃん!なんだったら私の服、上から着る?」
「!?山吹!?なに脱いでんの!?」
「?服、貸そうと思って…。」
「こんなとこで脱いだらただの露出狂だろ!?岬ヶ崎も何か言って…なんでもう焼いてんのさ!?」
「えー。だってお腹すいたし…。あっ、油ハネちゃった。」
私の提案虚しく、純麗ちゃんの服には黄色い斑点が着いてしまった。これではもうどうしようもない。大人しく食べることにした。
「?荒井くん。どうしたの、立ち上がって。」
「………………君たちのせいだよ……。」
荒井くんは何やら疲れた様子で静かに冷麺を啜るのだった。




