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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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48/117

48.カラオケボックスにて③

 私の肩には未だ、重しのようにずっしりとした感触が残る。だけでなく、モウスコシモウスコシと子どもの声が聞こえていた。


 「なん、とか、振り払わなきゃ…!」


 その正体は妖怪である。老婆から幼子へと変化したそれは、私の背にしがみつき、徐々に重さを増していく。

 重さに負けぬよう、なんとか壁に手をやり体を支える。そうしていると、足音がこちらに近寄ってきた。


 「!荒井(あらい)くん!」


 音ともに現れたのは妖怪退治仲間の荒井(あらい)くんだった。彼は黒髪を揺らしながら、駆け寄る。


 「どういう状況なわけ!?」

 「わ、私の背中に妖怪が張り付いてるの!」

 「……っ、了解。」


 荒井(あらい)くんは顔を歪めて頷く。その表情には焦りが見られた。このままでは妖怪を倒すことは叶わないだろう。かくなる上は。


 「………荒井(あらい)くん!私ごと炎で妖怪を!」

 「馬鹿言わないで!そんなこと考えてるんなら、ほかの案出して!」

 「………………ほかの、あん…。」


 今の私は足手まとい。だから、せめて確実に妖怪を倒せるようにしたかったが、荒井(あらい)くんは私ごと妖怪を焼くつもりはないらしい。

 ならば、どうしよう。私に出来ることがあるのだろうか。結局のところ、何も出来やしないのではないか。


 嫌な考えがぐるぐると頭を巡る。しかし、今はそんなことに気を取られている場合ではない。こういう時にこそ冷静にならなければ。

 重くなる肩。なんとか立っていようと踏ん張りながら、頭を回す。視線の先には鏡。それを隔てて背中に乗っている幼子と目が合う。彼女はモウスコシモウスコシと呟くだけ。


 「!そうだ…。もしかすると…!『皆(かい)』!」


 鏡越しに幼子を見つめながらすべての指を組み、唱える。皆(かい)は対象の動きをとめる技。この対象は目視で確認していたが、目でおえるのであれば鏡越しでも効果は発揮されるのではないか。

 その目論見は当たっていた。皆(かい)と唱えた瞬間、背中が軽くなり幼子の高い声も止まった。


 「今!!」


 私は勢いよく体を振り、背後の妖怪を床へと落とす。それと同時に荒井(あらい)くんが手をかざした。そこから出るのは赤々とした炎。揺らめきながらも妖怪の体を包み、パチパチと音を立てて燃やしていく。


 「あ、ありがとう。荒井(あらい)くん。………その、迷惑かけてごめん。」

 「別に。退治できたし、いいんじゃない。」

 「そ、そっか。」


 優しさなのか、普段通りの冷たさなのかは分からないが、荒井(あらい)くんは気にしていない様子だった。


 「次は足手まといにならないようにするから!」

 「……………あっそう。」


 そう言って荒井(あらい)くんは背を向ける。怒ってはいないだろうが、些か不安が募る。やはり、私はまだまだだ。

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