野菜騒動
開店日になり、エルフ達は大急ぎで野菜を並べていた。
そんななか、ノアはというと、併設しているカフェでエルフ達を眺めていた。
大枠を終え、専門外である店のことについてやることはほぼ皆無だった。
連日、腹いせにじーじが宣伝したことで中央から離れた店にも関わらず、開店前から行列ができている。
もっとも、この行列ができた原因がじーじだけでないことをノアは知っている。
それは、領主にお土産で渡した野菜達だ。
あの野菜には多量の魔力が含まれている。
この領地にいる全てのものに適応する魔力欠乏症を治す効果的な治療法があの野菜だ。
その結果、開店前日から並ぶ人がいるくらい待ち遠しくしている人がいた。
あまりにも多すぎて開店前から出店して野菜を売ることになるくらいだ。
気苦労が開店前からMAXに近くなっているアルフェが気の毒で仕方がない。
特に貴族なんかが来たときは涙目でノアに助けを求めていた。
そのとき、アルフェにノアがある助言をした。
「馬鹿はどこにでも湧く。我慢せずに俺を頼れ、いいな」
「ノア様……!」
感動するアルフェの肩をたたき、ノアは部下の期待を一心に答えた。
ノアの功績もあり、もうすぐ開店するところで、アルフェがノアを頼ることをしなかった。
待ちに待った客のもとへ向かい、アルフェは宣言した。
「開店です。ゆっくりお進みください!」
店員の言うことを聞くか!と言って押し込んで来る者はいない。
なぜなら、店で野菜を買えなければ家族が助からない可能性があるからだ。
順当に野菜が売れ、すぐに完売した。
待っていた客もいたが、少しだけ待つように指示した。
なくなってもすぐに補充するだけの野菜がある。
店に陳列すればすぐさま開店した。
それを幾度と繰り返し、行列はすぐになくなった。
客足がなくなった頃、じーじがやって来た。
寂れた店前を見たじーじは懐疑的な視線で店を見た。
「おかしい。開店したばかりとはいえ、こんなにも人がいないとはどういうことじゃ?」
店の窓から中を覗くと、そこには陳列棚に並べられた青々とした野菜。
数が一つも減っていないように見えない様子に予想を裏切られた気持ちになる。
「宣伝が足りんかったんかのぅ?」
疑問に思いながらも、じーじは店内に入っていく。
「お?じーじ、来たのか」
じーじの姿を見たノアはすぐさま迎えに向かった。
「ノア、この状況、どういうことじゃ?」
「ん?あぁ、もしかして勘違いしているのか?」
「ぬぅ?」
「もう二回ほど完売したところでやっと客が落ち着いたところなんだよ。これは三回目の陳列だ」
「なんじゃと!?」
能力的に規格外と思っていたが、商売においても規格外とは思いもよらず、じーじは驚いた。
ノアは得意げな顔をしてふんぞり返り、ヒルデはその姿にほっこりしていた。
「どうだ、じーじ。恐れ入ったか?」
「ここまでとはな。それで問題はなかったのか?」
「問題?あぁ、そういうものはすぐに片したからな」
「片した?」
「あぁ、片した」
片したという意味がよくわかっていなかったじーじだが、すぐにその意味を理解することになる。
静まっていた店の外が騒がしくなってきた。
客足がまるでなかったはずの店の前には大勢の武装した集団がいた。
その戦闘に立っていた男は、商人ギルドでワイドに詰め寄り、店に来てはアルフェに無理な注文をしてきた貴族だ。
「よくもこの私の命令を無視したな!ここは元々私の屋敷だったのに、お前たちのようなクズが占拠するなどもってのほか、返してもらうぞ!この土地を!」
高らかに宣言した男を窓越しに見たじーじは大きくため息をついた。
「はぁ……またあやつか。いい加減、部を弁えよ」
「知ってるのか?」
「あやつは商人ギルドの癌のような男での、先代が大層立派な功績を上げたせいであやつも自分がすごいと勘違いとしとってな。一応貴族だからあんまり口出しできんのじゃが……ここまでやるとは馬鹿じゃのぅ……」
疲れた顔をしたじーじに、ノアは気味の笑いをする。
「あいつらはボコボコにしていいのか?」
「できるのか?」
「もちろん」
「命まで取らんでくれよ。ここは街中じゃからな」
「外ならいいのか?」
「わからんように出来るならな。ワシが説明しといてやるから、遠慮することない」
「わかった。あいつらのことは俺に任せてくれ」
じーじの助言に従い、ノアは早速行動に移った。




