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忙し騒がし妖かし達  作者: とんぼ。


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108/117

93.微熱 37.4℃

 地蔵を倒した翌日。普段通りの登校日。


 変わったところと言えば、少し前に見知った人の後ろ姿があることぐらい。


 その人は荒井あらい千里ちさと。私と同じく妖怪の血を引く少年だ。


 友人であり、仲間でもある。


 が、私にとってはそれだけではない。


 彼はいわゆる想い人だ。


 しかし、いやだからこそ。今、彼に話しかけるのは躊躇ちゅうちょしてしまう。

 というのも、昨日、告げられた千里ちはとくんの言葉が原因だ。


 彼は言った。


 私が大切な人なのだと。


 その大切という意味は、私と同じだろうか。

 出来ることなら長い時間を2人で歩んでいきたい、そんな気持ちの大切だろうか。そうであれば嬉しいが自惚れてはならない。


 答え合わせをするのは躊躇ためらわれた。


 だというのに。


 こんな時に限って、先の信号は赤。


 私は千里ちさとくんと鉢合わせになる他なかった。


 「お、おはよう千里ちさとくん。」


 ぎこちない調子で手を振る。なるべく自然に、彼を意識してしまわぬように。


 「おはよう。………どうかした?風邪?」

 「え!?風邪!?なんで!?」

 「いや。顔真っ赤だから。」

 

 予想外の指摘を受けて、身体のバランスを崩す。


 よろけた拍子に、千里ちさとくんの手が伸びる。


 「ふらふらだし…やっぱり風邪じゃない?」

 「ま、まさかぁ。その…これは…寒いから!そう!寒いから!だから、走れば大丈夫!うん!」


 至近距離にあった顔から離れるように、信号が青になった瞬間、走り出す。


 道路は除雪されており、横断歩道の白線は所々薄れながらもしっかりと主張をしている。


 信号を渡りきってもなお、私は小走りで進む。


 「かえで。凍ってるし危ないんじゃ…」

 「へ、へいきっ、あっ!?」

 「…………ほら。言わんこっちゃない…。」


 転ぶ寸前、身体の向きを変えて脇の雪へと倒れ込んだ。


 それにより顔を強打することはなかった。


 「大丈夫?」


 やや呆れを含んだ溜息と共に、手を差し伸べられる。

  

 「う、うん。だいじょう、」


 恥ずかしさとやはり寒さで上がる体温。しかし、ここにきてそれはさらに上昇した。


 突然、伸びてきた手が私の額に向かったのだ。


 「やっぱり風邪だと思う。おでこ熱いし。……?かえで?」


 私はもう限界だった。


 「かえでかえで!?」


 煩い心臓の音と千里ちさとくんの声。


 その2つを耳にしながら、怠い身体が確かに脱力するのを感じた。


 私の意識はここまでだった。

 

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