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駄々をこねる爺ほど可愛げがないものはいない

 更地になった土地を見た商人ギルドマスターのじーじは、魔人の主人であるノアへの警戒を強めた。

 恐るべき力を持つのは魔人であるワイドだけではないことには気付いていた。

 メイドとして仕えているヒルデもまた並ならぬ魔力を感じた。


 それに対してノアは魔力の一切を感じることができなかった。

 隠す能力があるのかと思えば、力を使った一瞬さえも欠片も魔力の痕跡はなかった。

 つまり、ノアは魔力を介さない能力を持っていると結論づけた。

 そしてあの闇の力。


 じーじは思うこともあったが、口に出さず、この状況の先になにが起きるのかという興味が勝った。


「もう少し待っててくれよ。ちょっとだけ時間をくれ」


 ノアはお店の構造を考えるため、三人には離れておくように指示を出した。

 ノアの様子に口出しをすることのない二人に、じーじは声をかけた。


「おふたりさんはどうして彼に仕えておるんじゃ?」


 じーじの質問はまさにノアとの関係を知るためのストレートなものだった。

 怒る、もしくは不機嫌そうな顔をする。

 感情的な表情、あるいはそういう素振りをするかと思われたが、二人は、毅然とした態度で堂々と答えた。


「私は恩があるからですよ」

「ふむ、そうか」


 ワイドからは何も得ることができなかった。

 じーじは、残されたヒルデに期待を込めた視線を送る。

 しかし、ヒルデもまたなんともいえない回答をした。


「指名されたからですね」


 少し遠い目をしたヒルデに悪いことを聞いてしまったと焦るじーじ。

 視線の先には未だに「うーん、うーん」と唸っている姿があった。


「まだかかりそうかの?」

「急ぎでもないですからね。お帰りになられても問題ないですよ」


 ワイドは老人を労るようにじーじに提案した。

 すると、じーじは首を振った。


「せっかくの機会じゃ。待とう」


 じーじの様子に気づいていたノアはじーじの認識外から近づき、簡易的なベンチを配置して現場に戻った。


 一瞬の出来事を見逃さなかったワイドが、じーじをベンチに座らせた。


「これは?」

「ノア様の気遣いですよ」


 ノアの特異性にまた一歩近づいた瞬間だった。

 視界では動いていないノアがこちらを見ることもなくやり遂げたことが、あまりにも現実的ではなかった。


 この世界には魔法が存在するが、一瞬で移動することができる魔法は存在しなかった。

 魔法と身体能力をフルに活用したものならある。

 その場合、爆音とともに衝撃波が訪れ、まともに会話することなど不可能である。


 つまり、ノアがやってのけたことはこの世界の誰にもできないことだ。

 その真相にじーじが辿り着けたかは別として、ノアが規格外であることを実感したじーじであった。


「よし、よしよし!いいのを思いついたぞ」


 ようやくノアの構想が定まった。


 ノアが地面に手を置くと、同時にノアの構想する草木が生え始めた。

 柱が立ち、床が出来、まるで壊れた家が逆再生するように建物が出来上がっていく。

 三階建の巨大な商店と共に小さな小屋がいくつも出来ていく。

 商店と小屋を繋げる道には草木がなく、石畳が続いている。

 外観ができれば、内装を作っていく。

 一階と二階を商業スペースとし、三階はプライベートルームとして使えるように改装した。


「外から見たら良さげだな。ワイド、ヒルデ、じーじ、出来たから中を見てみようぜ」


 ノアは三人を引き連れて、店内を見学した。

 ワイドとヒルデからはなかなか好感触だった。

 木でできた店内は落ち着いた雰囲気で、野菜を生食するカフェも併設されていた。

 商品棚のイメージはスーパーの野菜市場だ。

 ノアのアレンジもあり、じーじは画期的だと評価していた。

 じーじは店内を散策してあるものを見つけた。


「ふむ、なかなか良いところじゃないか。ん?なんじゃ、これ!?」


 ノアが野菜を売ることに全力を注いだ結果、店内にも畑があるいう規格外のものだ。


「採れたてが一番うまいだろ?」

「そうじゃが、こやつはなんじゃ!?」


 じーじが特に驚いたのは畑の世話をしているふよふよと浮いたものだ。


「そいつは精霊だが?」

「精霊!?」


 ドライアドを連れてくることができたノアは咄嗟にもう少し弱いと思われる精霊を呼んでおいた。


「精霊じゃと!?戦争でも始める気か!?」

「はぁ?農作業に決まってるだろ」


 じーじの認識では戦争で切り札と呼べる。

 高火力の魔法を無尽蔵に放つことができるのが精霊だ。

 その精霊が見えるだけで十体飛んでいるという状況に戦々恐々していた。


「これがあればエルフ達も楽しく野菜が売れるだろ」

「エルフぅ!?」

「エルフも農作業するだろ?」

「やっばりお主、戦争する気じゃ?」

「農作業するって言ってるだろ!」


 エルフもまた魔法の得意な種族で侮れない。

 じーじの妄想が膨らんで高血圧で大変なことになりそうと考えたノアは、じーじを戻してくるようにワイドに命令した。


「いやじゃ、いやじゃ」と駄々をこねるじーじをワイドは肩に抱えて連れて行った。


 残されたノアとヒルデは二階と三階の見学へと向かった。

 二階は野菜以外にも手をつけるためにつくったもので、ここにはなにも置かれていない。

 三階はプライベートルームがいくつかあり、会長の部屋は特に広くしてあった。


「ここがアルフェちゃんの部屋ですか……」

「そうだ。気苦労が大きいだろうから特に豪華にしておいた」

「さすがですね。そのあたりは」

「だろう?」


 エルフの元姫であるアルフェのことを考えた設計にヒルデは満足していた。

 大まかに見学を終えると、野菜を売るために待機させていたエルフやメイド達を空間を介して呼び出した。


 女所帯で野蛮人が来ることも考えてウルフ達も呼んでおいた。

 明らかな過剰戦力であるのだが、ウルフ達を可愛がっているからか、その脅威を気にする者は誰一人としていなかった。


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