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怠惰なわんちゃんの名前は今日からポチだ

 店の前で威圧的な態度をとる貴族、ウグイ・トリトリーは店から声がしないことに満足げだった。


「うむ、怖がって出てこないな。そろそろ店に突入させよ」

「はっ、ウグイ様」


 ウグイの命令に返事をした執事は奴隷武装集団に指示を飛ばした。


「行け!あの店を襲撃せよ!」

「うおおおおーっ!」


 首輪のせいで言うことを無理やり聞かされた男たちは店の入り口に雪崩込むように走っていった。

 しかし、先頭の男が店にあった見えない壁にぶつかり、後続の男達につぶされた。


「な、なにが起こっておるのだ!?」

「だ、だめだ!壁があって入れねぇ!」

「こっちもだ。びくともしねぇぞ!」


 全方位から攻撃を仕掛けるも、商店に一歩も近づくことはできなかった。

 攻めあぐねていると、店の扉が開いた。


「あ、あの男は!?」

「私に畑を売らなかった男ではないか!」


 店から出てきたワイドは怒っているウグイを見つけた。


「また来たんですか……」

「私に畑を売らないとはいい度胸だな。いいや、まずはこの土地だ!ここは私のものだぞ、誰が勝手に店を構えていいと言った?」

「おかしいですねぇ。ここは安売りされてたところなんですが、そういう妄想をしているのですか?」

「妄想などではない、事実だ!」


 またも話の通じないウグイにため息を吐くワイド。

 そこへ話を聞いていた商人ギルドのギルドマスターであるじーじが間に入った。


「ここはお主の父上がすでに売り払った土地じゃ。今更出てきたところで遅い」


 突如として現れたじーじにウグイは驚愕する。


「な、なんでギルドマスターがここにぃ!?」

「懇意にしとる店に来て何が悪いんじゃ?それになんじゃ、この者達は」


 武装した奴隷を指差したじーじに対し、ウグイは執事にボソリと指示を出した。


「マスターを射抜け」

「御意」


 執事にひっそりと話しかけたつもりのウグイだったが、ワイドの耳から逃れることはできなかった。


「マスター」

「なんじゃ?」

「もうすぐ矢が飛んできますので、動かないでください」

「なんじゃと!?」


 じーじが驚いてウグイの方を見た瞬間、矢がちょうどじーじの眼に来るような位置に飛んできた。


「ぬおっ!?」


 じーじに刺さったと思われた矢だったが、すんでのところでノアの空間の壁に守られた。


「ウグイ!お主、今ワシを殺そうとしたな?」

「この距離で失敗するだと!あとで鞭打ちだ!」


 憤慨するじーじを無視して奴隷を叱りつけるウグイ。


「まさかこんな愚か者に育っておるとはな!見損なったぞ!」

「じいさんになんと言われようと、ここで殺せば私がなにか言われることはない!さっさと殺せ!」

「貴様、そこまで堕ちたか!」

「店前で騒ぐな。近所迷惑だぞ」


 にらみ合う両者の間に入ったのは、しばらく傍観していたノアだ。


「騒ぐならやっぱり近所がいないところだよな」


 ノアがそう言うと、情景が一瞬で森に変わった。

 ノアとワイドの後ろにあった店が消え、周囲には生い茂った木々が出迎えた。

 いきなりの出来事に騒ぐ奴隷、脳の処理が追いつかないじーじとウグイは目を回していた。


 そこへ木々の隙間から清潔ゴブリンたちが現れた。


「グギャッギャッ」

「グキャ?」

「ウォンッ!」

「グキャ」

「わふっ……」

「グキャア」


 その中にはさらに進化したブラックウルフ、ゴブリンエリートがいた。

 ブラックウルフは強靭な牙で鉄をも貫き、硬質化することができる毛で鋭い剣すらも弾き返すことができる凶悪な魔物だ。

 ゴブリンエリートはゴブリン種の中でも最上位の存在であり、ゴブリンジェネラルの次の強さがある。


 ここまで来ると普通の人では手に負えないレベルだ。

 そんな魔物が武装している。

 その脅威にウグイとじーじ、他数十名は冷や汗をかいていた。


 そんななか、ノアとワイドは何食わぬ顔でゴブリンエリートとブラックウルフに相対していた。


「よしよし、いい子で待ってたか?」

「ウォンッ!ヘッヘッヘッ!」

「少しは強くなったようですね。今度稽古をつけてあげますよ」

「「「グギャッギャッ!」」」


 まるで彼等のことを隣人と世間話をするように応える二人に、一時の疑惑が持ち上がる。

 もしや、この二人は魔に寄ったものではないのか、と。

 魔に寄る者とは、言葉の通り、魔族の勢力圏のもの、人と敵対するもの。


「の、ノア、こやつらは?」


 じーじは勇気を振り絞り、ノアに尋ねる。

 すると、ノアはあっけらかんに答える。


「俺の配下だ。強くなったんだよ。前はまだまだだったんだけどな。特にこいつなんて可愛いだろ」


 ノアが撫でるのは、ブラックウルフのさらに上、ウルフロードになったウルフだ。

 残念ながらロードの名を持つウルフはファングウルフのままだ。


「こいつにロードってつけたほうがよさそうじゃね?」


 ノアの意見に嬉しそうに尻尾を振るウルフ。


「さすがに可愛そうなので違う名前にしましょう」

「そっか、残念だ」


 ノアの気まぐれにワイドはロードのことを考え、なんとか回避することに成功した。


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