43.妖力トレーニング④
学校終わりの放課後。私は自室にいた。何もゴロゴロしているわけではない。今日は少し時間もあるので妖力トレーニングをしようと思っていたのだ。
前回、海で人魚と戦った時に私は何もできなかった。人魚は倒せたが、水に引きずり込まれた荒井くんを助けることは出来なかったのだ。だから、もう少し出来る事を増やしたかった。
具体的にどうすべきかは分からない。だが、悩んでいても仕方がないので練習あるのみ。
以前までは山で妖力トレーニングをしていたが、そのせいで純麗ちゃんに出くわしてしまったので場所は変える。人目につかないところといえば、妖の狭間がある。
私は手で輪っかを作り唱える。
「『在』!!」
その瞬間、家の外で聞こえたトラックの音や公園での児童の声が消える。妖の狭間に来た合図だ。
自室から一階へと降りる。妖力トレーニング、とはいったが何をするかは決めていない。とりあえず出くわした妖怪と戦ってみよう。
なんて思い家を出る。何処に妖怪がいるかは分からないので、周辺をふらついてみる。
「……………いないなぁ。」
住宅街を一周するが、妖怪の姿はない。仕方がないのでもう少し足を伸ばすことにした。折角なので妖の狭間で学校に行ってみよう。
いつものように通学路を歩く。制服でもないし、鞄も持っていないので不思議な気持ちだ。
そして校門前に着く。妖の狭間といっても学校の見てくれに変化はなかった。
そうして眺めていると、ふと足に違和感を感じた。何かと思い、視線を下にやる。
「!?いたっ、」
瞬間、鋭い痛みがふくらぎに伝わる。視線の先。そこには長い爪が足を掴むのが映っていた。
咄嗟にすべての指を組んで唱える。
「『皆』!!」
『皆』は対象の動きを止める技。私に襲いかかってきた妖怪の動きもとまるはず。しかし、足元にいたはずの妖怪はいつの間にか視界から外れ、消えていた。無論、『皆』の効力は発揮できていない。
「……………どこに…………!?」
あたりを見渡すと、今度は背後から衝撃が走った。いつの間にか後ろにいた妖怪。その姿は苔色の体に頭には皿、というカッパのような姿だった。
カッパは私の背を叩く。私はその衝撃で転んでしまう。起き上がる間もなく、カッパの鋭く薄汚い爪が転んだ私へと向けられる。『皆』は間に合わない。
ひとりで妖怪退治を出来るなんて思い上がった罰だ。
そう思い、目を閉じる。もはやここまでだと。
しかし、一向にその瞬間は訪れない。恐る恐る目を開ける。そこには、頭の皿を割られて伸びているカッパがいた。周囲は何故か水浸しだ。
「な、なんで…。」
状況は理解できなかった。それでも、今は妖の狭間から出よう。そうしなければまた襲われてしまう。
抜けてしまった腰を奮い立たせて立ち上がる。私には、ひとりで戦うことは早かったようだ。




