49.あいさつ運動②
今日は生徒会執行部の活動があった。内容はあいさつ運動。朝、校門前に立って行き交う生徒へあいさつするだけの活動だ。だけ、といったが少し違うかもしれない。一応、服装検査なども行うのだ。
私は早起きをして学校へ向かう。まずは教室へ行き荷物を置く。そしてまた校門へ。
「荒井くん。おはよう。」
その途中。廊下で黒髪の少年に合う。彼は荒井くん。部活仲間、兼妖怪退治仲間だ。
「おはよう。」
「今日は涼しいね。もう夏みたいな暑さはなくなってきたみたい。」
「過ごしやすくていんじゃない。」
「そうだね。春とか秋が一番過ごしやすいもんね。」
他愛もないことを話しながら校門前へ向かった。
登校してくる生徒は皆、既に白い長袖のシャツ。時折、暑がりの生徒は腕をまくっていたり、寒がりの生徒がカーディガンを羽織っていたりする。
「おはようございます!」
「おはようございます。」
私達はそんな生徒へあいさつをする。青柳高校の生徒はまちまちで、挨拶を返す生徒、返さない生徒ときっぱり分かれていた。
そんな中、ひときわ元気に挨拶を返す生徒がいた。
「おはよー!かえでっち!!」
そう言いながら私に近付くのは友人の純麗ちゃんだ。彼女はオレンジ色のポニーテールを揺らして、今日も明るく笑顔を振りまいてる。
「おはよう。純麗ちゃん。これから朝練?」
「そっ!今日もばしばしスリーポイント決めてくる!」
「あははっ。怪我しないようにね。また病院行かなきゃいけなくなっちゃうよ?」
「分かってるって!それじゃ!またねー!」
嵐のように去っていく。朝一番に彼女の顔が見れてよかった。純麗ちゃんの溢れんばかりの元気が幾分か私に伝わった気がする。
「…………岬ヶ崎、病院通ってたの?」
純麗ちゃんの姿が見えなくなったあと、荒井くんはぽつりと呟く。
私は少し意外だった。荒井くんが純麗ちゃんのことを知っていることも、そして気にかけていることも。
「う、うん。でも大きい怪我とか病気では無かったみたい。」
「……………ふぅん。」
それっきり黙りこくってしまった。運悪く、生徒の登校も止んでしまう。何か話題を振ろうかと迷い、言葉をまとめる前に口が開く。
「前も思ったんだけど、荒井くんって純麗ちゃんと仲良しなの?」
「………なんで?」
「い、いやぁ。荒井くんが人の名前覚えるなんて珍しいから…。」
「………君は僕をなんだと思ってるわけ…。」
荒井くんは心外そうに目を細める。そして、そっと遠くを見てから言った。
「別に。仲良しなんかじゃないよ。僕があの人を知ってるだけ。あの人は僕のこと知らないよ。」
「へー。………も、もしかして純麗ちゃんのこと、す」
「変なこと考えないで。馬鹿なのは顔だけにしてくれる?」
「なっ!?私の顔、そんなに馬鹿っぽい!?」
「少なくとも僕よりは。」
「そりゃあ学年3位の荒井くんには負けるけど!馬鹿っぽい顔ではないと思うなぁ!」
本当に荒井くんは歯に衣着せぬ言い方ばかりする。というか、思っても言わないほうが良いことだって言葉にしてしまう。もう少し、コミュニケーションを考えるべきだと思いながら、渋々挨拶運動を続けるのだった。




