↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/117

52-1.タイムリミット

 今日は学校も休み。だというのに、私は学校にいた。というのも、学校に妖(よう)の狭間(はざま)が出現したからだ。


 「はぁ。休みなのに来ることになるとは…。」

 

 ひとりぼやいていると後ろから現れたのか、荒井(あらい)くんの声がする。


 「言ってもどうにもならないでしょ。早く妖怪探すよ。」

 「…………荒井(あらい)くんはいつも通りだね…。」


 私の言葉を気に留めることなく、荒井(あらい)くんは校内を歩く。すると、建物に響いていた吹奏楽部の演奏が消える。それだけではない。校庭から聞こえた金属バットが鳴る音も、ラケットがボールを打つ音も全てだ。

 これは合図でもある。妖怪が蔓延る妖(よう)の狭間(はざま)に転送されたのだ。


 こうなればいつ妖怪に襲われるか分からない。私は身構えながら、勘がはたらく方へと進む。

 体内に流れる座敷わらしの血が、危険な妖怪を知らせてくれるのだ。


 東校舎の2階、廊下を歩く。その時、反対校舎の3階から轟音がした。


 「!?なに、」

 「……………とにかく行こう。」


 驚く私に構わず、荒井(あらい)くんは音のした方向を目指す。

 渡り廊下を挟んだ向こうの校舎。そこからは火の手があがっていた。


 「!?なにが…、」


 言葉を続ける前に、私は目前にいた人物を確認し唖然とする。そこには友人、純麗(すみれ)ちゃんがいたのだ。

 そんなはずはない。瞬きをして、前を見る。だが、やはり純麗(すみれ)ちゃんは確かに存在した。しかし、それはおかしい。何故ならここは妖(よう)の狭間(はざま)。妖怪や妖怪の血が流れる者のみ入れるところで。


 「あー、奇遇だねぇ。かえでっち。」

 「す、純麗(すみれ)ちゃん?どうしてこんな所に…?」

 「んー。どうしてって、まー、妖怪の血が流れてる…から?危ない妖怪を退治してたとこ。」

 「………………純麗(すみれ)ちゃんにも…妖怪の血が…。」

 

 状況が飲み込めない。だが、考えてみれば納得出来る。以前、純麗(すみれ)ちゃんと会ったとき、彼女は言っていたのだ。妖怪に負けぬよう頑張ってと。思えば、純麗(すみれ)ちゃんは気づいていたのかもしれない。私が妖怪と戦っていることを。


 「まっ!それはそれとして、これからもいつもどーりよろしくね!暇だったらうちも妖怪退治手伝うからさ!」

 「う、うん…。」

 

 妖怪の血を引くといっても、純麗(すみれ)ちゃんは純麗(すみれ)ちゃんだ。見てくれでは全く違いが分からない。

 そう思っていると、隣にいた荒井(あらい)くんが静かに口を開いた。


 「………岬(みさき)ヶ崎(さき)が手伝う必要はないよ。」

 「え?荒井(あらい)くん、どうして?」

 「………………。」


 純麗(すみれ)ちゃんは荒井(あらい)くんの言葉を受けて、静かに彼を見つめる。


 「君、体限界でしょ。これ以上妖力使ったらもたないよ。」

 「!?本当なの、純麗(すみれ)ちゃん!」

 「……………………まーね。」


 彼女の答えに驚く。


 そして、脳裏に浮かぶのはいつの日かのこと。純麗(すみれ)ちゃんが休日、病院に通っていた姿。あれは、成長痛などではなく、体の不調が原因だったのだろう。


 「うち、妖怪の血が濃いらしいんだよねぇ。ただ、血は濃くても体が耐えられないらしくてさ。寿命が短いんだって。あと3年ぐらいは持つけどさ。」

 「そ、そんな…。……どうにか、出来ないのかな…。」

 「ムリムリ。いいよ。ていうか、人生あと3年って考えると逆にやる気出るっていうか。短いからこそ、全力でいられるし。」

 

 自嘲気味に笑う純麗(すみれ)ちゃんの姿。


 私は、そんな姿を見たくなかった。だって、今まで見てきた全力の純麗(すみれ)ちゃんは諦めから来る姿ということではないか。そんなの、嫌だ。

 純麗(すみれ)ちゃんはスポーツが出来て、手先が器用で、それでいて毎日楽しそうで。憧れでもあるのだ。何にもない私にとって、純麗(すみれ)ちゃんは眩しくあってほしいのだ。


 「そんなこと、言わないでよ。きっと、何か方法はあるよ!」

 「あったとして、しょーじき、もう良いかなって。疲れたんだよね。だから、さ、」

 「諦めるなんて、純麗(すみれ)ちゃんらしくない!」

 「……………………かえでっち………。」


 純麗(すみれ)ちゃんは目を見開く。そして、私の肩にそっと手を置く。


 「かえでっちが、うちの何を知ってるわけ。」

 「……………え。」

 「うちら、会って1年も経ってないでしょ。なのに、うちらしくないとか、なんとか、勝手じゃん。」

 「ご、ごめん。でも、私、友達として、」

 「たかが1年未満の友達でしょ?」

 「あ………。」


 頭が真っ白になった。


 確かに、言われてみればそうだ。私と純麗(すみれ)ちゃんは1年も経ってない仲で、しかも、私は彼女が妖怪の血を引くことすら知らなくて。

 だというのに、純麗(すみれ)ちゃんらしくないだなんて語る資格はあるのだろうか。


 わずかな沈黙。


 それを破ったのは荒井(あらい)くんだった。


 「君たちの関係はどうでもいいけど。………岬(みさき)ヶ崎(さき)の寿命を伸ばす方法はあるよ。」

 「!ほ、ほんとう…!?それってどんな方法なの!?荒井(あらい)くん!」

 「願いを叶える神様に会うんだよ。この辺りの地域で祭ってるらしいからね。」

 「……………………。」


 荒井(あらい)くんの言葉に、再び冷ややかな視線を送るのは純麗(すみれ)ちゃん。


 「その神様に会ってどーするわけ?うちの寿命を伸ばしてって、お願いするの?」

 「…………僕はただ山吹(やまぶき)に提案しただけだよ。君の寿命を伸ばしたいって言っていたから。」

 「へー。…………言っとくけど、うちは頼んでないよ。…………あぁ。そろそろ部活戻んなきゃ。じゃ。」


 純麗(すみれ)ちゃんはそう言って妖(よう)の狭間(はざま)から出ていってしまう。声をかけようともしたが、言葉が出なかった。


 「岬(みさき)ヶ崎(さき)はああ言ったけど、どうするの。」

 「……………………それでも、やっぱり私は、純麗(すみれ)ちゃんに長生きしてほしい。」

 「ふぅん。じゃ、まずは神様に会いに行かきゃね。」


 純麗(すみれ)ちゃんが居なくなった先を見る。そこに彼女の姿はない。しかし、先までの彼女も、私の知っていた姿ではない。

 いや。そもそも、私は彼女のことを何もわかっていなかったのかもしれない。それでも、やっぱり私の意思は変わらない。


 とにかく、願いを叶えてくれる神様とやらを探そう。そして、希望を見つけられれば純麗(すみれ)ちゃんの気だって変わるかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。