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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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≒99.集結

 2月28日。月末。今日で2月の物寒い月も終わりだ。


 そしてそれ以上に私には意味のある日だ。


 神様が神様でいられるタイムリミット。それが今日、この日なのだ。


 私は神が待つ神社へ向かう。妖怪へと変貌してしまう彼女を救うために。無論、策はある。


 今まで救ってもらったのだから、今度は私が神を助ける番だ。


 気を引き締めて神社の入り口前、長い石段を歩く。既によう狭間はざまには転移していた。


 長い階段の先を見る。


 そこには既に先客がいた。


 「大里おおさと先生…!」


 目前にいたのは担任でもあり、神の血を引く人物、大里おおさと先生だ。

 彼はいつも教壇に立っている穏やかな様子ではなく、どこか物々しい雰囲気だった。


 「山吹やまぶきさん…。………なるほど。貴方も呼ばれたんですね。」

 「もって……先生も神様に呼ばれたんですか?」

 「はい。」


 声を固くしながら顎を引く。


 どうやら先生も、神様が妖怪になるのを止めようとしているらしい。


 私は先生の隣に並び、見上げる。


 「一緒に行きましょう!神様のところに!」

 「……えぇ。そうですね。」


 先生は落ち着き払った調子で前を向く。顔には色がなく、頬は微塵も上がることは無かった。それほどまでに真剣に神様へ向き合っているのだろう。


 そのまま並んで階段を登る。


 すると一匹。狼が現れた。


 「あれは神様の…?」

 「!構えて下さい!山吹やまぶきさん!」


 先生の怒号と共に、視界に映っていた狼が続々と増える。


 一匹、二匹、三匹。数える間もなく増える狼は初めに現れた一匹を取り囲みぐるぐると周囲を回る。


 先生はそれを見て即座に手をかざす。


 そこから出るのは水。蛇口をひねって放出したような水は確かな質量で狼の群れにぶつかる。


 はずだった。


 がしかし、私の想像する結果は訪れなかった。


 立ち尽くす狼と、周辺を走る狼。それらが土煙をあげ、視界を奪ったのだ。

 そしてそれがあけた時。私達の前には10メートルほどの巨大な狼がいた。


 「!『かい』!」


 咄嗟に指を組み、唱える。しかし、私の『かい』が効果を発揮することはない。何故なら、巨大な狼はその大きな足をもってして跳躍したからだ。


 巨体にそぐわぬ俊敏さに翻弄される。


 狼はその身体で木々をなぎ倒し、暴れ回る。


 「『かい』!『かい』!」


 飛んでくる木の枝や幹の動きを止めて、体勢を整える。


 先生も私と同じく体勢を整えるために妖力を使い水を放出していた。

 出現した水の勢いで、ちぎれて飛び散る鋭利な枝葉を弾き飛ばす。


 「っ。埒があきませんね。どうしたものか…。」

 「私が全部の動きを止められれば…!」


 先生と話している間にも、狼の動きは止まらない。


 柔らかな毛に包まれた尻尾も、今や十分な凶器たり得た。


 「!山吹やまぶきさん!」


 その凶器が、油断をしていた私の目前へと迫る。


 先生の呼び声。


 私はすぐさま構えて『かい』を発動させまいとした。

 間に合うか分からずとも、こんなところで終わるつもりはない。


 そんな決意を前に、私と尻尾の間を猛々しい炎が通った。


 「この炎…まさか…。」


 答えを出す前に、聞き馴染みのある声がした。


 「怪我はない?かえで。」

 「うちら、ギリギリ間に合ったかな?」

 「千里ちさとくん!純麗すみれちゃん!」


 振り向くと、千里ちさとくんと純麗すみれちゃんの姿があった。


 「どうしてお二人がここに…?」


 先生は私と同様な疑問をぶつける。すると、純麗すみれちゃんは片目を瞑り口角を上げた。


 「かえでっちに電話したんです!今日あそぼーって思って。でも、繋がらなくってやーな予感したんです!」

 「それで、僕を呼び出してよう狭間はざまを回ってた、ってわけです。」


 2人の説明が終わる。


 どうやら私はついているらしい。ピンチの時、これほど都合よく純麗すみれちゃん達が駆けつけてくれるとは思わなかった。


 「で。とりあえずあの狼倒せばいーんですよね?」

 「はい。目下のところは。」

 「りょーかいです!そんじゃ、4人もいるしおとり作戦で行こ!」


 恐らく彼女の言うおとり作戦はいままで使っていた作戦だろう。

 名の通り、おとりを用意して隙を作り、動きをとめる。そして最大火力をぶつける、といった単純な策だ。


 「うん。分かった。隙が出来たら私が狼の動きを止めるね。」

 「頼んだよかえでっち!」

 「じゃ、おとりは僕がいくよ。」

 「その間、私とみさきさきさんで妖力を貯めておくことにします。」


 話は纏った。


 私達よりも何倍も大きな身体を持つ狼は、小さな人間を気にもとめていないのかひたすらに暴れている。


 それを止める為。そして、その先に待つ神を救うため、私達は狼を倒さんとするのだった。

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