51.放課後クラブ
放課後。私は体育館近くを歩いていた。というのも、体育館近くの職員室に用事があったのだ。職員室へ日誌を届けたあと、通りがかった体育館の前で足を止める。
入り口付近の水飲み場で、見覚えのある女生徒がいたのだ。
名前は知らない。だが、所属している部活動は知っている。友人である純麗ちゃんと同じ、バスケ部だ。
女生徒は蛇口から水をすくい、口元へやる。そこで、私の視線に気付いたのか此方に顔を向ける。
「?私の顔、なんかついてる?」
「え、ううん。」
「あっ。あんた、純麗の友達?」
「そう、だけど。よく分かったね。」
「この間廊下で見かけたしね。……あのさ、あんた、純麗といて疲れない?」
「え。」
突然の質問に固まる。純麗ちゃんと居ると疲れる、とはどういうことだろうか。確かに、彼女はいつも有り余る元気で周囲を振り回しているが、それが嫌になったことなどない。
だがそこで思い出す。目前の女生徒は純麗ちゃんとトラブルになった人だ。だからこそ、そんな質問をしてきたのだろう。
「ううん。疲れないよ。友達だもん。」
「へー。………すごいね。あんた。私にはムリ。だって純麗って、人のことなんて気にしないし。」
「でも、自分らしく出来るのは凄いことだと思うな。」
「確かにそうかもしれないけどさ。でも、人様に迷惑かけてまで我を通すのは違うじゃん。純麗はさ、人を見てるようでいつだって自分ばっかり。だから、試合だってそう。」
あまりの物言いに、つい語尾を強めながら反論する。
「そんなことない。だって、純麗ちゃん、パス回したりするでしょ?自分ばっかりな人がそうするなんて、」
「それは仕方なく、でしょ。純麗にとってパスは最終手段だよ。いつだって自分がボールをカットして、運んで、シュートすることだけ考えてる。……それがプレイスタイルってんなら、それまでだけど。」
女生徒はそれっきり話すのをやめてしまった。手にしていたタオルで額を拭き、体育館へ戻ろうとする。
「あんたも、純麗と友達でいるなら気をつけなよ。いつか、愛想尽きる時が来るだろうし。」
「こ、来ないよ、そんなの。」
「どうだろうね。」
背を向けて、行ってしまう。
いくら純麗ちゃんを嫌っていても、あれ程言うことはないだろう。
だが、そんな気持ちも私が彼女と友人だから言えるのかもしれない。きっと、肩入れをしているのだ。だから、公平な目で見ているとは考えていない。
純麗ちゃんなら、きっと真っ向から言われたとしても跳ね返すだろう。良し悪しは置いておいて、彼女は面と向かって何か言われようが自身の出す全力にこだわるはず。
「…………帰ろう。」
用事は済んだ。これ以上、靄がかった気持ちにならないように、帰宅することにした。




