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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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45/80

45.合唱祭

 今日はいよいよ合唱祭だ。といっても私はソロパートを務めるわけではない。だが、張り切らなくてはならない。何故なら、両親が見に来るからだ。高校の合唱祭は付近の文化ホールを借りるのだが、家族に限り観覧可能となっている。

 そのため、私の両親も意気揚々と見に来るわけだ。


 学校から文化ホールまで歩いて20分。クラス単位で移動する。


 「かえでっち!今日、頑張んなきゃね!」


 隣で歩く純麗すみれちゃんが言う。


 「そ、そうだね…。」

 「なぁんか元気ないね?」

 「…………両親が見に来るから…。」

 「あー、なるほどね!照れてるんだ!かえでっち!」

 「……………………だ、だって、この歳になって親に歌う姿見せるとか恥ずかしいし…。」

 「そんなこと気にしない気にしない!親はいくつになっても子供の姿をみたいもんだよ?」

 「……………それでも恥ずかしいよぉ。」


 文化ホールに到着し、中にはいる。ここには大中小計3つのホールがある。青柳あおやなぎ高校が使うのは中ホールだった。

 踏み心地のよい赤い絨毯を進むと、重々しい扉がある。私達はステージ側に行くので扉の先の観客席にはまだ行かない。迂回してステージへ向かおうとすると、反対側から見覚えのある男女が。件の両親だ。


 「!かえで!頑張ってね!」

 「ちゃんと見てるからな。なんなら、パパのカメラでばっちり撮るからな。」

 「は、恥ずかしいから止めて!というか撮影駄目だから!」

 「む。そうか。残念だ…。」

 「でも、ママとパパはちゃんと見てるからね!安心して歌ってね!」

 「わ、分かったから!もう…。」

 

 騒ぐ2人の横を通り過ぎる。顔が熱くなるのを感じる。この年にもなってあんな対応をされれば恥ずかしくて仕方がない。今なら顔どころか喉からでも手のひらからでも火がでそうだ。


 「かえでっちってば愛されてる〜。」

 「ほ、本当に恥ずかしい…。」

 「いーじゃん!いーじゃん!仲良しなのはさ!」

 「うぅ…。そうかなぁ。」


 火照る顔のまま、ステージ裏へと移動する。


 そして他のクラスの歌を聞き、いよいよ1年3組の番。

 緊張する手足を駆使して壇上へと上がる。観客席には青柳あおやなぎ高校の生徒、そしてその保護者達がいた。勿論、両親はすぐに見つかった。見つけてしまった。手なんか振っている。本当に恥ずかしい。


 やはりここでと火照る顔。だが、指揮者が手を挙げるのを見てそこへ集中を向ける。


 正直、歌う最中のことは覚えていない。気が付けばピアノは止まり、私達の番は終わっていた。だが、どっと疲れが襲ってきたので終わったのだと実感する。

 舞台裏を通り、観客席へ。出番は終わったので、あとは鑑賞するだけだ。


 そうして合唱祭は何事もなく終わった。残念ながら優勝とはいかなかったが、頑張ったということで先生の自腹でクラス全員アイスを奢ってもらった。

 頑張った報酬としては充分すぎるほど甘くて美味しかった。

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