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じゃがもポテトもないんだよ

 アルセラは拘束され、ウグイは地べたに這いずる。

 じーじは一連の流れを見ていながら、ただ眺めることしかできずにいた。

 街では社会的地位のある権力者であったが、ここでは無力でしかない。


 ウグイはあれでも優秀な父を持つバカ息子であり、貴族でもある。

 貴族は傲慢であるが、街では重要な役割を持っている。

 バカでは到底できないことでも学べば時間とともに使えるようになる。

 磨けば輝く原石だ。


 ゴミでクズだがいずれ使い道が来るであろうウグイを助けられる手立てがないかじーじは思考する。

 これでもノアに親切にしてきたつもりだ。

 なんとか交渉してウグイだけでも救えないか、と。


「ノア、ワシの頼みをきい「だめ」」


 勇気を振り絞り、ノアに話しかけるも途中でノアが釘を刺した。

 ウグイに視線を向けたまま、ノアはじーじに答える。


「こいつは許されないことをした。それなのに無条件で許す?馬鹿馬鹿しい。あまりにも俺達を馬鹿にしてる」

「じゃが……」

「じゃがもポテトもないんだよ。いまは静かにしてろ。決めた。ウルフロードになったウルフの名前はクラウンにする。クラウン、そこのじーじを大人しくさせておけ」


 じーじを黙らせ、ついでにウルフに名前をつけた。

 あまりにも情緒不安定な言動にじーじは困惑する。


「ウォンッ!」


 それに対して「クラウン」の名をつけられたウルフは興奮してはち切れんばかりに尻尾を振っていた。


「よしよし、いい子だ。」

「ヘッヘッヘッ!」


 頭を撫でられたクラウンは嬉しそうにノアに擦り寄った。

 どんなにクラウンに意識が寄っていようとも、ウグイはノアの圧に潰されて動けなかった。

 ただ黙ることしかできないウグイに、ノアはイラつきだす。


「今後の人生は自ら切り開くしかない。それなのにだんまりか。俺はこの状況に置かれたら、どうにかして案を出すがな。この場では黙っていることは罪だ。そして沈黙が長ければ長いほど、罪の底は押し上がっていく。その意味がわかるか?」


 挑発するように言い放った言葉に対してウグイは顔を茹でたタコのように赤くしながら立ち上がった。


「だ、黙れ!お前に私の何がわかる!私は自らを律するためにどれだけのことを犠牲にしてきたと思っている。たまたま私を退けたからと言っていい気になるな!私には、まだ切り札は残されている!」


 ウグイはそう言って、指に嵌めていた指輪を見せつけた。

 ただただ高そうに見えた宝石だったが、固唾を飲んで見守っていたじーじにはその価値をこの場にいた誰よりも理解していた。


「それは!?」

「そうだ、爺。これは近くにいる悪魔を強制的に引き寄せ、従わせる禁忌の魔道具だ!」


 じーじが恐れる顔を見せたことでウグイはさらに調子づいた。


「今なら許してやる!さもなくば、これでお前たちを……」

「やってみろよ」


 じーじの反応は一般人としては当たり前のリアクションだが、規格外で非常識であれば話は別。

 ノアは指輪の登場前と変わらず、ウグイを挑発した。

 するとウグイは顔の筋肉をピクピクと震わせながら怒りを顕にした。


「き、貴様ぁ!後悔させてやるっ!絶対に殺してやる!」

「おうおう、いいからさっさとその指輪の力を見せてくれよ」

「言わせておけば〜、見よ!これが悪魔を従わせる力だ!」


 ウグイが指輪を空に掲げると、空が曇り、ウグイの前に魔法陣が浮かんだ。


「来たれ悪魔よ、我に従え!」


 魔法陣から浮かび上がった黒の影だ。

 影は次第に形を変え人型になっていく。


「は、はは、これが我の悪魔か……素晴らしいっ!」


 ウグイが高笑いをしながら召喚したのは執事服の男の悪魔だった。

 その悪魔はノアからすれば見覚えのある男で、ワイドもよく知る人物だった。

 そして悪魔本人もノアとワイドのことを知っていた。


「私を呼んだのはお前か?」


 悪魔はノリノリでウグイに声をかけた。


「如何にも。我はそなたを召喚した主、そしてそこにおるのは敵だ!早々に片付けてくれっ」


 ウグイは急に特徴的な喋り方になったが、やりたいことは変わらず、この場から切り抜けた上でノアを完膚なきまで叩きのめすこと。

 しかし、状況は変わらずウグイが悪いままだった。

 なぜならウグイが召喚した男の悪魔は召喚以前からノアの配下であったからだ。


 悪魔はノアの配下ではあるが、最近自身に対する雑な扱いに不満があった。


「こんな機会二度とない、ここで積年の恨みを倍返しだっ!」


 こうして苦労人ルルドは、ノアへの復讐のために悪魔でありながら主人の命令を無視して戦いに挑むのであった。


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