求められれば襲う準備はできている
見事ユノンを説得できたノアは、ユノンを連れて畑を訪れていた。
畑の現状をユノンは知らなかった。
というか、自分の仕事に関すること以外は基本干渉していなかったせいで、誰がなんの仕事についているのかも把握していなかった。
そこでノアは他の仕事の代表者を集めて、それぞれの仕事の問題を上げてもらうことにした。
「今日集まってもらったのは他でもない、今後のこの街の発展に関することだ」
ノアの議題に誰もが好気的な反応を示した。
今のところ、この街は廃墟から人が住めるだけの場所に成長しているものの、これといった発展と呼べるものはしていない。
強いて言うならば、隣の街と一応友好関係になっているだけだ。
「まず俺が聞きたいのは、この街に足りないものはなんなのかということだ」
すると、早速手を上げたのは、新参者でありながらオークの直弟子になったサバルだ。
「娯楽がない」
サバルの言っていることは正しい。
今のところ、ノアの街には畑と檻くらいしか変わったものはない。
「ないなぁ。サバル、欲しいものはあるか?」
「そうだな、夜の街が欲しいですな!」
「よし、ヒルデ、やつを追い出せ」
「はいっ!」
サバルの野望は瞬殺された。
言っていることは男として欲しいものだとノアもわかっている。
けれどノアがこれを了承すれば、ノアが肉欲を求めているのだということになり、ノアは絶え間なく夜這いされることになる。
それを危惧しているノアはサバルの野望を受け入れることができずにいた。
「さすがはロリコンの名をほしいままにしたノア様ですね」
「それはワイドの二つ名だから、勘違いするなよ」
「なっ!?」
ワイドのからかいをノアはするりと交わした。
それを聞いたマルマとメルメはロリコンについてワイドに直談判した。
「ねぇ、ワイド。ろりこんってなぁに?」
「聞きたい、ワイド。ろりこんって?」
「……マルマとメルメにはまだお早い話ですから、静かにしていましょう」
ワイドの強引な回避にマルマとメルメは不満気だ。
あとが怖いだろうな、と考えるノアだったが、ここで手を出してしまえば飛び火するのは目に見えている。
ノアはこの件にこれ以上踏み込むことをせず、「他にいないか?」と周りの住人に聞いた。
すると、今度は人族のジュメが手を上げた。
「なんだ、ジュメ」
「はい、交易をするのはどうでしょうか?野菜を捨てるとなると、森が野菜だらけになってしまうことが予測されます。いっその事、売ってしまうのはどうでしょうか?」
「あぁ、それは常々考えていることだ。けどな、お前に任せることはない」
「なんでですか!?」
「お前には机を作るという使命があるだろ」
ジュメは会議に参加しているとはいえ、罪人であることに変わりはない。
ノアの言い分を理解した上でジュメは諦めきれずにいた。
「私はこれでも10年ほど行商人をしております。これまでの経験を活かし、この街をよりよく発展させるべく交易相手を増やすことができます!」
「俺たちは別に金がほしいわけではないからな。その交易相手とやらは俺たちを利用することしか考えてないだろ?俺たちにメリットあるのか?」
ノアが食いついたと考えたジュメは捲し立てるようにツラツラと言葉を羅列した。
「はい!これまでにない画期的な文明が発展できるかと思います!」
「そうか。なら、これよりも画期的なものができるってことでいいか?」
そう言ってノアが取り出した物は腕時計だ。
細部までこだわった趣向のある時計だ。
渡されたジュメルはその洗礼された腕時計に心を奪われた。
「こ、これは!?」
「んー?時計だが?これよりもすごいものができるって?」
「あ、ありえない……」
「反論はなさそうだな、次行こう。これは返してもらう」
「ああっ!?」
ジュメもうるさくなったから、ヒルデが会議室から放り出した。
「他には?」
「あの……」
ノアの問いに反応したのはアルフェだった。
馬鹿者二人の醜態を目にして、冷ややかな目線を送っていたことをノアは見逃していなかった。
「なんだ、アルフェ」
「うちの街に人を連れてくるのは嫌ですので、隣街に納品するのはどうでしょうか?」
「うーん、それだったら領主に売りつけるのが一番な気がするが……」
「それだと主導権を奪われかねないので、新しく商会を作って、 そこで売買するのがよろしいかと」
「なるほどな。それなら街の情報もこまめに得られるしな」
他に意見がなかった。
ノアは隣人であるアルフェの言うとおり商会をつくることにした。
その商会の長にアルフェを起用し、エルフたちを半数、悪魔のメイドと執事の半数を送り込むことにした。
これにより、綿密に情報を供給することができるようになった。
今日はかける時間がなかったので、一話になります。明日あたりは二話になるように頑張ります。




