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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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52-1.タイムリミット

 今日は学校も休み。だというのに、私は学校にいた。というのも、学校によう狭間はざまが出現したからだ。


 「はぁ。休みなのに来ることになるとは…。」

 

 ひとりぼやいていると後ろから現れたのか、荒井あらいくんの声がする。


 「言ってもどうにもならないでしょ。早く妖怪探すよ。」

 「…………荒井あらいくんはいつも通りだね…。」


 私の言葉を気に留めることなく、荒井あらいくんは校内を歩く。すると、建物に響いていた吹奏楽部の演奏が消える。それだけではない。校庭から聞こえた金属バットが鳴る音も、ラケットがボールを打つ音も全てだ。

 これは合図でもある。妖怪が蔓延るよう狭間はざまに転送されたのだ。


 こうなればいつ妖怪に襲われるか分からない。私は身構えながら、勘がはたらく方へと進む。

 体内に流れる座敷わらしの血が、危険な妖怪を知らせてくれるのだ。


 東校舎の2階、廊下を歩く。その時、反対校舎の3階から轟音がした。


 「!?なに、」

 「……………とにかく行こう。」


 驚く私に構わず、荒井あらいくんは音のした方向を目指す。

 渡り廊下を挟んだ向こうの校舎。そこからは火の手があがっていた。


 「!?なにが…、」


 言葉を続ける前に、私は目前にいた人物を確認し唖然とする。そこには友人、純麗すみれちゃんがいたのだ。

 そんなはずはない。瞬きをして、前を見る。だが、やはり純麗すみれちゃんは確かに存在した。しかし、それはおかしい。何故ならここはよう狭間はざま。妖怪や妖怪の血が流れる者のみ入れるところで。


 「あー、奇遇だねぇ。かえでっち。」

 「す、純麗すみれちゃん?どうしてこんな所に…?」

 「んー。どうしてって、まー、妖怪の血が流れてる…から?危ない妖怪を退治してたとこ。」

 「………………純麗すみれちゃんにも…妖怪の血が…。」

 

 状況が飲み込めない。だが、考えてみれば納得出来る。以前、純麗すみれちゃんと会ったとき、彼女は言っていたのだ。妖怪に負けぬよう頑張ってと。思えば、純麗すみれちゃんは気づいていたのかもしれない。私が妖怪と戦っていることを。


 「まっ!それはそれとして、これからもいつもどーりよろしくね!暇だったらうちも妖怪退治手伝うからさ!」

 「う、うん…。」

 

 妖怪の血を引くといっても、純麗すみれちゃんは純麗すみれちゃんだ。見てくれでは全く違いが分からない。

 そう思っていると、隣にいた荒井あらいくんが静かに口を開いた。


 「………みさきさきが手伝う必要はないよ。」

 「え?荒井あらいくん、どうして?」

 「………………。」


 純麗すみれちゃんは荒井あらいくんの言葉を受けて、静かに彼を見つめる。


 「君、体限界でしょ。これ以上妖力使ったらもたないよ。」

 「!?本当なの、純麗すみれちゃん!」

 「……………………まーね。」


 彼女の答えに驚く。


 そして、脳裏に浮かぶのはいつの日かのこと。純麗すみれちゃんが休日、病院に通っていた姿。あれは、成長痛などではなく、体の不調が原因だったのだろう。


 「うち、妖怪の血が濃いらしいんだよねぇ。ただ、血は濃くても体が耐えられないらしくてさ。寿命が短いんだって。あと3年ぐらいは持つけどさ。」

 「そ、そんな…。……どうにか、出来ないのかな…。」

 「ムリムリ。いいよ。ていうか、人生あと3年って考えると逆にやる気出るっていうか。短いからこそ、全力でいられるし。」

 

 自嘲気味に笑う純麗すみれちゃんの姿。


 私は、そんな姿を見たくなかった。だって、今まで見てきた全力の純麗すみれちゃんは諦めから来る姿ということではないか。そんなの、嫌だ。

 純麗すみれちゃんはスポーツが出来て、手先が器用で、それでいて毎日楽しそうで。憧れでもあるのだ。何にもない私にとって、純麗すみれちゃんは眩しくあってほしいのだ。


 「そんなこと、言わないでよ。きっと、何か方法はあるよ!」

 「あったとして、しょーじき、もう良いかなって。疲れたんだよね。だから、さ、」

 「諦めるなんて、純麗すみれちゃんらしくない!」

 「……………………かえでっち………。」


 純麗すみれちゃんは目を見開く。そして、私の肩にそっと手を置く。


 「かえでっちが、うちの何を知ってるわけ。」

 「……………え。」

 「うちら、会って1年も経ってないでしょ。なのに、うちらしくないとか、なんとか、勝手じゃん。」

 「ご、ごめん。でも、私、友達として、」

 「たかが1年未満の友達でしょ?」

 「あ………。」


 頭が真っ白になった。


 確かに、言われてみればそうだ。私と純麗すみれちゃんは1年も経ってない仲で、しかも、私は彼女が妖怪の血を引くことすら知らなくて。

 だというのに、純麗すみれちゃんらしくないだなんて語る資格はあるのだろうか。


 わずかな沈黙。


 それを破ったのは荒井あらいくんだった。


 「君たちの関係はどうでもいいけど。………みさきさきの寿命を伸ばす方法はあるよ。」

 「!ほ、ほんとう…!?それってどんな方法なの!?荒井あらいくん!」

 「願いを叶える神様に会うんだよ。この辺りの地域で祭ってるらしいからね。」

 「……………………。」


 荒井あらいくんの言葉に、再び冷ややかな視線を送るのは純麗すみれちゃん。


 「その神様に会ってどーするわけ?うちの寿命を伸ばしてって、お願いするの?」

 「…………僕はただ山吹やまぶきに提案しただけだよ。君の寿命を伸ばしたいって言っていたから。」

 「へー。…………言っとくけど、うちは頼んでないよ。…………あぁ。そろそろ部活戻んなきゃ。じゃ。」


 純麗すみれちゃんはそう言ってよう狭間はざまから出ていってしまう。声をかけようともしたが、言葉が出なかった。


 「みさきさきはああ言ったけど、どうするの。」

 「……………………それでも、やっぱり私は、純麗すみれちゃんに長生きしてほしい。」

 「ふぅん。じゃ、まずは神様に会いに行かきゃね。」


 純麗すみれちゃんが居なくなった先を見る。そこに彼女の姿はない。しかし、先までの彼女も、私の知っていた姿ではない。

 いや。そもそも、私は彼女のことを何もわかっていなかったのかもしれない。それでも、やっぱり私の意思は変わらない。


 とにかく、願いを叶えてくれる神様とやらを探そう。そして、希望を見つけられれば純麗すみれちゃんの気だって変わるかもしれない。

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