二度あることは三度ある
ルルドの強襲に冷静に応えるのがノアだ。
飛びかかってきたルルドの下へ潜り、背後へと回る。
悪魔なだけあって身体能力の高いルルドは空中で体勢を変えてノアを視界から外さない。
ノアはルルドを見ても余裕な態度を崩すことをしない。
ルルドが振り返った体勢になっていたが、決してノアから視線を外さなかったのにも関わらず、一瞬のうちにノアが姿を消す。
空間を支配していることを知るルルドはノアがどこかへ転移したのだと把握し、着地した瞬間にその場を離脱する。
再び宙に上がったルルドの目の前には消えたはずのノアが現れ、ある一点に向かって蹴りを当てに行った。
悪魔のルルドは魔法を自在に操ることができる。
あれだけスネを狙われたのだ。
スネを守る秘策はすでに仕込んである。
しかしそこで見逃していたことがある。
ノアは空間を支配している。
つまり、どんなに防御していようとすり抜ければ意味のないことなのだ。
ルルドがニヤリと笑った次の瞬間、ルルドのスネにノアの蹴りが直撃した。
「いっ……たぁ!?!?!?」
ノアの計画通り。
ルルドのスネはノアに砕かれ、ルルドは脚を抱えて地面に転がった。
「ざまぁねぇな。そんなんじゃ、いつまで経っても守れるものも守れねぇよ」
ノアがルルドを説教していると、その隙を伺っていたウグイは隠し持っていたナイフをノアへと突き刺す。
「ブフッ」
「はんっ!油断しておるから!」
ノアはナイフを刺されたことで口からあるものを吹き出した。
それはドロっとしてるもので、誰もが見たことが真っ赤な液体だった。
「ノア様!?え?なにそれ!?」
ノアが吹き出したのは赤くてドロッとしたトマトだった。
ここでは紅魔の実と言われるものなのだが、ノアの口から出てくるにしては状況的におかしなものだ。
「つい笑っちまって食べてたトマトが出ちまったじゃねぇか」
「なにぃ!?」
確かに貫いたナイフだったが、その隙からは血が出ていなかった。
「あーもう、チャンスをまた逃したな、ワトソン君」
「誰ですか、ワトソン君」
「ええ!?知らないの?」
ワイドのツッコミにノアは戸惑いを見せる。
そこで異世界であることを思い出して落ち着く。
ナイフを突き刺したウグイを押しのけ、未だに脚を抱えるルルドを空間転移で別の場所に飛ばした。
ウグイを許す口実を失ったことでこの茶番劇を辞めることにしたノアは、黙らせていたじーじも別の場所へと飛ばした。
「さて、ワトソン君の処理をするか」
「殺しますか?」
「もちろん、殺すがじーじが言うように使い道があることも検討すべきだ。そこでだこのワトソン君もサバルとジュメの様に機会を与えるのはどうだ?」
「サボったらどうするんですか?」
「そのときは殺す」
「厳しい罰だ」
「罪人であることに変わりない。それに傲慢だ。躾が必要なのはわかっている。メイドたちのストレス発散に突き合わせるのも悪くない」
メイドに対して弱いノアは新しいおもちゃを得て喜ぶメイドを思い浮かべる。
「まぁ体罰受けて死んだほうが楽だと思えるくらいになれば、こいつも少しはマシになるだろう」
「ノア様は相変わらずエグいことをお考えだ」
「これくらい普通だろ?」
「ノア様が普通だったらこの世の終わりですね」
「それって褒めてるのか?」
「もちろん、貶してますよ」
ワイドとの馴れ合いをしつつ、ウグイとアルセラを輸送していく。
死んだ奴隷たちは土に返した。
その後、ウグイとアルセラはメイドにしごかれて、一人前の貴族と最高執事に生まれ変わる。
死んだと思われていたウグイとアルセラが帰ってきて度肝を抜かれたじーじが面白かった、とノアは爆笑する。
そんな未来ができるかはウグイとアルセラ次第だ。




